火影の引き継ぎ

夜。

火影室。

灯りは一つだけだった。

机の前に座るのは
綱手。

その向かいに立つのは
猿飛ヒルゼン。

新しい火影と、前の火影。

静かな引き継ぎの時間だった。

綱手が書類を閉じる。

「これで一通りか?」

ヒルゼンは頷く。

「表向きの仕事はな」

綱手が眉を上げる。

「……まだあるのか」

ヒルゼンは少し黙った。

そして言う。

「極秘任務だ」

部屋の空気が変わる。

綱手は腕を組んだ。

「聞こう」

ヒルゼンはゆっくり語り始めた。

「暁という組織は知っているな」

綱手が頷く。

「抜け忍の集まりだ」

「最近やけに動きが活発だな」

ヒルゼンは静かに言う。

「そこに」

「木ノ葉の忍が潜入している」

綱手の目が細くなる。

「誰だ」

ヒルゼンは答えた。

「うちはイタチ」

沈黙。

綱手はゆっくり息を吐いた。

「……なるほど」

「だから抜け忍か」

ヒルゼンは頷く。

「表向きは裏切り」

「実際は潜入任務」

綱手は机を指で叩く。

「随分と重い任務だな」

ヒルゼンは続ける。

「情報は直接は来ない」

「別の経路を通る」

綱手が聞く。

「誰だ」

ヒルゼンは言った。

「霧の抜け忍」

「桃地再不斬」

綱手の眉が上がる。

「……生きていたのか」

ヒルゼンは続ける。

「その部下」

「白」

「白が情報を受け取り」

「木ノ葉の暗部へ渡す」

綱手は腕を組んだまま黙る。

そして言った。

「なるほど」

「三重構造か」

ヒルゼンは頷く。

「イタチは暁内部」

「再不斬は接触役」

「白が伝達」

「木ノ葉へ情報が戻る」

綱手はため息をついた。

「……とんでもない任務だな」

少し間を置き。

「まだ子供だったろ」

ヒルゼンの表情がわずかに曇る。

「そうだ」

「だが」

「彼しかいなかった」

綱手はそれ以上言わなかった。

沈黙が落ちる。

そして。

綱手が聞く。

「暁の目的は」

ヒルゼンは首を振った。

「まだ不明だ」

「だが」

声が低くなる。

「尾獣を狙っている可能性がある」

綱手の目が鋭くなる。

「人柱力か」

ヒルゼンは頷いた。

その時。

綱手がふと思い出したように言う。

「そういえば」

「ナルトの周りに」

「妙なガキがいるな」

ヒルゼンが少し笑う。

「**うちはオビト**か」

綱手は言う。

「あいつ」

「普通じゃない」

「身体の状態もだが」

「力もだ」

ヒルゼンは静かに頷いた。

「儂もそう思う」

そして窓の外を見る。

木ノ葉の里。

「これからの時代」

「里を支えるのは」

「若い忍だ」

綱手は立ち上がった。

「分かっている」

火影の外套が揺れる。

「私が守る」

木ノ葉を。

忍を。

そして。

次の世代を。

その夜。

木ノ葉は静かだった。

だが――

遠く。

闇の中で。

黒い外套が揺れていた。

赤い雲。

暁。

影は。

確実に近づいていた。



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