仙台
呪術界というものは、広いようで狭い。
表に出ない分、情報の流れは独特だ。
確かなものよりも、曖昧なもの。
事実よりも、違和感。
そういう“引っかかり”が、よく回る。
「――仙台?」
ぽつりと、声が漏れる。
五条悟
書類の山の中で、ひとつの報告に目を止める。
内容は、単純だ。
“呪いが薄い地域がある”
それだけ。
だが、その“だけ”が妙だった。
「へぇ……」
軽く笑う。
だが、目は笑っていない。
通常、ありえない。
人がいる場所には、呪いが溜まる。
感情がある限り、避けられない。
なのに。
“薄い”。
それも、広範囲で。
「……消えてる、じゃなくて?」
紙を指で叩く。
消えている。
それなら、まだ分かる。
強い術師が、定期的に祓っている。
そういう可能性もある。
だが。
「“最初から無いみたい”って何それ」
報告の文言をなぞる。
違和感。
強い。
「気持ち悪……」
正直な感想。
興味はある。
かなり。
だが。
そこで、記憶が引っかかる。
「……あれ?」
視線が、止まる。
仙台。
その単語。
どこかで。
「行ったな」
思い出す。
高専時代。
任務で。
地方の案件。
その帰り。
住宅地を通った。
「……妙に空気良かったとこか」
ぼんやりと、繋がる。
あの時は、深く考えなかった。
違和感はあった。
だが、理由も分からないまま流した。
「まあいいか、ってなったやつ」
軽く笑う。
当時の自分の判断。
間違ってはいない。
情報が足りなかった。
それだけだ。
「で、その後――」
さらに記憶を辿る。
店。
和菓子。
ずんだ餅
「あー……」
思い出した。
確かに買った。
美味かった。
それは覚えてる。
だが。
問題は、そこじゃない。
「……通ったな」
あの住宅地。
あの空気。
あの“澄み方”。
今、目の前の報告と。
一致する。
「はは」
小さく笑う。
ようやく繋がった。
「見逃してたわけだ」
完全に。
目の前を通り過ぎていた。
それなのに。
気づかなかった。
「……いや、気づいてたか」
違和感はあった。
ただ。
深掘りしなかった。
それだけだ。
指先で、机を叩く。
とん、とん、と。
リズムよく。
思考を整える。
「でもさ」
呟く。
「なんで今、出てくるかな」
タイミング。
それが、引っかかる。
昔からあったのか。
それとも、最近か。
もし前者なら。
なぜ今まで表に出なかった。
もし後者なら。
何が起きた。
「……」
沈黙。
数秒。
そして。
ふっと、息を吐く。
「まあいいや」
結論。
まだ、動くほどじゃない。
情報が少ない。
判断材料が足りない。
「でも」
指が止まる。
ほんのわずかに。
「気にはなるね」
その一言だけは、本音だった。
視線を落とす。
書類。
仙台。
澄んだ町。
そして。
自分が、かつて通り過ぎた場所。
「……」
ほんの少しだけ。
違和感が、残る。
引っかかり。
解消されないまま。
静かに。
そこに居座っていた。
表に出ない分、情報の流れは独特だ。
確かなものよりも、曖昧なもの。
事実よりも、違和感。
そういう“引っかかり”が、よく回る。
「――仙台?」
ぽつりと、声が漏れる。
五条悟
書類の山の中で、ひとつの報告に目を止める。
内容は、単純だ。
“呪いが薄い地域がある”
それだけ。
だが、その“だけ”が妙だった。
「へぇ……」
軽く笑う。
だが、目は笑っていない。
通常、ありえない。
人がいる場所には、呪いが溜まる。
感情がある限り、避けられない。
なのに。
“薄い”。
それも、広範囲で。
「……消えてる、じゃなくて?」
紙を指で叩く。
消えている。
それなら、まだ分かる。
強い術師が、定期的に祓っている。
そういう可能性もある。
だが。
「“最初から無いみたい”って何それ」
報告の文言をなぞる。
違和感。
強い。
「気持ち悪……」
正直な感想。
興味はある。
かなり。
だが。
そこで、記憶が引っかかる。
「……あれ?」
視線が、止まる。
仙台。
その単語。
どこかで。
「行ったな」
思い出す。
高専時代。
任務で。
地方の案件。
その帰り。
住宅地を通った。
「……妙に空気良かったとこか」
ぼんやりと、繋がる。
あの時は、深く考えなかった。
違和感はあった。
だが、理由も分からないまま流した。
「まあいいか、ってなったやつ」
軽く笑う。
当時の自分の判断。
間違ってはいない。
情報が足りなかった。
それだけだ。
「で、その後――」
さらに記憶を辿る。
店。
和菓子。
ずんだ餅
「あー……」
思い出した。
確かに買った。
美味かった。
それは覚えてる。
だが。
問題は、そこじゃない。
「……通ったな」
あの住宅地。
あの空気。
あの“澄み方”。
今、目の前の報告と。
一致する。
「はは」
小さく笑う。
ようやく繋がった。
「見逃してたわけだ」
完全に。
目の前を通り過ぎていた。
それなのに。
気づかなかった。
「……いや、気づいてたか」
違和感はあった。
ただ。
深掘りしなかった。
それだけだ。
指先で、机を叩く。
とん、とん、と。
リズムよく。
思考を整える。
「でもさ」
呟く。
「なんで今、出てくるかな」
タイミング。
それが、引っかかる。
昔からあったのか。
それとも、最近か。
もし前者なら。
なぜ今まで表に出なかった。
もし後者なら。
何が起きた。
「……」
沈黙。
数秒。
そして。
ふっと、息を吐く。
「まあいいや」
結論。
まだ、動くほどじゃない。
情報が少ない。
判断材料が足りない。
「でも」
指が止まる。
ほんのわずかに。
「気にはなるね」
その一言だけは、本音だった。
視線を落とす。
書類。
仙台。
澄んだ町。
そして。
自分が、かつて通り過ぎた場所。
「……」
ほんの少しだけ。
違和感が、残る。
引っかかり。
解消されないまま。
静かに。
そこに居座っていた。
【〆栞】