翌日、いつも通りに学校に行って授業を受けて友達と喋って、なにも変わらない生活だったのに、どうも気が落ちている私を秋ちゃん達は心配してくれた。
 大丈夫だよ、笑って誤魔化す。今秋ちゃんを見たら、胸が痛む。
 気付いても、秋ちゃんは円堂君が好きだから意味がないのかな。永遠に片想いで終わっちゃうのかな。
 マイナスなことばかりを考えてしまい、憂鬱な気分になってしまう。

『はぁ』

 つい吐いてしまった溜め息に、秋ちゃんは「やっぱり名前ちゃん何か悩んでるよね」と言った。
 ここは……訊いてみようかな。秋ちゃんならどうするか。

『例えば、自分の好きな人が別の人を想っていて、自分の気持ちに気づいてなかったら、秋ちゃんだったらどうする?』

 唐突な私の質問に秋ちゃんは目を丸くする。でも私の真剣な顔を見てすぐにうーんと答えを考えだした。
 私の予想だったら、秋ちゃんはきっと身をひく。だって秋ちゃんはそんな人だから。

「私は、その人の幸せを願うかな。私の気持ちに気付いてないのならそのままでいいと思う。そのままでいたいから」

 やっぱり。はっきりと言った言葉には何の曇りもなく、心からそう思ってるんだとよくわかる。
 こんなに良い人に愛されてる円堂君が羨ましくなった。
 私も……こんな人になれるかな。
 それからはあっという間に時間が過ぎて、放課後になった。またあの道を通ろうかなと思いながら校門を出ると、よく見知った人物が立っていた。
 あれは風丸君? どうして彼がいるんだろう。
 誰かを待っているのだろうか。風丸君は時折キョロキョロとその誰かを捜している。そしてちょうどこちらを向いたとき目があった。彼は笑いながら走ってきた。

「よかった、まだ帰ってなくて……昨日の話の続きしたいんだけど、いいか?」

 嫌だ、なんて言えるはずがないから、代わりにうんと返事をした。


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