五条家
白い障子越しに、柔らかな光が差し込んでいる。
静かな空間。
整えられた畳。
その中央に、報告書が置かれていた。
「……へぇ」
軽い声が落ちる。
五条悟
片手で紙をめくりながら、内容を追う。
禪院家、加茂家。
両家から上がってきた、同時期の報告。
その結論は――
同じだった。
「完封、ねぇ」
くすり、と笑う。
だが、その目は完全に興味を捉えている。
“裏葉オビト(十一歳)
複数の術師による接触、全て失敗。
対象単独により制圧。損害軽微、戦闘不能多数”
「……マジ?」
思わず、声が漏れる。
軽い。
だが、そこに混じる驚きは本物だ。
「十一歳でこれ?」
紙を指で叩く。
とん、とん、と。
リズムよく。
「いやいや、ちょっと待って」
整理する。
禪院の術師。
加茂の術師。
どちらも、雑魚ではない。
少なくとも、“子供に負けるような連中”ではない。
それが――
「完封」
逃げられた、ではない。
取り逃がした、でもない。
“負けた”。
しかも。
「一対複数で、ね」
完全に、格上のやり方だ。
「……やば」
ぽつりと呟く。
その言葉は、軽い。
だが、評価は重い。
「これはもう」
顔を上げる。
天井を見上げるように。
「当たり、どころじゃないな」
笑う。
楽しそうに。
「大当たりじゃん」
禪院と加茂。
その血が交わっただけでも異例。
だが。
その結果がこれだ。
「血統ガチャ、大成功ってやつ?」
冗談めかして言う。
だが、内容は冗談じゃない。
「しかもさ」
もう一度、報告書に目を落とす。
「赤血操術に似た挙動」
「水の操作」
「熱エネルギーの発現」
一つじゃない。
複数。
しかも、系統が違う。
「……何それ」
思わず、笑う。
「盛りすぎでしょ」
普通は、ありえない。
術式は、一つ。
それが基本。
なのに。
「複合?」
いや。
それとも――
「全然別物?」
考える。
だが、すぐにやめる。
「まあいいや」
分からないなら。
「見ればいいし」
結論は、シンプルだ。
興味は、最大級。
「で」
紙を、ひらりと閉じる。
「禪院と加茂は」
すでに、動いている。
だが。
「連敗、と」
口元が、緩む。
「そりゃそうなるでしょ」
あのやり方。
あの思考。
「真正面から行って勝てる相手じゃないよ、それ」
むしろ。
「相手の土俵で戦ってる時点で負け」
冷静な分析。
感情はない。
ただの事実。
「……さて」
立ち上がる。
軽く伸びをする。
骨が鳴る。
「どうしよっかな」
このまま、見てるだけでもいい。
いずれ、また動きがある。
その時に乗るのも、悪くない。
だが。
「でも」
足を一歩、踏み出す。
「ちょっと会いたいよね」
本音が漏れる。
あの時。
仙台で、すれ違った。
ほんの少しの差で。
「次は、逃さないようにしないと」
笑う。
軽く。
だが、その目は鋭い。
完全に、“標的”を捉えた目だ。
「十一歳、か」
ぽつりと呟く。
「いいね」
その評価は、シンプルだった。
「将来、有望すぎでしょ」
そして。
静かな部屋に、足音が響く。
五条悟は、動き出す。
ただ一つの理由で。
“面白いから”。
それだけで、十分だった。
静かな空間。
整えられた畳。
その中央に、報告書が置かれていた。
「……へぇ」
軽い声が落ちる。
五条悟
片手で紙をめくりながら、内容を追う。
禪院家、加茂家。
両家から上がってきた、同時期の報告。
その結論は――
同じだった。
「完封、ねぇ」
くすり、と笑う。
だが、その目は完全に興味を捉えている。
“裏葉オビト(十一歳)
複数の術師による接触、全て失敗。
対象単独により制圧。損害軽微、戦闘不能多数”
「……マジ?」
思わず、声が漏れる。
軽い。
だが、そこに混じる驚きは本物だ。
「十一歳でこれ?」
紙を指で叩く。
とん、とん、と。
リズムよく。
「いやいや、ちょっと待って」
整理する。
禪院の術師。
加茂の術師。
どちらも、雑魚ではない。
少なくとも、“子供に負けるような連中”ではない。
それが――
「完封」
逃げられた、ではない。
取り逃がした、でもない。
“負けた”。
しかも。
「一対複数で、ね」
完全に、格上のやり方だ。
「……やば」
ぽつりと呟く。
その言葉は、軽い。
だが、評価は重い。
「これはもう」
顔を上げる。
天井を見上げるように。
「当たり、どころじゃないな」
笑う。
楽しそうに。
「大当たりじゃん」
禪院と加茂。
その血が交わっただけでも異例。
だが。
その結果がこれだ。
「血統ガチャ、大成功ってやつ?」
冗談めかして言う。
だが、内容は冗談じゃない。
「しかもさ」
もう一度、報告書に目を落とす。
「赤血操術に似た挙動」
「水の操作」
「熱エネルギーの発現」
一つじゃない。
複数。
しかも、系統が違う。
「……何それ」
思わず、笑う。
「盛りすぎでしょ」
普通は、ありえない。
術式は、一つ。
それが基本。
なのに。
「複合?」
いや。
それとも――
「全然別物?」
考える。
だが、すぐにやめる。
「まあいいや」
分からないなら。
「見ればいいし」
結論は、シンプルだ。
興味は、最大級。
「で」
紙を、ひらりと閉じる。
「禪院と加茂は」
すでに、動いている。
だが。
「連敗、と」
口元が、緩む。
「そりゃそうなるでしょ」
あのやり方。
あの思考。
「真正面から行って勝てる相手じゃないよ、それ」
むしろ。
「相手の土俵で戦ってる時点で負け」
冷静な分析。
感情はない。
ただの事実。
「……さて」
立ち上がる。
軽く伸びをする。
骨が鳴る。
「どうしよっかな」
このまま、見てるだけでもいい。
いずれ、また動きがある。
その時に乗るのも、悪くない。
だが。
「でも」
足を一歩、踏み出す。
「ちょっと会いたいよね」
本音が漏れる。
あの時。
仙台で、すれ違った。
ほんの少しの差で。
「次は、逃さないようにしないと」
笑う。
軽く。
だが、その目は鋭い。
完全に、“標的”を捉えた目だ。
「十一歳、か」
ぽつりと呟く。
「いいね」
その評価は、シンプルだった。
「将来、有望すぎでしょ」
そして。
静かな部屋に、足音が響く。
五条悟は、動き出す。
ただ一つの理由で。
“面白いから”。
それだけで、十分だった。
【〆栞】