螺旋丸

木ノ葉の外れ。

森の奥。

風が木々を揺らしている。

その中心で一人、少年が立っていた。

うちはオビト。

「……よし」

俺は手を開いた。

掌の上にチャクラを集める。

回転。

圧縮。

流れを整える。

「螺旋丸」

青い球体が完成する。

静かに回転するチャクラの塊。

四代目火影――
**波風ミナト**が作った術。

そして俺の師匠(仮)
**自来也**が教えてくれた術。

「……やっぱ簡単だな」

三回目の人生。

チャクラ制御は体に染みついている。

むしろ問題は別だった。

俺は螺旋丸を消す。

そして手を見つめる。

「じゃあ」

ぽつりと呟く。

「呪力だけで螺旋丸は?」

前世の力。

呪術師だった頃の感覚。

チャクラじゃなく――

呪力。

「……理屈は同じ」

エネルギーを回転。

圧縮。

制御。

掌に力を集める。

最初は不安定。

黒い霧のような力が揺れる。

「うわ」

一瞬暴れる。

俺は慌てて抑える。

回転を整える。

集中。

そして。

ブンッ

黒い球体が完成した。

沈黙。

俺は瞬きをした。

「……あ」

もう一度見る。

黒い螺旋。

「やば」

呟く。

「できた」

完全に。

呪力螺旋丸。

「……これ威力やばいな」

木に向けて撃ったら。

たぶん森が吹き飛ぶ。

俺は慌てて消した。

「危ねぇ」



しばらくして。

俺は木の根元に座り込んだ。

「……次」

考える。

前世の術。

呪術。

その中でも――

一番面倒なのが。

赤血操術。

血液を操る術式。

強い。

かなり強い。

だが。

「きつい」

俺はため息をついた。

「子供の身体じゃ無理だ」

そもそも血液を使う術。

消耗が激しい。

しかも俺は目標が高い。

「……張相」

あの化け物。

脹相。

血液操作の天才。

あそこまで行くには。

血液量が必要。

つまり。

「貧血」

俺は地面に倒れた。

「クラクラする」

実際、さっきの修行でかなり血を使った。

視界が少し揺れる。

「……やば」

これは良くない。

俺はポケットから袋を取り出した。

中身は忍者の必需品。

兵糧丸。

忍の栄養食。

「……」

じっと見つめる。

ふと思い出す。

昔。

呪術師だった頃。

「輸血パック持ち歩いたんだよな」

苦い記憶。

ある戦闘で。

「破れた」

結果。

大惨事。

血まみれ。

滑る地面。

敵も味方もドン引き。

「……やめよう」

輸血パックは危険だ。

俺は兵糧丸を転がした。

ころころ。

ふと。

思いつく。

「……あ」

指を鳴らす。

「あるじゃん」

兵糧丸。

栄養補給。

つまり。

「増血丸」

忍者版。

血液生成サプリ。

「これ作ればいいんじゃね?」

反転術式で回復するのも手だ。

でも。

もっと手軽な方法。

兵糧丸+増血効果。

「完璧」

俺は立ち上がった。

「天才か俺」

問題は――

材料。

そして。

金。

俺は遠くの木ノ葉を見た。

「……金ない」

子供。

無職。

忍者アカデミー生。

つまり。

収入ゼロ。

「やばい」

切実だった。

俺は空を見上げる。

「……下忍」

任務。

給料。

それが欲しい。

「下忍でもいい」

むしろ。

「下忍になりたい」

切実だった。

その頃。

木の上。

銀髪の忍がいた。

はたけカカシ。

カカシは腕を組んでいた。

「……螺旋丸」

さっきの修行を見ていた。

チャクラ。

そして――

黒い球体。

「妙だ」

普通じゃない。

それに。

「……どこか」

懐かしい。

あの動き。

あの癖。

胸の奥が少し痛む。

カカシは小さく呟いた。

「オビト」

その名前を。

夕方の森に風が吹く。

そして物語は――

次の段階へ進む。

忍者アカデミー。

卒業試験。

そして。

第七班。

運命のチーム。



〆栞
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