待て待て私は姫になった覚えはないぞしかもお前らの。思わずそうつっこみたくなるような言い合いが目の前で起こり、初めて冷静さが消えた気がした。
 そりゃまぁ、こんなにかっこいい人達からそう言われたら……。
 っていうか私ったら完全にこいつらのペースじゃない!

『っ!?』

 な、なに、今の。もし、かして……。

「やっぱり名前ちゃんは美味しいや」

 そう言って艶かしく舌舐めずりをする士郎は、ついさっき私のファーストキスと呼ばれるものを奪った。
 士郎のわきでヒロトが何か喚いているが、まったく耳に入らない。落ち着け、落ち着くんだ、これは夢だ。
 そう自分に言い聞かせていたら、首がぐいっと曲げられ、また唇を塞がれた。準備をしていなかったため開きっぱなしだった口の中にヒロトの舌が侵入する。

『ん、っあ……ふ』
「基山君ばかりを相手しないで」

 待ってよ、相手してる気ないんだけど。
さっきよりも全然余裕がなくなっていた私はどうすることも出来ずに事が進んでいく。
 これまた突然士郎の舌だと思われる何かが首筋を這った。ぬるりとした感覚に思わず身体が反応する。

『はぁ、はぁ……ぁ…ひぁっ!』

 やっとヒロトに解放されたかと思ったら、すぐにヒロトも首筋を舐め始める。
 しばらく舐めると、両耳にやけに色っぽい声が届いた。「いただきます」と。
 次の瞬間、チクリと痛みが走った。なんだろうこの感覚。気持ち悪いような、気持ちいいような。

「んっ」
『あっ、つ』

 舐められている箇所が熱を持つ。
 吸血鬼ってのは事実だったってわけね。だって今目の前で血を滴らせて笑う二人は、それ以外には見えないから。
 馬鹿、吸いすぎ。そう呟いた後私の意識はブラックアウトした。

「これから一杯愛してあげる、基山君なんかよりね」
「何言ってるんだい君は? 名前を愛せるのは俺だけだよ」

 次に目が覚めたときは、自分の家でありますように。


黒飛鳥様、お久しぶりです。大変遅くなってしまい申し訳ありません…。
取り合い、吸血鬼パロと言うことで凄く楽しく書かせていただきました。が、途中微裏っぽく…え、あれ?
と、しっちゃかめっちゃかでしたがお気に召していただけたら嬉しいです!
リクエストありがとうございました。
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