また同じ場所に来て同じ場所に座る。
話を切り出したのは風丸君からで、

「聞く好きだったやつと離れちゃったって言っただろ?」

 私の気にしていた話の続き。秋ちゃんでしょ、わかってるよ。
 気付いてないふりをして、頷く。

「昨日久しぶりにそいつに会えたんだ」

 嬉しそうに話す風丸君の横顔が、胸にグサリと突き刺さる。そっか、会ったんだ。

「でも話してる途中で勝手に切り上げて帰っちゃって、結局言えずじまいだったんだけど」

 え? 秋ちゃんならそんなこと絶対にしないはず。
 ……もしかして、もしかすると。

「俺、お前に会えてすげぇ嬉しかったんだからな」

 拗ねたように呟いた風丸君に、つい耳を疑いたくなった。
 今、私に言ったんだよね。お前って私だよね。
 風丸君の好きな人って秋ちゃんじゃないの? そう訊けばなんで木野なんだ? と訊き返された。
 嘘じゃない、夢じゃない。

「俺が好きなのは、名前だよ」

 微笑む彼に、つい涙が溢れる。
 風丸君は焦ったように私の頭を撫でて泣き止ませようとしてくれた。

『わ、私、全然気付かなかった……私も、風丸君が好き』
「本当……か?」
『嘘言って、どうすんのよ』

 顔を見合わせて笑い合う。ひとしきり笑うと、そのまま見つめ合う形になった。
 ゆっくりと近づいてくる彼を、目を閉じて受け入れた。



なんだかよくあるベタ話になってしまいました…。
プレイク様、リクエストありがとうございました。
110206

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