書簡
木ノ葉の夜。
月明かりが里を静かに照らしていた。
火影岩の影が長く伸びる。
その影の中に、一人の少年が立っていた。
うちはオビト
風が吹く。
その時。
水面のように空間が揺れた。
次の瞬間。
一人の少年が現れる。
長い黒髪。
白い肌。
静かな瞳。
白
オビトは振り返る。
「……久しぶりだな」
白は静かに頭を下げた。
「お久しぶりです」
「オビトさん」
オビトは腕を組む。
「再不斬は?」
白が答える。
「別行動です」
「今は暁の任務中です」
オビトは頷いた。
「なるほど」
そして白を見る。
「それで?」
「わざわざ来た理由は?」
白は懐から一通の封書を取り出す。
封はされていない。
だが。
木ノ葉の忍でもない文字。
オビトの目が細くなる。
「……イタチか」
白は頷く。
「はい」
「これを、あなたに渡すように頼まれました」
オビトは封書を受け取る。
紙を開く。
そこには整った文字が並んでいた。
差出人。
うちはイタチ
⸻
「オビトへ」
暁の内部について報告する。
この組織は二重構造だ。
表は忍。
しかし裏に別の存在がある。
人の形をしているが、人ではない。
胸に孔はない。
しかし生き物とも思えない。
異様な存在だ。
暁の構成員の中で
それを認識しているのは
おそらく一人。
暁のリーダー。
他の者は見えていないように見える。
俺には見える。
そして。
お前も見えるはずだ。
この存在が何なのか。
断定はできない。
だが可能性がある。
呪い
あるいは。
それに近い何か。
暁は忍の組織ではない。
忍と呪い。
二重の構造だ。
裏暁には警戒しろ。
そして――
オビト。
これは忍としてではない。
お前個人に頼む。
お前にしか頼めない。
⸻
文章はそこで終わっていた。
だが。
最後に一行だけ。
書き足されたような文字。
⸻
「以前言った通りだ」
「どうにもならなくなったら、お前を頼る」
⸻
オビトは小さく笑った。
「……律儀だな」
白が少し不思議そうに言う。
「何か、分かったんですか?」
オビトは封書を閉じる。
空を見る。
そして言った。
「面倒な話になりそうだ」
風が吹く。
遠く。
木ノ葉の灯り。
オビトの瞳がわずかに変わる。
万華鏡写輪眼。
「……暁か」
呟く。
「忍の組織じゃないってことか」
白は静かに言った。
「イタチさんは」
「あなたなら理解できると」
そう言っていました。
オビトは苦笑した。
「買い被りだ」
だが。
その目は笑っていない。
「……でも」
「まあ」
「行くしかないか」
夜の空気が重くなる。
見えない何か。
忍ではない存在。
暁の裏側。
その影が。
静かに動き始めていた。
【〆栞】