強者の戦い方

囲まれている。

数は五。

前後左右、逃げ道はない。

だが――

(だからどうした)

一歩、踏み出す。

自分から。

待たない。

受けない。

“先に動く”。

それが、基本だ。

「――!」

最も近い一人へ、一直線。

迷いのない踏み込み。

間合いを一気に潰す。

「速――」

言い切る前に、拳が入る。

鳩尾。

呼吸を奪う。

体が折れる。

(次)

止まらない。

一撃で終わり。

確認もしない。

視線は、すでに次へ。

横から来る気配。

(甘ぇ)

半歩引く。

拳が空を切る。

そのまま、肘。

顎へ。

跳ね上げる。

「がっ――」

倒れる。

(次だ)

後ろ。

気配。

踏み込む音。

振り返らない。

そのまま、体を沈める。

低く。

重心を落とす。

足払い。

崩れる。

上から、踏み込む。

肩を押さえ、地面に叩きつける。

(遅ぇな)

三人。

まだ、三人。

だが、連携が甘い。

一人ずつ来てる。

(……それで勝てると思ってんのか)

思わず、笑いそうになる。

「――っ!」

今度は、同時。

左右から。

(やっとか)

だが、それでも――

(足りねぇ)

一歩、前へ。

自分から、間に入る。

二人の攻撃が、交差する位置。

わざと、そこへ。

「な――」

躊躇。

ほんの一瞬。

その隙で、十分。

片方の腕を掴む。

引く。

もう片方へぶつける。

体勢が崩れる。

(まとめてだ)

そのまま、回転。

腰を使う。

投げる。

二人まとめて、地面へ。

鈍い音。

「……っ」

呻き声。

(終わりだな)

立っているのは、自分だけ。

呼吸は、乱れていない。

心拍も、安定している。

(こんなもんか)

少しだけ、肩を回す。

軽い。

体が、よく動く。

思った通りに。

無駄なく。

(……いいな)

この感覚。

前と同じ。

いや、少し違う。

今の体に、最適化されている。

「……何だ、その動きは」

最後に残った一人が、呟く。

声に、明確な動揺がある。

(そりゃそうだろ)

全部、崩されたんだからな。

「別に」

肩をすくめる。

軽く。

「普通だろ」

嘘だ。

普通じゃない。

分かってる。

だが、説明する気はない。

「戦い方、知らねぇのか?」

少しだけ、首を傾げる。

挑発でもなんでもなく。

本気で疑問だ。

「数が多けりゃ勝てるとか思ってんなら」

一歩、踏み出す。

「やめとけ」

静かに言う。

「雑魚の発想だ」

ぴくり、と男の表情が動く。

怒り。

だが、それ以上に。

理解。

(まあ、そうだよな)

分かるはずだ。

今の差で。

「……貴様」

低く、絞り出す。

だが、もう遅い。

(終わってる)

勝負は、ついている。

「帰れよ」

軽く言う。

「親に用あんなら、そっち行け」

それが筋だ。

最初から。

男は、しばらく動かなかった。

だが。

やがて。

「……撤退する」

短く言う。

他の連中を確認する。

全員、戦闘不能ではない。

だが、続行は無理。

判断は、正しい。

そのまま、後退る。

気配が、離れていく。

完全に。

静寂が戻る。

(……ふぅ)

小さく息を吐く。

ランドセルを拾う。

肩にかける。

(ほんと、面倒くせぇな)

日常に戻るだけなのに。

いちいち邪魔が入る。

歩き出す。

何事もなかったかのように。

だが。

口元は、少しだけ緩んでいた。

(……戦闘狂なマダラ仕込みなもんで、悪かったな)

内心で、ぼそりと呟く。

否定する気はない。

むしろ――

(嫌いじゃねぇ)

そう思いながら。

オビトは、いつもの帰り道を進んでいった。


〆栞
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