現代の異能

雷が、走った。

一直線。

迷いなく。

空気を裂いて、五条悟へと届く。

「――」

ほんの一瞬。

五条の目が、細まる。

それは。

初めての反応だった。

(……おいおい)

内心で、わずかに驚く。

“触れた”。

正確には――

“触れかけた”。

無限。

その絶対的な隔たりに。

今の一撃は、確かに干渉した。

(まさか)

こんなことがあるとは、思っていなかった。

小学生。

しかも、呪術の教育を受けていない。

完全な“独学”。

それで。

(壁に触るって、どういうこと?)

理解が追いつかない。

理屈じゃない。

ただの現象。

だが、それが――

「……いいね」

口元が、上がる。

抑えきれない。

「すごいじゃん」

心からの言葉だった。

一方。

オビトは、舌打ちしていた。

「……チッ」

確かに、手応えはあった。

だが。

届いていない。

完全には。

(……まだか)

あと一歩。

ほんの少し。

だが、その差が遠い。

(やっぱ、バケモンだな)

認めるしかない。

だが。

それでも。

「……でもよ」

小さく呟く。

息は上がっていない。

体も、まだ動く。

(いける)

感覚が、ある。

可能性が。

五条は、その姿を見ていた。

じっと。

興味深そうに。

(……こいつ)

ただの才能じゃない。

“質”が違う。

呪力の総量。

制御。

発現する力。

全部が、規格外。

そして何より――

(壁に触れた)

それが、全てだった。

自分の領域。

絶対的な優位。

そこに。

“届く可能性がある存在”。

(……マジかよ)

心の中で、静かに呟く。

そして。

確信する。

(こいつ)

将来。

もしかしたら。

「……僕の隣に立てるかもしれない」

ぽつりと、口に出る。

その言葉は、軽くない。

むしろ。

最大級の評価。

「ねえ」

ゆっくりと、一歩踏み出す。

距離を、少しだけ詰める。

「君さ」

視線を、まっすぐに向ける。

「何なの?」

単純な疑問。

だが、その中身は重い。

「その力」

血。

水。

火。

そして――

「今の、雷」

全部、見た。

全部、感じた。

「術式、何?」

核心を突く。

普通じゃない。

ありえない。

だからこそ、知りたい。

その“正体”を。

オビトは、少しだけ目を細めた。

(……術式、ね)

その言葉。

まだ完全には理解していない。

だが。

意味は、なんとなく分かる。

(俺の力、か)

血だけじゃない。

水も。

火も。

雷も。

全部。

(……何なんだろうな、これ)

正直なところ、分からない。

だが。

一つだけ、はっきりしている。

「……さあな」

肩をすくめる。

軽く。

「俺も知らねぇ」

本音だった。

嘘じゃない。

だが。

「でもよ」

一歩、踏み出す。

「強ぇだろ?」

にやりと笑う。

その顔は。

完全に、少年のそれだった。

まっすぐで。

負けず嫌いで。

どこか楽しそうで。

五条は、それを見て。

ふっと、笑った。

「うん」

素直に、頷く。

「めちゃくちゃ強い」

そして。

その目が、細くなる。

興味。

期待。

全部が混ざる。

「いいね」

軽く、言う。

だが、その声には確かな熱があった。

「現代の異能、ってやつかな」

ぽつりと、呟く。

自分と。

そして――

目の前の少年。

「……面白い時代になりそうじゃん」

その言葉は。

未来を、見据えていた。


〆栞
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