忘却の記憶
第三十八話「忘却の記憶」
火。
風。
雷。
土。
水。
木。
そして――。
夜は、静かだった。
だが、その静けさの奥で、何かが揺れていた。
眠りの中。
裏葉オビトの意識は、深く沈んでいく。
沈んで――
そして、浮かび上がる。
(……ああ)
思い出す。
忘れていたはずのもの。
忘れていたかったもの。
だが。
それでも、確かに“あった”もの。
死ぬ時というのは、案外あっけないものらしい。
そんなことを思った記憶。
最初の人生。
忍の世界。
戦いと憎しみが当たり前の、血塗られた世界。
夢は、火影。
馬鹿みたいな夢。
落ちこぼれの俺が、追いかけた夢。
(……でも)
それでも。
あの頃は、確かに楽しかった。
仲間がいて。
先生がいて。
――好きな人がいて。
(リン……)
名前が、浮かぶ。
その瞬間。
世界が、壊れる。
彼女が死んだ日。
すべてが、崩れた。
光が消えて。
残ったのは、闇だけだった。
(……俺は)
堕ちた。
迷わず。
まっすぐに。
闇へと。
仮面を被り。
名前を捨て。
世界を壊そうとした。
第四次忍界大戦。
暁の黒幕。
無限月読。
全部――。
全部、自分が選んだ道だ。
(……それでも)
最後に。
もう一度だけ。
忍になれた。
最終決戦。
大筒木カグヤ。
放たれた、一撃。
共殺しの灰骨。
ナルトとサスケを、貫くはずだったそれに。
体が、勝手に動いていた。
(……ああ)
分かっていた。
何をするべきか。
迷いは、なかった。
神威。
空間を捻じ曲げる。
一方の灰骨を、飛ばす。
そして――
残りを、受ける。
全部。
(……痛ぇな)
胸を、貫かれる。
体が、崩れる。
崩壊していく。
塵になる。
消えていく。
「オビト!!」
声。
懐かしい。
あまりにも。
(……カカシか)
ぼんやりと、思う。
そして。
もう一つ。
「……ナルト」
うずまきナルト。
まっすぐで。
馬鹿で。
誰よりも優しい。
かつての、自分みたいなやつ。
(……あいつなら)
託せる。
夢を。
願いを。
未来を。
「ナルト……」
声が、掠れる。
それでも。
伝える。
「お前は……火影になれ」
それだけでいい。
それで、十分だ。
ああ――
これでいい。
全部、終わった。
贖罪も。
後悔も。
全部。
解けていく。
(……楽になったな)
ふっと、力が抜ける。
意識が、沈む。
その奥で。
何かが、揺れる。
陰。
形を与える力。
陽。
命を繋ぐ力。
そして。
火が灯る。
風が流れる。
雷が走る。
水が巡る。
土が支える。
木が芽吹く。
すべてが、繋がる。
ひとつに。
(……なんだ、これ)
知らない。
だが。
知っている。
遠い記憶。
六道。
十尾。
かつての力。
かつての到達点。
(……ああ)
これが。
残っていたもの。
忘れていたもの。
そして――
今、目覚めるもの。
「……」
眠りの中で。
オビトの指が、わずかに動く。
見えない何かが、揺れる。
空気が、震える。
だが。
それはまだ、微かだ。
ほんの、兆し。
(……まあいいか)
深くは考えない。
今は、眠い。
それだけだ。
意識が、再び沈む。
だが、その奥で。
確実に。
新たな“力”が、息吹いていた。
術式――六道五行陰陽。
まだ誰も知らない。
呪術史にも存在しない。
異質の力が。
静かに。
目を覚まし始めていた。
火。
風。
雷。
土。
水。
木。
そして――。
夜は、静かだった。
だが、その静けさの奥で、何かが揺れていた。
眠りの中。
裏葉オビトの意識は、深く沈んでいく。
沈んで――
そして、浮かび上がる。
(……ああ)
思い出す。
忘れていたはずのもの。
忘れていたかったもの。
だが。
それでも、確かに“あった”もの。
死ぬ時というのは、案外あっけないものらしい。
そんなことを思った記憶。
最初の人生。
忍の世界。
戦いと憎しみが当たり前の、血塗られた世界。
夢は、火影。
馬鹿みたいな夢。
落ちこぼれの俺が、追いかけた夢。
(……でも)
それでも。
あの頃は、確かに楽しかった。
仲間がいて。
先生がいて。
――好きな人がいて。
(リン……)
名前が、浮かぶ。
その瞬間。
世界が、壊れる。
彼女が死んだ日。
すべてが、崩れた。
光が消えて。
残ったのは、闇だけだった。
(……俺は)
堕ちた。
迷わず。
まっすぐに。
闇へと。
仮面を被り。
名前を捨て。
世界を壊そうとした。
第四次忍界大戦。
暁の黒幕。
無限月読。
全部――。
全部、自分が選んだ道だ。
(……それでも)
最後に。
もう一度だけ。
忍になれた。
最終決戦。
大筒木カグヤ。
放たれた、一撃。
共殺しの灰骨。
ナルトとサスケを、貫くはずだったそれに。
体が、勝手に動いていた。
(……ああ)
分かっていた。
何をするべきか。
迷いは、なかった。
神威。
空間を捻じ曲げる。
一方の灰骨を、飛ばす。
そして――
残りを、受ける。
全部。
(……痛ぇな)
胸を、貫かれる。
体が、崩れる。
崩壊していく。
塵になる。
消えていく。
「オビト!!」
声。
懐かしい。
あまりにも。
(……カカシか)
ぼんやりと、思う。
そして。
もう一つ。
「……ナルト」
うずまきナルト。
まっすぐで。
馬鹿で。
誰よりも優しい。
かつての、自分みたいなやつ。
(……あいつなら)
託せる。
夢を。
願いを。
未来を。
「ナルト……」
声が、掠れる。
それでも。
伝える。
「お前は……火影になれ」
それだけでいい。
それで、十分だ。
ああ――
これでいい。
全部、終わった。
贖罪も。
後悔も。
全部。
解けていく。
(……楽になったな)
ふっと、力が抜ける。
意識が、沈む。
その奥で。
何かが、揺れる。
陰。
形を与える力。
陽。
命を繋ぐ力。
そして。
火が灯る。
風が流れる。
雷が走る。
水が巡る。
土が支える。
木が芽吹く。
すべてが、繋がる。
ひとつに。
(……なんだ、これ)
知らない。
だが。
知っている。
遠い記憶。
六道。
十尾。
かつての力。
かつての到達点。
(……ああ)
これが。
残っていたもの。
忘れていたもの。
そして――
今、目覚めるもの。
「……」
眠りの中で。
オビトの指が、わずかに動く。
見えない何かが、揺れる。
空気が、震える。
だが。
それはまだ、微かだ。
ほんの、兆し。
(……まあいいか)
深くは考えない。
今は、眠い。
それだけだ。
意識が、再び沈む。
だが、その奥で。
確実に。
新たな“力”が、息吹いていた。
術式――六道五行陰陽。
まだ誰も知らない。
呪術史にも存在しない。
異質の力が。
静かに。
目を覚まし始めていた。
【〆栞】