倭助の勘
冬の空気は、どこか澄んでいる。
冷たくて、乾いていて、余計なものを削ぎ落としたような静けさがある。
虎杖倭助は、家の前に立っていた。
特に用があるわけでもない。
ただ、外の空気を吸いながら、ぼんやりと周囲を見ている。
その視線の先。
少し離れた公園。
二つの影が、動いていた。
「おら、まだまだだぞ悠仁!」
「くっそ、待てって!」
声が、響く。
元気で、遠慮がなくて、まっすぐな声。
(……またやってやがる)
口元が、わずかに緩む。
裏葉オビト。
そして、虎杖悠仁。
相変わらず、全力だ。
走って、ぶつかって、笑って、また走る。
単純な遊び。
だが、その中にある“何か”は、ただの子どもとは違う。
(……いい動きしてる)
自然と、目が行く。
足の運び。
重心の乗せ方。
無駄がない。
教わったわけでもないのに、ああいう動きができる。
(あいつ、やっぱり普通じゃねぇな)
確信に近い感覚。
だが。
それを、不気味とは思わない。
むしろ――
(……面白ぇ)
そう思う。
視線を、少しだけ横にずらす。
悠仁。
あいつも、普通じゃない。
身体が強い。
妙に。
だが。
オビトと並ぶと、それが際立つ。
互いに、遠慮がない。
遠慮がないからこそ、全力でぶつかる。
それでも、壊れない。
(……いい関係だ)
ぽつりと、心の中で呟く。
友達。
それは、そうだろう。
だが、それだけじゃない。
もっと、深い。
もっと、自然な距離。
(兄弟、みてぇなもんか)
ふっと、そんな言葉が浮かぶ。
血は繋がっていない。
だが。
それ以上に、繋がっているような感覚。
「……ったく」
小さく息を吐く。
そのまま、腕を組む。
視線は、外さない。
二人の姿を、じっと見ている。
気づけば。
その目は、柔らかくなっていた。
(……なんだろうな)
最初は、ただの近所のガキだった。
少し変わった。
少し強い。
それだけ。
だが。
今は違う。
「オビトー!もう一回だ!」
「いいぞ来い!」
また走る。
また笑う。
止まらない。
(……あいつ)
悠仁が、ああやって笑ってる。
それだけで、分かる。
あいつは、ちゃんと楽しいと思ってる。
無理してねぇ。
気を使ってもいねぇ。
(……なら、いいか)
自然と、そう思う。
そして。
オビト。
あいつもまた。
素の顔をしている。
作ってない。
隠してない。
そのままだ。
(……ああ)
理解する。
だからか。
だから、かもしれねぇ。
気づけば。
当たり前みたいに。
(……孫、みてぇなもんか)
心の中で、ぽつりと呟く。
血の繋がりはない。
だが。
それでも。
放っておけない。
目で追う。
様子を見る。
危ないことがあれば、止める。
(……似てやがるな)
自分でも、少し笑う。
年を取った。
そういうことかもしれない。
だが。
悪くない。
むしろ――
(……いいもんだ)
そう思える。
それだけで、十分だった。
夕日が、少しずつ沈んでいく。
オレンジ色の光が、二人を照らす。
走って。
笑って。
ぶつかって。
また笑う。
その光景を。
倭助は、静かに見守っていた。
冷たくて、乾いていて、余計なものを削ぎ落としたような静けさがある。
虎杖倭助は、家の前に立っていた。
特に用があるわけでもない。
ただ、外の空気を吸いながら、ぼんやりと周囲を見ている。
その視線の先。
少し離れた公園。
二つの影が、動いていた。
「おら、まだまだだぞ悠仁!」
「くっそ、待てって!」
声が、響く。
元気で、遠慮がなくて、まっすぐな声。
(……またやってやがる)
口元が、わずかに緩む。
裏葉オビト。
そして、虎杖悠仁。
相変わらず、全力だ。
走って、ぶつかって、笑って、また走る。
単純な遊び。
だが、その中にある“何か”は、ただの子どもとは違う。
(……いい動きしてる)
自然と、目が行く。
足の運び。
重心の乗せ方。
無駄がない。
教わったわけでもないのに、ああいう動きができる。
(あいつ、やっぱり普通じゃねぇな)
確信に近い感覚。
だが。
それを、不気味とは思わない。
むしろ――
(……面白ぇ)
そう思う。
視線を、少しだけ横にずらす。
悠仁。
あいつも、普通じゃない。
身体が強い。
妙に。
だが。
オビトと並ぶと、それが際立つ。
互いに、遠慮がない。
遠慮がないからこそ、全力でぶつかる。
それでも、壊れない。
(……いい関係だ)
ぽつりと、心の中で呟く。
友達。
それは、そうだろう。
だが、それだけじゃない。
もっと、深い。
もっと、自然な距離。
(兄弟、みてぇなもんか)
ふっと、そんな言葉が浮かぶ。
血は繋がっていない。
だが。
それ以上に、繋がっているような感覚。
「……ったく」
小さく息を吐く。
そのまま、腕を組む。
視線は、外さない。
二人の姿を、じっと見ている。
気づけば。
その目は、柔らかくなっていた。
(……なんだろうな)
最初は、ただの近所のガキだった。
少し変わった。
少し強い。
それだけ。
だが。
今は違う。
「オビトー!もう一回だ!」
「いいぞ来い!」
また走る。
また笑う。
止まらない。
(……あいつ)
悠仁が、ああやって笑ってる。
それだけで、分かる。
あいつは、ちゃんと楽しいと思ってる。
無理してねぇ。
気を使ってもいねぇ。
(……なら、いいか)
自然と、そう思う。
そして。
オビト。
あいつもまた。
素の顔をしている。
作ってない。
隠してない。
そのままだ。
(……ああ)
理解する。
だからか。
だから、かもしれねぇ。
気づけば。
当たり前みたいに。
(……孫、みてぇなもんか)
心の中で、ぽつりと呟く。
血の繋がりはない。
だが。
それでも。
放っておけない。
目で追う。
様子を見る。
危ないことがあれば、止める。
(……似てやがるな)
自分でも、少し笑う。
年を取った。
そういうことかもしれない。
だが。
悪くない。
むしろ――
(……いいもんだ)
そう思える。
それだけで、十分だった。
夕日が、少しずつ沈んでいく。
オレンジ色の光が、二人を照らす。
走って。
笑って。
ぶつかって。
また笑う。
その光景を。
倭助は、静かに見守っていた。
【〆栞】