雷
第四十九話「雷」
最初の一撃。
それだけで、十分だった。
――五条悟は、理解する。
(……へぇ)
拳が来る。
速い。
いや、速いだけじゃない。
踏み込みの質。
重心移動。
無駄のなさ。
全部が、洗練されている。
(体術、完成してるじゃん)
子供のそれじゃない。
戦い慣れている動き。
「いいね」
軽く呟く。
だが。
触れない。
拳は、当たらない。
寸前で止まる。
いや、正確には――
「当たってない、でしょ?」
距離はゼロ。
なのに、届かない。
“無限”。
その壁に、拳が阻まれている。
(……ほらね)
オビトの拳が止まる。
確かな手応えがあるはずなのに、届かない違和感。
五条は、そのまま一歩下がる。
余裕の動き。
「で?」
軽く首を傾げる。
「どうする?」
その目は、楽しそうだった。
だが。
同時に、見ている。
全部。
(呪力、でか)
内包量が、桁違い。
しかも、荒れていない。
安定している。
(この歳でこれ?)
普通じゃない。
むしろ。
「……異常だね」
ぽつりと、呟く。
そして。
(血)
さっきの戦闘記録通り。
血の操作。
「それだけじゃない」
水。
流れ。
制御。
そして――
(火)
あの一撃。
熱の爆発。
(……複数持ち?)
ありえない。
だが、目の前にある。
事実として。
「面白いなぁ」
自然と、笑みが浮かぶ。
これは。
本当に。
「最高じゃん」
一方。
オビトは、理解していた。
(……当たらねぇ)
目の前。
距離はゼロ。
だが。
届かない。
何かが、ある。
壁みたいな。
見えない。
だが、確実に存在する。
(……格が違うな)
認める。
あの禪院や加茂とは、比較にならない。
別次元。
(……強ぇ)
だからこそ。
「……ムカつくな」
ぽつりと、呟く。
余裕の顔。
軽い口調。
全部が、腹立たしい。
(自分の強さ、分かってやがる)
だから、あの態度。
軽薄に見えて。
全部、計算の上。
(……気に食わねぇ)
拳を、引く。
距離を取る。
一歩。
二歩。
呼吸を整える。
(でもよ)
負ける気は、ない。
勝てるとも、思っていない。
だが。
(……一発くらい)
入れてやりたい。
それくらいは。
その時。
どくん
鼓動が、強く打つ。
呪力が、揺れる。
いや――
増える。
(……っ!?)
感覚が、変わる。
体の奥。
何かが、弾ける。
血。
水。
火。
それらとは違う。
もっと、鋭い。
もっと、速い。
(……これ)
分かる。
直感で。
「雷、か」
口から、言葉が漏れる。
同時に。
空気が、震える。
ぴしっ
微かな音。
髪が、逆立つ。
静電気。
いや、それ以上。
(……いける)
確信する。
これなら。
届くかもしれない。
「へぇ」
五条が、興味深そうに声を上げる。
「まだあるんだ」
楽しそうに。
完全に、観察者の目。
(その余裕)
崩す。
一瞬でもいい。
崩す。
「――行くぞ」
踏み込む。
さっきより、速い。
明らかに。
雷が、後押しする。
加速。
一気に、距離を詰める。
拳を、振る。
今度は。
“当てる”。
「――」
その瞬間。
空気が、裂けた。
雷が、走る。
一直線に。
五条へ向かって。
「……おっと」
わずかに、目が細まる。
ほんの一瞬。
その余裕が、揺れた。
(……今だ!)
全力で、踏み込む。
拳を、叩き込む。
雷を、纏って。
全てを乗せて。
その一撃が――
“壁”に、届いた。
最初の一撃。
それだけで、十分だった。
――五条悟は、理解する。
(……へぇ)
拳が来る。
速い。
いや、速いだけじゃない。
踏み込みの質。
重心移動。
無駄のなさ。
全部が、洗練されている。
(体術、完成してるじゃん)
子供のそれじゃない。
戦い慣れている動き。
「いいね」
軽く呟く。
だが。
触れない。
拳は、当たらない。
寸前で止まる。
いや、正確には――
「当たってない、でしょ?」
距離はゼロ。
なのに、届かない。
“無限”。
その壁に、拳が阻まれている。
(……ほらね)
オビトの拳が止まる。
確かな手応えがあるはずなのに、届かない違和感。
五条は、そのまま一歩下がる。
余裕の動き。
「で?」
軽く首を傾げる。
「どうする?」
その目は、楽しそうだった。
だが。
同時に、見ている。
全部。
(呪力、でか)
内包量が、桁違い。
しかも、荒れていない。
安定している。
(この歳でこれ?)
普通じゃない。
むしろ。
「……異常だね」
ぽつりと、呟く。
そして。
(血)
さっきの戦闘記録通り。
血の操作。
「それだけじゃない」
水。
流れ。
制御。
そして――
(火)
あの一撃。
熱の爆発。
(……複数持ち?)
ありえない。
だが、目の前にある。
事実として。
「面白いなぁ」
自然と、笑みが浮かぶ。
これは。
本当に。
「最高じゃん」
一方。
オビトは、理解していた。
(……当たらねぇ)
目の前。
距離はゼロ。
だが。
届かない。
何かが、ある。
壁みたいな。
見えない。
だが、確実に存在する。
(……格が違うな)
認める。
あの禪院や加茂とは、比較にならない。
別次元。
(……強ぇ)
だからこそ。
「……ムカつくな」
ぽつりと、呟く。
余裕の顔。
軽い口調。
全部が、腹立たしい。
(自分の強さ、分かってやがる)
だから、あの態度。
軽薄に見えて。
全部、計算の上。
(……気に食わねぇ)
拳を、引く。
距離を取る。
一歩。
二歩。
呼吸を整える。
(でもよ)
負ける気は、ない。
勝てるとも、思っていない。
だが。
(……一発くらい)
入れてやりたい。
それくらいは。
その時。
どくん
鼓動が、強く打つ。
呪力が、揺れる。
いや――
増える。
(……っ!?)
感覚が、変わる。
体の奥。
何かが、弾ける。
血。
水。
火。
それらとは違う。
もっと、鋭い。
もっと、速い。
(……これ)
分かる。
直感で。
「雷、か」
口から、言葉が漏れる。
同時に。
空気が、震える。
ぴしっ
微かな音。
髪が、逆立つ。
静電気。
いや、それ以上。
(……いける)
確信する。
これなら。
届くかもしれない。
「へぇ」
五条が、興味深そうに声を上げる。
「まだあるんだ」
楽しそうに。
完全に、観察者の目。
(その余裕)
崩す。
一瞬でもいい。
崩す。
「――行くぞ」
踏み込む。
さっきより、速い。
明らかに。
雷が、後押しする。
加速。
一気に、距離を詰める。
拳を、振る。
今度は。
“当てる”。
「――」
その瞬間。
空気が、裂けた。
雷が、走る。
一直線に。
五条へ向かって。
「……おっと」
わずかに、目が細まる。
ほんの一瞬。
その余裕が、揺れた。
(……今だ!)
全力で、踏み込む。
拳を、叩き込む。
雷を、纏って。
全てを乗せて。
その一撃が――
“壁”に、届いた。
【〆栞】