お試し試合
景色が止まった。
急激な加速が、ふっと消える。
地面に降ろされる。
足が、しっかりと着く。
だが――
「……」
周囲を見渡す。
人気が、ない。
建物もまばら。
人の気配も、音も、ほとんどない。
(……どこだよここ)
さっきまでの帰り道とは、明らかに違う。
距離感が、おかしい。
(連れてきやがったな、あいつ)
視線を向ける。
白髪の男。
目隠し。
軽い雰囲気。
さっきの不審者が、そこにいる。
「はい、到着」
軽い声。
軽すぎる。
「ちょっとここでさ」
振り返る。
笑っている。
「試していい?」
(……は?)
意味が分からない。
「実力、見たいんだよね」
さらっと言う。
まるで、遊びに誘うみたいに。
(ふざけんな)
こっちは拉致られてんだぞ。
普通に。
犯罪だろ。
「……帰る」
短く言う。
それが最優先だ。
だが。
「まあまあ」
手をひらひらさせる。
「軽くでいいからさ」
軽い。
本当に軽い。
(……殴っていいか?)
内心で思う。
かなり本気で。
その時。
オビトは、ポケットからスマホを取り出した。
画面をつける。
「……」
表示。
圏外。
(……おい)
もう一度、確認する。
変わらない。
(圏外ってなんだよ!?)
完全に、通信が切れている。
位置も分からない。
助けも呼べない。
(ここどこだよ!!)
一瞬、頭を抱えたくなる。
だが。
「ね?」
白髪の男が、楽しそうに言う。
「逃げられないでしょ?」
(……こいつ)
完全に、分かってやってる。
計画的。
確信犯。
(マジで最悪だな)
深く、息を吐く。
諦める。
一旦。
「……分かったよ」
スマホをしまう。
どうせ、このままじゃ帰れない。
だったら。
(さっさと終わらせる)
それだけだ。
「いいぜ」
肩を回す。
軽く、首を鳴らす。
体をほぐす。
「付き合ってやる」
その代わり。
視線を上げる。
まっすぐ、白髪の男を見る。
「終わったら帰すんだろうな?」
「もちろん」
即答。
軽い。
だが、嘘はなさそうだ。
(……信用はしねぇけどな)
心の中で付け加える。
そのまま、一歩引く。
距離を取る。
構える。
空気が、変わる。
さっきまでの緩さが、消える。
代わりに――
集中。
(……腹立つな)
正直な感想。
喉も渇いてる。
暑い。
汗が、じわりと流れる。
なのに。
無理やり連れてこられて。
試合だの何だの。
(……やるしかねぇけど)
だったら。
「……加減しねぇぞ」
ぽつりと、言う。
別に脅しじゃない。
事実だ。
「いいね」
白髪の男が、笑う。
楽しそうに。
「その方がいい」
軽く、手を上げる。
構えとも言えない、ゆるい姿勢。
だが。
(……やべぇな)
分かる。
隙だらけに見えて。
一切、隙がない。
(禪院や加茂とは、格が違う)
完全に、別物。
(……上等だ)
むしろ、燃える。
体の奥。
血が、騒ぐ。
水が、流れる。
火が、揺れる。
全部が、応える。
「――行くぞ」
短く言う。
返事は待たない。
踏み込む。
地面を蹴る。
一気に距離を詰める。
(ぶっ飛ばす)
それだけを考えて。
拳を、振り抜いた。
急激な加速が、ふっと消える。
地面に降ろされる。
足が、しっかりと着く。
だが――
「……」
周囲を見渡す。
人気が、ない。
建物もまばら。
人の気配も、音も、ほとんどない。
(……どこだよここ)
さっきまでの帰り道とは、明らかに違う。
距離感が、おかしい。
(連れてきやがったな、あいつ)
視線を向ける。
白髪の男。
目隠し。
軽い雰囲気。
さっきの不審者が、そこにいる。
「はい、到着」
軽い声。
軽すぎる。
「ちょっとここでさ」
振り返る。
笑っている。
「試していい?」
(……は?)
意味が分からない。
「実力、見たいんだよね」
さらっと言う。
まるで、遊びに誘うみたいに。
(ふざけんな)
こっちは拉致られてんだぞ。
普通に。
犯罪だろ。
「……帰る」
短く言う。
それが最優先だ。
だが。
「まあまあ」
手をひらひらさせる。
「軽くでいいからさ」
軽い。
本当に軽い。
(……殴っていいか?)
内心で思う。
かなり本気で。
その時。
オビトは、ポケットからスマホを取り出した。
画面をつける。
「……」
表示。
圏外。
(……おい)
もう一度、確認する。
変わらない。
(圏外ってなんだよ!?)
完全に、通信が切れている。
位置も分からない。
助けも呼べない。
(ここどこだよ!!)
一瞬、頭を抱えたくなる。
だが。
「ね?」
白髪の男が、楽しそうに言う。
「逃げられないでしょ?」
(……こいつ)
完全に、分かってやってる。
計画的。
確信犯。
(マジで最悪だな)
深く、息を吐く。
諦める。
一旦。
「……分かったよ」
スマホをしまう。
どうせ、このままじゃ帰れない。
だったら。
(さっさと終わらせる)
それだけだ。
「いいぜ」
肩を回す。
軽く、首を鳴らす。
体をほぐす。
「付き合ってやる」
その代わり。
視線を上げる。
まっすぐ、白髪の男を見る。
「終わったら帰すんだろうな?」
「もちろん」
即答。
軽い。
だが、嘘はなさそうだ。
(……信用はしねぇけどな)
心の中で付け加える。
そのまま、一歩引く。
距離を取る。
構える。
空気が、変わる。
さっきまでの緩さが、消える。
代わりに――
集中。
(……腹立つな)
正直な感想。
喉も渇いてる。
暑い。
汗が、じわりと流れる。
なのに。
無理やり連れてこられて。
試合だの何だの。
(……やるしかねぇけど)
だったら。
「……加減しねぇぞ」
ぽつりと、言う。
別に脅しじゃない。
事実だ。
「いいね」
白髪の男が、笑う。
楽しそうに。
「その方がいい」
軽く、手を上げる。
構えとも言えない、ゆるい姿勢。
だが。
(……やべぇな)
分かる。
隙だらけに見えて。
一切、隙がない。
(禪院や加茂とは、格が違う)
完全に、別物。
(……上等だ)
むしろ、燃える。
体の奥。
血が、騒ぐ。
水が、流れる。
火が、揺れる。
全部が、応える。
「――行くぞ」
短く言う。
返事は待たない。
踏み込む。
地面を蹴る。
一気に距離を詰める。
(ぶっ飛ばす)
それだけを考えて。
拳を、振り抜いた。
【〆栞】