倭助とオビト
夕方の空気は、どこか落ち着いている。
昼間の騒がしさが嘘みたいに、静かで、少しだけ冷たい風が流れていた。
公園の帰り。
悠仁と別れて、そのまま家に戻る――はずだったが。
「おい、オビト」
低い声に、足が止まる。
振り向く。
(……ああ)
虎杖倭助。
あの家の爺さんだ。
相変わらず、無駄のない立ち方してる。
ただそこにいるだけで、妙に存在感がある。
「なんだ、じーさん」
気軽に返す。
この人には、変に気を使う気が起きねぇ。
悠仁と同じだ。
なんでか知らねぇけど、素でいられる。
「少し、いいか」
「ああ、いいぞ」
並んで歩く。
特に急ぐわけでもなく、ゆっくりと。
沈黙が続く。
でも、気まずくはねぇ。
むしろ、落ち着く。
「……あいつと、よく遊んでるな」
ぽつりと、倭助が言う。
「ああ」
素直に頷く。
「楽しいしな」
「そうか」
短い返事。
それだけ。
でも、それで十分だった。
少しして。
倭助が、ふっと笑う。
「お前、いいな」
「は?」
思わず聞き返す。
なんだそれ。
「気に入った」
さらっと言う。
(……なんだよ、それ)
よく分かんねぇけど。
悪い気はしねぇ。
「そりゃどうも」
肩をすくめる。
軽く返す。
そのまま、また歩く。
風が吹く。
少しだけ、空気が変わる。
「……オビト」
倭助の声が、少しだけ低くなる。
「ん?」
「悠仁を、守ってやれ」
足が、止まる。
(……は?)
意味は分かる。
でも。
納得は、しねぇ。
「……あいつ、強いぞ?」
率直に言う。
事実だ。
悠仁は、普通じゃねぇ。
身体能力も、動きも。
ガキのレベルじゃない。
「知ってる」
倭助は、即答した。
迷いもなく。
「それでもだ」
短い言葉。
だが、その中にあるものは重い。
(……)
じっと、倭助を見る。
目が合う。
逸らさない。
こっちも、逸らさねぇ。
「……なんでだよ」
少しだけ、踏み込む。
理由を聞く。
倭助は、少しだけ目を細めた。
「強い奴ほど、危ねぇ時がある」
低く、静かに言う。
「自分じゃ気づかねぇ時がな」
(……)
言葉の意味は、なんとなく分かる。
完全には分からねぇけど。
でも。
重さは、伝わる。
「……」
少しだけ、考える。
でも、長くはかからねぇ。
答えは、もう決まってる。
「……わかった」
短く言う。
それでいい。
それだけでいい。
倭助が、小さく頷く。
「頼んだぞ」
「ああ」
軽く返す。
でも、その中身は軽くねぇ。
約束だ。
ちゃんとした。
その後。
少しだけ歩いて、別れる。
「じゃあな、じーさん」
「おう」
手を上げる。
振り返らない。
でも。
なんとなく分かる。
あの人、見てるな。
背中を。
(……変な人だな)
思わず、笑う。
でも。
嫌いじゃねぇ。
むしろ――
(いいよな、ああいうの)
好きだ。
悠仁も。
倭助も。
ああいうまっすぐな感じ。
変に考えねぇで、言いたいこと言ってくる感じ。
だからこっちも、素で返せる。
気づけば。
それが当たり前になってた。
友達。
いや。
それ以上かもしれねぇ。
なんて言えばいいか分かんねぇけど。
(……まあ、いいか)
難しく考える必要はねぇ。
一緒にいて、楽しい。
それで十分だ。
空を見上げる。
少し赤い。
夕焼け。
「……守る、か」
ぽつりと呟く。
難しくはねぇ。
やることは、いつもと同じだ。
(邪魔する奴は、ぶっ飛ばす)
それだけだ。
にっと、笑う。
自然と。
そんな顔になっていた。
昼間の騒がしさが嘘みたいに、静かで、少しだけ冷たい風が流れていた。
公園の帰り。
悠仁と別れて、そのまま家に戻る――はずだったが。
「おい、オビト」
低い声に、足が止まる。
振り向く。
(……ああ)
虎杖倭助。
あの家の爺さんだ。
相変わらず、無駄のない立ち方してる。
ただそこにいるだけで、妙に存在感がある。
「なんだ、じーさん」
気軽に返す。
この人には、変に気を使う気が起きねぇ。
悠仁と同じだ。
なんでか知らねぇけど、素でいられる。
「少し、いいか」
「ああ、いいぞ」
並んで歩く。
特に急ぐわけでもなく、ゆっくりと。
沈黙が続く。
でも、気まずくはねぇ。
むしろ、落ち着く。
「……あいつと、よく遊んでるな」
ぽつりと、倭助が言う。
「ああ」
素直に頷く。
「楽しいしな」
「そうか」
短い返事。
それだけ。
でも、それで十分だった。
少しして。
倭助が、ふっと笑う。
「お前、いいな」
「は?」
思わず聞き返す。
なんだそれ。
「気に入った」
さらっと言う。
(……なんだよ、それ)
よく分かんねぇけど。
悪い気はしねぇ。
「そりゃどうも」
肩をすくめる。
軽く返す。
そのまま、また歩く。
風が吹く。
少しだけ、空気が変わる。
「……オビト」
倭助の声が、少しだけ低くなる。
「ん?」
「悠仁を、守ってやれ」
足が、止まる。
(……は?)
意味は分かる。
でも。
納得は、しねぇ。
「……あいつ、強いぞ?」
率直に言う。
事実だ。
悠仁は、普通じゃねぇ。
身体能力も、動きも。
ガキのレベルじゃない。
「知ってる」
倭助は、即答した。
迷いもなく。
「それでもだ」
短い言葉。
だが、その中にあるものは重い。
(……)
じっと、倭助を見る。
目が合う。
逸らさない。
こっちも、逸らさねぇ。
「……なんでだよ」
少しだけ、踏み込む。
理由を聞く。
倭助は、少しだけ目を細めた。
「強い奴ほど、危ねぇ時がある」
低く、静かに言う。
「自分じゃ気づかねぇ時がな」
(……)
言葉の意味は、なんとなく分かる。
完全には分からねぇけど。
でも。
重さは、伝わる。
「……」
少しだけ、考える。
でも、長くはかからねぇ。
答えは、もう決まってる。
「……わかった」
短く言う。
それでいい。
それだけでいい。
倭助が、小さく頷く。
「頼んだぞ」
「ああ」
軽く返す。
でも、その中身は軽くねぇ。
約束だ。
ちゃんとした。
その後。
少しだけ歩いて、別れる。
「じゃあな、じーさん」
「おう」
手を上げる。
振り返らない。
でも。
なんとなく分かる。
あの人、見てるな。
背中を。
(……変な人だな)
思わず、笑う。
でも。
嫌いじゃねぇ。
むしろ――
(いいよな、ああいうの)
好きだ。
悠仁も。
倭助も。
ああいうまっすぐな感じ。
変に考えねぇで、言いたいこと言ってくる感じ。
だからこっちも、素で返せる。
気づけば。
それが当たり前になってた。
友達。
いや。
それ以上かもしれねぇ。
なんて言えばいいか分かんねぇけど。
(……まあ、いいか)
難しく考える必要はねぇ。
一緒にいて、楽しい。
それで十分だ。
空を見上げる。
少し赤い。
夕焼け。
「……守る、か」
ぽつりと呟く。
難しくはねぇ。
やることは、いつもと同じだ。
(邪魔する奴は、ぶっ飛ばす)
それだけだ。
にっと、笑う。
自然と。
そんな顔になっていた。
【〆栞】