ニアミス2
第三十五話「ニアミス2」
違和感というものは、消えない。
一度引っかかれば、どこかに残る。
忘れたつもりでも、ふとした瞬間に浮かび上がる。
「……やっぱ気になるよね」
五条悟
ぽつりと呟きながら、足を止める。
仙台。
以前、任務の帰りに通った場所。
あの時感じた、“妙に澄んだ空気”。
そして、最近耳にした噂。
禪院と加茂。
逃げた二人。
さらに――その子供。
(繋がりすぎでしょ)
軽く笑う。
偶然にしては、出来すぎている。
「まあ、来ちゃうよね」
理由はそれだけ。
興味がある。
だから来た。
それだけだ。
住宅地を歩く。
記憶を辿る。
あの時の感覚。
空気。
流れ。
「……この辺だったはずなんだけど」
立ち止まる。
周囲を見渡す。
だが。
「……あれ?」
違う。
空気が、普通だ。
淀みがある。
人の気配。
雑多な感情。
いつもの、それ。
(……ない)
あの“澄み”が。
完全に、消えている。
「え、マジで?」
少しだけ、眉をひそめる。
おかしい。
場所は合っているはずだ。
記憶も、曖昧じゃない。
なのに。
「……痕跡すらない?」
しゃがみ込む。
地面に手を触れる。
感じ取る。
流れ。
残り香。
だが。
「……綺麗すぎる」
何もない。
消えた、というより。
最初からなかったみたいに。
完全に、リセットされている。
(……やられたな)
誰かが、意図的に消した。
それも、かなり丁寧に。
「へぇ……」
立ち上がる。
口元が、わずかに上がる。
面白い。
かなり。
「引っ越したか」
結論は早い。
ここにいない。
もう、別の場所だ。
しかも。
「足跡、残してないってのがね」
普通じゃない。
追跡を前提に、消している。
それができるレベル。
(親か、それとも……)
思考が巡る。
だが。
答えは出ない。
「まあ、いいや」
肩をすくめる。
今ここにいないなら、無理に探す必要はない。
そのうち、また引っかかる。
そういうものだ。
そして。
その“引っかかり”は、すぐそこにあった。
郊外。
少し離れた住宅地。
静かな場所。
人の流れも、少ない。
「……ん?」
歩きながら、ふと顔を上げる。
風が、変わる。
ほんの一瞬。
(……今の)
立ち止まる。
振り返る。
だが。
何もない。
ただの、普通の住宅地。
「……気のせい?」
いや。
違う。
確かに、あった。
あの感覚。
澄んだ空気。
ほんの一瞬だけ。
(……近いな)
確信する。
もう、すぐそこにいる。
だが。
「……遅かったか」
苦笑する。
タイミングが、少しズレた。
ほんの数分。
いや、数十秒かもしれない。
その差で、すれ違った。
再びの、ニアミス。
その頃。
その住宅地の一角。
裏葉家。
「……ん?」
オビトが、ふと顔を上げる。
外。
何かが、通った気がした。
(……なんだ、今の)
虫じゃない。
もっと、はっきりした“何か”。
だが。
一瞬で消えた。
(……まあいいか)
問題はない。
危険でもない。
そう判断する。
それで終わりだ。
再び、視線を戻す。
日常へ。
そして。
外。
少し離れた場所で。
五条が、ゆっくりと歩き出す。
「……惜しかったなぁ」
ぽつりと呟く。
あと少し。
ほんの少しで、届いた。
だが。
それでも。
「逃げ足、速いね」
楽しそうに、笑う。
追う価値がある。
そう、確信した。
「まあ、そのうち会えるでしょ」
軽く言う。
だが。
その言葉には、確信があった。
強いものは、いずれ交わる。
それが、この世界の“流れ”だ。
だから。
今はまだ。
交わらない。
それだけの話だった。
違和感というものは、消えない。
一度引っかかれば、どこかに残る。
忘れたつもりでも、ふとした瞬間に浮かび上がる。
「……やっぱ気になるよね」
五条悟
ぽつりと呟きながら、足を止める。
仙台。
以前、任務の帰りに通った場所。
あの時感じた、“妙に澄んだ空気”。
そして、最近耳にした噂。
禪院と加茂。
逃げた二人。
さらに――その子供。
(繋がりすぎでしょ)
軽く笑う。
偶然にしては、出来すぎている。
「まあ、来ちゃうよね」
理由はそれだけ。
興味がある。
だから来た。
それだけだ。
住宅地を歩く。
記憶を辿る。
あの時の感覚。
空気。
流れ。
「……この辺だったはずなんだけど」
立ち止まる。
周囲を見渡す。
だが。
「……あれ?」
違う。
空気が、普通だ。
淀みがある。
人の気配。
雑多な感情。
いつもの、それ。
(……ない)
あの“澄み”が。
完全に、消えている。
「え、マジで?」
少しだけ、眉をひそめる。
おかしい。
場所は合っているはずだ。
記憶も、曖昧じゃない。
なのに。
「……痕跡すらない?」
しゃがみ込む。
地面に手を触れる。
感じ取る。
流れ。
残り香。
だが。
「……綺麗すぎる」
何もない。
消えた、というより。
最初からなかったみたいに。
完全に、リセットされている。
(……やられたな)
誰かが、意図的に消した。
それも、かなり丁寧に。
「へぇ……」
立ち上がる。
口元が、わずかに上がる。
面白い。
かなり。
「引っ越したか」
結論は早い。
ここにいない。
もう、別の場所だ。
しかも。
「足跡、残してないってのがね」
普通じゃない。
追跡を前提に、消している。
それができるレベル。
(親か、それとも……)
思考が巡る。
だが。
答えは出ない。
「まあ、いいや」
肩をすくめる。
今ここにいないなら、無理に探す必要はない。
そのうち、また引っかかる。
そういうものだ。
そして。
その“引っかかり”は、すぐそこにあった。
郊外。
少し離れた住宅地。
静かな場所。
人の流れも、少ない。
「……ん?」
歩きながら、ふと顔を上げる。
風が、変わる。
ほんの一瞬。
(……今の)
立ち止まる。
振り返る。
だが。
何もない。
ただの、普通の住宅地。
「……気のせい?」
いや。
違う。
確かに、あった。
あの感覚。
澄んだ空気。
ほんの一瞬だけ。
(……近いな)
確信する。
もう、すぐそこにいる。
だが。
「……遅かったか」
苦笑する。
タイミングが、少しズレた。
ほんの数分。
いや、数十秒かもしれない。
その差で、すれ違った。
再びの、ニアミス。
その頃。
その住宅地の一角。
裏葉家。
「……ん?」
オビトが、ふと顔を上げる。
外。
何かが、通った気がした。
(……なんだ、今の)
虫じゃない。
もっと、はっきりした“何か”。
だが。
一瞬で消えた。
(……まあいいか)
問題はない。
危険でもない。
そう判断する。
それで終わりだ。
再び、視線を戻す。
日常へ。
そして。
外。
少し離れた場所で。
五条が、ゆっくりと歩き出す。
「……惜しかったなぁ」
ぽつりと呟く。
あと少し。
ほんの少しで、届いた。
だが。
それでも。
「逃げ足、速いね」
楽しそうに、笑う。
追う価値がある。
そう、確信した。
「まあ、そのうち会えるでしょ」
軽く言う。
だが。
その言葉には、確信があった。
強いものは、いずれ交わる。
それが、この世界の“流れ”だ。
だから。
今はまだ。
交わらない。
それだけの話だった。
【〆栞】