一年〜三年
季節は巡る。
春が来て、夏が過ぎ、秋が深まり、冬が訪れる。
それを、三度。
裏葉オビトは、小学生としての日常を、淡々と過ごしていた。
朝、起きる。
学校へ行く。
授業を受ける。
遊ぶ。
帰る。
そして――
(……多いな)
虫を、潰す。
それが、変わらない日課だった。
だが、三年も経てば。
その“日常”は、確実に変化していた。
血。
水。
どちらも、扱いに慣れた。
以前のように無意識ではなく、ある程度の意思を持って制御できる。
(……便利だな)
正直な感想だった。
目立たず、痕跡も残さず、確実に消す。
それだけなら、水の方が使い勝手がいい。
血は、切り札。
使う場面は、限る。
そういう判断も、自然と身についていた。
そして。
その結果として――
(……静かだな)
この一帯は、異様なほどに澄んでいた。
虫が、いない。
完全ではないが、ほぼ近づかない。
学校も。
家も。
その周辺も。
(まあ、楽でいいけどな)
本人にとっては、それだけの話だ。
だが。
その“異常”は、別の場所でも波紋を広げていた。
――呪術界。
表には出ない、裏の世界。
そこでは。
「……まだ見つからないのか」
低い声が響く。
苛立ちが混ざる。
「はい。足取りは完全に途絶えています」
報告。
冷静な声。
だが、その裏には緊張がある。
「宗一郎の方は?」
「同様に」
沈黙。
重い。
「……ふざけるな」
吐き捨てるような言葉。
禪院。
その名を持つ家は、苛立っていた。
逃げた。
捨てた。
家を。
血を。
その事実が、許せない。
「必ず見つけ出せ」
命令。
絶対。
「はい」
一方。
別の場所。
「綾乃の所在は?」
静かな声。
だが、圧がある。
「不明です」
こちらも同じ。
加茂。
血を重んじる家。
その血を持つ者が、外にいる。
しかも、連絡を断って。
「……探せ」
短い命令。
感情は薄い。
だが、その裏にある執着は深い。
「必ずだ」
そして。
さらに別の場所。
「へぇ」
軽い声。
興味はある。
だが、執着はない。
「面白そうじゃん」
笑う。
余裕。
圧倒的な力に裏打ちされた、余裕。
五条悟
「でも、まあ」
肩をすくめる。
「今はいいや」
五条家は、静観していた。
理由は単純。
焦る必要がないからだ。
「そのうち出てくるでしょ」
強いものは、隠れていても表に出る。
そういうものだ。
だから。
待つ。
それだけでいい。
そして。
その五条悟は、別の問題を抱えていた。
「はぁ……」
小さくため息をつく。
視線の先。
小さな影。
「おい、ちゃんと歩け」
「……」
返事はない。
ただ、ついてくる。
少年。
無口。
だが、確かな存在感。
(めんどくさ……)
内心で思う。
だが、放り出すわけにもいかない。
理由は、ひとつ。
「伏黒甚爾の息子、ねぇ……」
呟く。
過去の因縁。
それが、今に繋がっている。
後見人。
そういう立場になっていた。
「まあいいけどさ」
軽く言う。
だが、その目は鋭い。
ただの気まぐれではない。
何かを見ている。
先を。
未来を。
そして。
そのすべてと、無関係に。
仙台郊外。
裏葉家。
「オビトー、ご飯よー」
綾乃の声。
「おー」
宗一郎も、顔を出す。
「今日もいっぱい食べろよ!」
(……いつも通りだな)
テーブルにつく。
食事。
会話。
笑い。
平和。
その中で。
オビトは、ぼんやりと思う。
(……なんか、静かだな)
外も。
中も。
虫はいない。
気配もない。
完全に、落ち着いている。
(まあいいか)
問題がないなら、それでいい。
深く考える必要はない。
この世界の裏で、何が起きているかも。
誰が何を探しているかも。
知る必要はない。
今は。
ただ。
この日常を過ごすだけ。
それで、十分だった。
春が来て、夏が過ぎ、秋が深まり、冬が訪れる。
それを、三度。
裏葉オビトは、小学生としての日常を、淡々と過ごしていた。
朝、起きる。
学校へ行く。
授業を受ける。
遊ぶ。
帰る。
そして――
(……多いな)
虫を、潰す。
それが、変わらない日課だった。
だが、三年も経てば。
その“日常”は、確実に変化していた。
血。
水。
どちらも、扱いに慣れた。
以前のように無意識ではなく、ある程度の意思を持って制御できる。
(……便利だな)
正直な感想だった。
目立たず、痕跡も残さず、確実に消す。
それだけなら、水の方が使い勝手がいい。
血は、切り札。
使う場面は、限る。
そういう判断も、自然と身についていた。
そして。
その結果として――
(……静かだな)
この一帯は、異様なほどに澄んでいた。
虫が、いない。
完全ではないが、ほぼ近づかない。
学校も。
家も。
その周辺も。
(まあ、楽でいいけどな)
本人にとっては、それだけの話だ。
だが。
その“異常”は、別の場所でも波紋を広げていた。
――呪術界。
表には出ない、裏の世界。
そこでは。
「……まだ見つからないのか」
低い声が響く。
苛立ちが混ざる。
「はい。足取りは完全に途絶えています」
報告。
冷静な声。
だが、その裏には緊張がある。
「宗一郎の方は?」
「同様に」
沈黙。
重い。
「……ふざけるな」
吐き捨てるような言葉。
禪院。
その名を持つ家は、苛立っていた。
逃げた。
捨てた。
家を。
血を。
その事実が、許せない。
「必ず見つけ出せ」
命令。
絶対。
「はい」
一方。
別の場所。
「綾乃の所在は?」
静かな声。
だが、圧がある。
「不明です」
こちらも同じ。
加茂。
血を重んじる家。
その血を持つ者が、外にいる。
しかも、連絡を断って。
「……探せ」
短い命令。
感情は薄い。
だが、その裏にある執着は深い。
「必ずだ」
そして。
さらに別の場所。
「へぇ」
軽い声。
興味はある。
だが、執着はない。
「面白そうじゃん」
笑う。
余裕。
圧倒的な力に裏打ちされた、余裕。
五条悟
「でも、まあ」
肩をすくめる。
「今はいいや」
五条家は、静観していた。
理由は単純。
焦る必要がないからだ。
「そのうち出てくるでしょ」
強いものは、隠れていても表に出る。
そういうものだ。
だから。
待つ。
それだけでいい。
そして。
その五条悟は、別の問題を抱えていた。
「はぁ……」
小さくため息をつく。
視線の先。
小さな影。
「おい、ちゃんと歩け」
「……」
返事はない。
ただ、ついてくる。
少年。
無口。
だが、確かな存在感。
(めんどくさ……)
内心で思う。
だが、放り出すわけにもいかない。
理由は、ひとつ。
「伏黒甚爾の息子、ねぇ……」
呟く。
過去の因縁。
それが、今に繋がっている。
後見人。
そういう立場になっていた。
「まあいいけどさ」
軽く言う。
だが、その目は鋭い。
ただの気まぐれではない。
何かを見ている。
先を。
未来を。
そして。
そのすべてと、無関係に。
仙台郊外。
裏葉家。
「オビトー、ご飯よー」
綾乃の声。
「おー」
宗一郎も、顔を出す。
「今日もいっぱい食べろよ!」
(……いつも通りだな)
テーブルにつく。
食事。
会話。
笑い。
平和。
その中で。
オビトは、ぼんやりと思う。
(……なんか、静かだな)
外も。
中も。
虫はいない。
気配もない。
完全に、落ち着いている。
(まあいいか)
問題がないなら、それでいい。
深く考える必要はない。
この世界の裏で、何が起きているかも。
誰が何を探しているかも。
知る必要はない。
今は。
ただ。
この日常を過ごすだけ。
それで、十分だった。
【〆栞】