息子の力
第三十四話「息子の力」
夜は、静かだった。
だがその静けさの奥で、確実に何かが“動いている”。
裏葉家。
灯りの落ちた居間で、宗一郎と綾乃は向かい合っていた。
言葉は少ない。
だが、沈黙の中で、同じ結論に辿り着いている。
「……見ただろ」
宗一郎が、低く言う。
「ああ」
綾乃も、短く頷く。
数日前の夜。
あの一瞬。
水が、動いた。
意志を持って。
正確に。
そして――
「赤血操術……よね」
綾乃が、ぽつりと呟く。
血を操る術。
それ自体は、見覚えがある。
自分の出自。
加茂の家。
その中で、確かに存在するもの。
だが。
「……いや」
宗一郎が、首を振る。
「違う」
即答だった。
「あれは、“同じ動き”をしてるだけだ」
血じゃない。
水だ。
なのに。
操作の精度も、軌道も、全く同じ。
「……ありえないわね」
綾乃の声は、静かだった。
だが、その中にある驚きは隠せない。
「赤血操術の応用、なんてレベルじゃない」
そもそも。
「顕現が早すぎる」
三ヶ月。
それが最初。
通常なら、ありえない。
「しかも今は……」
水。
明らかに、別系統。
別の力。
「……あの子」
綾乃の視線が、奥の部屋へ向く。
扉の向こう。
眠っているはずの、我が子。
「赤血操術だけじゃない」
その言葉に、宗一郎も頷く。
「ああ」
断言だった。
「“何か”が混ざってる」
それは、二人とも分かっていた。
だが――
その正体までは、分からない。
ただ一つ。
確かなこと。
「……規格外だな」
宗一郎が、苦く笑う。
「ええ」
綾乃も、同じ顔をする。
そして。
その“規格外”は。
外の世界でも、波紋を広げていた。
――呪術界。
「……確定、か」
低い声が響く。
報告書。
その中身は、明確だった。
“対象に子供がいる可能性、極めて高し”
「……数年前の報告は、本当だった」
かつて。
一度だけ、上がった情報。
“異様な呪力を持つ赤ん坊がいる”
当時は、確証がなく、流された。
だが。
今、繋がる。
「禪院宗一郎」
「加茂綾乃」
「そして――その子供」
沈黙。
次の瞬間。
空気が、爆発した。
「ふざけるな!!」
怒号。
禪院側。
完全に、制御不能。
「なぜ報告しなかった!!」
「把握できていなかったため――」
「言い訳は聞いていない!!」
机が叩き割られる。
怒り。
それは当然だった。
禪院と加茂。
その血が交わり。
さらに、その“結晶”が存在する。
「回収だ!!」
命令が飛ぶ。
「何があっても、連れ戻せ!!」
一方。
加茂。
こちらは、静かだった。
だが。
その静けさは、より深い。
「……興味深い」
ぽつりと、誰かが呟く。
「二つの血が、融合した存在」
分析。
理解。
そして。
欲。
「確保する」
短い言葉。
だが、その意味は重い。
「それは、“価値”だ」
禪院と加茂。
両者が、完全に動き出す。
呪術界に、衝撃が走る。
そして。
その波は、当然――
あの男にも届いた。
「……え?」
素っ頓狂な声が、響く。
五条悟
書類を見て、固まる。
数秒。
沈黙。
「ちょっと待って?」
顔を上げる。
もう一度、確認する。
「夫婦ってだけじゃなくて……」
指で、該当箇所を叩く。
「子供がいるの!?」
衝撃。
それも、かなりデカい。
「え、なにそれ」
思考が、一瞬止まる。
だが。
すぐに、繋がる。
「……あー」
思い出す。
仙台。
あの時の違和感。
澄んだ空気。
そして。
「……マジ?」
小さく、呟く。
「当たり、引いてた?」
あの時。
通り過ぎた。
気づかずに。
「……はは」
笑う。
だが、その目は笑っていない。
「面白すぎでしょ」
完全に、興味が湧いた。
それも、最大級に。
「禪院と加茂の子、ねぇ……」
普通じゃない。
ありえない。
だからこそ――
「見てみたいな」
ぽつりと、呟く。
その声には。
明確な“意思”が乗っていた。
そして。
裏葉家。
静かな夜。
オビトは、眠っていた。
夢を見る。
断片。
炎。
雷。
風。
水。
土。
木。
そして――
もっと深い何か。
形のないもの。
それに、形を与える力。
それを、動かす力。
(……なんだ、これ)
意識の奥で、ぼんやりと思う。
知らない。
でも。
知っている気もする。
遠い記憶。
忘れていたはずのもの。
六道。
十尾。
かつての力。
かつての自分。
それが、交錯する。
(……まあいいか)
深くは考えない。
今は。
眠い。
それだけだ。
意識が、沈む。
その奥で。
静かに。
確実に。
“万象”が、息吹き始めていた。
夜は、静かだった。
だがその静けさの奥で、確実に何かが“動いている”。
裏葉家。
灯りの落ちた居間で、宗一郎と綾乃は向かい合っていた。
言葉は少ない。
だが、沈黙の中で、同じ結論に辿り着いている。
「……見ただろ」
宗一郎が、低く言う。
「ああ」
綾乃も、短く頷く。
数日前の夜。
あの一瞬。
水が、動いた。
意志を持って。
正確に。
そして――
「赤血操術……よね」
綾乃が、ぽつりと呟く。
血を操る術。
それ自体は、見覚えがある。
自分の出自。
加茂の家。
その中で、確かに存在するもの。
だが。
「……いや」
宗一郎が、首を振る。
「違う」
即答だった。
「あれは、“同じ動き”をしてるだけだ」
血じゃない。
水だ。
なのに。
操作の精度も、軌道も、全く同じ。
「……ありえないわね」
綾乃の声は、静かだった。
だが、その中にある驚きは隠せない。
「赤血操術の応用、なんてレベルじゃない」
そもそも。
「顕現が早すぎる」
三ヶ月。
それが最初。
通常なら、ありえない。
「しかも今は……」
水。
明らかに、別系統。
別の力。
「……あの子」
綾乃の視線が、奥の部屋へ向く。
扉の向こう。
眠っているはずの、我が子。
「赤血操術だけじゃない」
その言葉に、宗一郎も頷く。
「ああ」
断言だった。
「“何か”が混ざってる」
それは、二人とも分かっていた。
だが――
その正体までは、分からない。
ただ一つ。
確かなこと。
「……規格外だな」
宗一郎が、苦く笑う。
「ええ」
綾乃も、同じ顔をする。
そして。
その“規格外”は。
外の世界でも、波紋を広げていた。
――呪術界。
「……確定、か」
低い声が響く。
報告書。
その中身は、明確だった。
“対象に子供がいる可能性、極めて高し”
「……数年前の報告は、本当だった」
かつて。
一度だけ、上がった情報。
“異様な呪力を持つ赤ん坊がいる”
当時は、確証がなく、流された。
だが。
今、繋がる。
「禪院宗一郎」
「加茂綾乃」
「そして――その子供」
沈黙。
次の瞬間。
空気が、爆発した。
「ふざけるな!!」
怒号。
禪院側。
完全に、制御不能。
「なぜ報告しなかった!!」
「把握できていなかったため――」
「言い訳は聞いていない!!」
机が叩き割られる。
怒り。
それは当然だった。
禪院と加茂。
その血が交わり。
さらに、その“結晶”が存在する。
「回収だ!!」
命令が飛ぶ。
「何があっても、連れ戻せ!!」
一方。
加茂。
こちらは、静かだった。
だが。
その静けさは、より深い。
「……興味深い」
ぽつりと、誰かが呟く。
「二つの血が、融合した存在」
分析。
理解。
そして。
欲。
「確保する」
短い言葉。
だが、その意味は重い。
「それは、“価値”だ」
禪院と加茂。
両者が、完全に動き出す。
呪術界に、衝撃が走る。
そして。
その波は、当然――
あの男にも届いた。
「……え?」
素っ頓狂な声が、響く。
五条悟
書類を見て、固まる。
数秒。
沈黙。
「ちょっと待って?」
顔を上げる。
もう一度、確認する。
「夫婦ってだけじゃなくて……」
指で、該当箇所を叩く。
「子供がいるの!?」
衝撃。
それも、かなりデカい。
「え、なにそれ」
思考が、一瞬止まる。
だが。
すぐに、繋がる。
「……あー」
思い出す。
仙台。
あの時の違和感。
澄んだ空気。
そして。
「……マジ?」
小さく、呟く。
「当たり、引いてた?」
あの時。
通り過ぎた。
気づかずに。
「……はは」
笑う。
だが、その目は笑っていない。
「面白すぎでしょ」
完全に、興味が湧いた。
それも、最大級に。
「禪院と加茂の子、ねぇ……」
普通じゃない。
ありえない。
だからこそ――
「見てみたいな」
ぽつりと、呟く。
その声には。
明確な“意思”が乗っていた。
そして。
裏葉家。
静かな夜。
オビトは、眠っていた。
夢を見る。
断片。
炎。
雷。
風。
水。
土。
木。
そして――
もっと深い何か。
形のないもの。
それに、形を与える力。
それを、動かす力。
(……なんだ、これ)
意識の奥で、ぼんやりと思う。
知らない。
でも。
知っている気もする。
遠い記憶。
忘れていたはずのもの。
六道。
十尾。
かつての力。
かつての自分。
それが、交錯する。
(……まあいいか)
深くは考えない。
今は。
眠い。
それだけだ。
意識が、沈む。
その奥で。
静かに。
確実に。
“万象”が、息吹き始めていた。
【〆栞】