「名前ちゃん!」
『うっ』

 ドシン。丁度誰もいない廊下に地味に響く。吹雪が後ろから抱きついてきて体が支えきれず、倒れてしまったのだ。
 にしても痛いな本当。そう思ったが、なぜか痛みはなかった。
 え? どうして?
 目を開けると目の前に私がいましたあらびっくり。こんなとこに鏡なんかあったかしら。じゃなくて!

『なんでどうしてここは鏡の国!?』
「まぁ、落ち着いてよ」
『逆になんであんたはそんなに落ち着いてんのよ』

 床に座り込んだまま私こと吹雪を睨むと、ハッ、とドヤ顔をされた。なにこいつむかつく。
 少し冷静になって状況を考えてみたら、どうやら入れ換わってしまったようで……。
 私はあのイケメンになっているのかと考えたらちょっとニヤけた。ちょっとだけね。てかこんなことがあり得ていいんだ。今までアニメや漫画だけの世界で起きることだと思ってたから。
 まぁ、ここまではまだよかったんだよ。まだね!
 でも……どうしてこうなったの……。

『いやぁぁあやめてぇぇぇぇ!!!』
「はぁはぁこの制服を脱いだら未知の世界が……っ」
『セーラー服を脱がさないでぇぇぇ!!』

 セーラー服じゃないってのはおいといて、吹雪君たら冗談きついんだから! マジでやめてマジでやめてお願いだから制服を脱ぎだすのはやめて脱ぎながら走るのはやめて!!

『周りをよく見なさいよあんた! 明らかに気持ち悪い奇妙なものを見る目でしょうが!』
「それは名前ちゃんの目がおかしいんだよっ」

 おかしいのはお前の頭だ。私の印象を悪くしたいのかこいつは。いい加減にしろ。
 全校に知れわたってしまう、そう考えたら涙が出てきた。あ、そう言えば私って今吹雪じゃん! よし……よっし!!

『うわぁぁぁぁんやだよぉぉぉやめてよおぉぉ』

 大号泣しながら走ってやる!!
 私達が走り去った後からちらほらあれ、吹雪? なんで泣いてんだよ、女言葉!? ついに吹雪君もオカマに目覚めたのねぇん! とか聞こえてきた。(おいこの学校にオカマいたのか)とりあえず吹雪の印象を悪くできたはず!

「スカートの中が……ぁはぁはぁ」

 間違いなく私の方が印象悪いよねこれ!? 自分の服を脱いで悶えるなんて私はナルシストかっ! いや違うだんじて違うナルシストなんかじゃない!
 心で必死に叫んだ瞬間、体が宙に浮かんだ。足がもつれて転んでしまったのだ。
あれ……? とっさに掴んだ布はなんなんだろう。
 今度こそきた痛みをこらえながら起き上がった私の前には地獄が広がっていた。

『うわあああやめろそんな目でこいつを私を見るな熊を見るなぁぁあ』
「名前ちゃんってば熊ちゃんパンツなんだね可愛い!」

 とっさに掴んだ布がスカートとか自分なんなんだよもう嫌だ。


大変遅くなってしまいましたが、この度もリクエストをくださりありがとうございました。
110703

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