あ。二人そろって声をあげた。

 学校帰り、冒険がてらに少し違う道を歩いてみようと思い、いつもの道とは別の道を選んで歩いていた。
 そしてふと思い出した。そういえばこっちは風丸君の家があるな。
 風丸君は私や円堂君達とは違う高校に行った。私は風丸君に密かに想いを寄せていたから、ショックを受けたのをよく覚えている。

 そして今その人が目の前にいる。ジャージを着ているところをみると、ランニングか何かをしているのだろう。

『久しぶり、風丸君』
「あぁ、久しぶりだな」

 風丸君は髪が少し伸びただけで何ら変わりはない。あ、声が低くなったかな。
 どうせだから話をしないか、ということになり並んで河川敷へと歩いた。河川敷につくと草むらに座る。こんなとこで好きな人にまた会えるなんて思いもしなかったから、今の気持ちを言葉にしたら、凄く嬉しい。

『高校、どう?』

 沈みだした太陽を眩しく思いながら話しかける。円堂君からちょっと話を聞いていたが、やはりこういうのは本人から聞いてみたい。
 風丸君は、楽しくやってるよと笑った。昔の私なら、笑顔が見れただけで喜んでいただろう。

「でも……好きだったやつと離れちゃって、少し寂しいかな」

 ドキッと胸が反応する。風丸君……好きな人いるんだ。誰なんだろう、私だったらいいな、なんていう淡い期待を抱きながら黙って話を聞き続ける。

「そいつさ、優しくて人一倍みんなを気遣って、信頼して、本当にサッカーが大好きなんだって笑いながら言うんだ」

 え……それって、もしかして。

「そいつは俺のことなんか好きじゃないけど。気持ちに気付いてすらくれないし」

 もしかしなくても、そうだ。自嘲気味に笑う彼に、チクリと胸が痛んだ。
 風丸君は、きっと秋ちゃんが好きなんだな。私も風丸君も片想いしてるんだ。どう足掻いても、秋ちゃんに勝てるはずがないよ。勝てる自信がないよ。
 込み上げてきた涙を必死で耐える。大分太陽は沈んでいて、空は暗くなってきていた。
 私は立ち上がり、無理矢理笑顔を貼り付けて言った。

『大丈夫、きっと気付いてくれるよ! 頑張ってね』

 それじゃもう遅いから、ばいばい。今日はありがとう。それだけ残して踵を返した。

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