SPIRIT WORLD解読
「メモは今のところ全部で九枚。内容が見えてきた」
赤司少年からメモを受け取った花宮少年は色で分けて床に置いた。やっとメモの説明だ。
みんな少し身を乗り出して見る中、あたしも例に倣い覗き込む。
「白が五枚、黒が四枚。白は多分これで全部だな」
白のメモは以下のようになっている。
黒のメモは今ある分では以下のように。
A-3
T.OFOFNTSFTFENSNTTTE… |
A-5
大きい やっぱり 固い
絵師が挿絵に
出来なかったもの |
「さっぱりわからん」
見た瞬間に頭痛を起こしたあたしは考える事を放棄して元の位置に戻る。知恵熱出る。
「早くない?」
「考える気すらないアル」
「一々なぞなぞにすんなよなー。誰か知らんけども」
あっちゃんと劉ちゃんに突っ込まれつつメモの内容がこうなってしまうと見る気すら失せる。見たがってたの誰だって?あたしだね。
「あ?こんなもん全部簡単だろうが」
「はーい嫌味頂きましたー!頭いいのか知らないけどね、みんながみんな何でも出来ると思うなよ麻呂眉マコマコ」
「ああ!?」
「ブフォ!!!」
遂にあたしが花宮少年をいじり出すと遠くで高尾少年が盛大に吹き出していた。絶対あれ草生えてるよね。マコマコお気に召された?あたしもいいあだ名だと思ったから使おう。
「変なあだ名付けてんじゃねえ」
「何や花宮珍しい。初対面で猫被らんなんて」
「チッ」
「投げキッス〜?やだあ照れる」
「うぜえ!!」
「山口さんのキャラが…ブッフゥ!!」
確かに漫画では猫被りキャラだったのに、全然そんな事ない。寧ろ暴言吐かれてるんですけど。舌打ちまでされましたけど。
高尾少年あそこで呼吸可笑しくなってるけど大丈夫?
「疲れてる?少し休んだ方がいいんじゃないかな」
「通常運転だよ」
なぞなぞ見てやる気なくしたからスイッチオフになったのねきっと。あと少しだけ普通に会話出来るようになったのもあるのかも。
たっちゃんにそう答えると、意外そうに少し目を丸くさせてから綺麗に微笑んだ。トキメキ過ぎて心臓痛い。
「…この白のメモに書かれているA-1などは黒のメモの答えが関係あると考えられます」
収拾つかなくなる前にと赤司少年が話を戻す。トントンと白のメモを指しながら、黒のメモはあと二枚あると考えていいとの事。白のメモにA-6まで書いてあるもんね。それはわかった。
「今現在ある黒い紙の答えは全部出た」
「答え知りたい!」
マコマコが黒い紙全部持つと葉山少年が挙手をして答えを仰ぐ。あたしも知りたい。
「…まずA-1の答えはV。AとNから始まるアルファベット順に、それぞれ対局するアルファベットが交互に並んでいる」
赤司少年が一枚マコマコの手から抜き取ると、それをみんなに見えるように掲示しながら解説するが火神少年と青峰少年と黄瀬少年が首を傾げている。あたしはこの説明でわかったよ。
「つまりAの対局がNから始まるならDの対局はQ、Gの対局はTって順番に並んでるから、Iの対局はVって事じゃん」
「「「あー…成る程」」」
あたしの補足でやっとわかったと頷いた三人だが声の感じからして根本の法則はわかってないな。でも可愛い。愛される馬鹿だな。
「三人ともわからなくてもいいので黙っててくれませんか。進みません」
「大ちゃん達に説明している時間が勿体ないよ」
「てめえら…」
黒子少年とさっちゃんの辛辣な言葉に青峰少年が青筋を立てている。仲良しね。
「ん?」
「どした?」
「何か変わってる?」
ふと赤司少年の持つA-1の紙が変化している事に気付いたあたしが指差すと、春日少年始めみんな覗き込む。
問題が書かれていた部分が綺麗さっぱりなくなり、代わりに浮き出た文字がある。
「ゴール?」
「これが答え?」
「“此処を出るにはゴールが必要”って…そりゃ出るにはゴールするしかねえだろ」
白い紙5-1のA-1部分に答えを当てはめてみるが、全くしっくりこない。青峰少年頭を掻きながら呟いた。
「ゴールっつったら…あれか?」
火神少年が指差す所はバスケットゴール。近くにあったゴールにみんなが視線を向けた瞬間。
「!?何か見えた!」
「案内人…?」
バスケットゴールのバックボードに浮き出た赤い文字は“案内人”と表している。
暫くして文字は溶けるように消えた。
「“此処を出るには案内人が必要”、“案内人を失う事なかれ”…か」
「案内人って誰かしら」
「…全部解いてから考えよう」
実渕少年(?)が顎に指を当てて視線を宙に向けながら呟く。確かに、この中にいるのだろうか。はたまた校内にいてそれを探さないといけないとか?
赤司少年はやや思案したように一点を見つめていたが取りあえず解読してからと言う。花宮少年も同じ思案顔をしているが、心当たりがあるのかな。何考えてんだろ。
まあ、やっと一枚解けた。流れさえわかれば後の数枚も解読出来る。
解答と、恐らく解説も答えて黒い紙に浮き出た文字の指し示す所を見るって流れかな。
「ほな次いこや」
「はい。A-2の答えは兆」
今吉少年に促され赤司少年が答えを言うが、やはり答えのみでは変わらず。
「目は視覚、鼻は嗅覚、口は味覚。し、きゅう、みを漢数字で表している」
「つまり耳は聴覚、よって兆」
花宮少年と赤司少年が淡々と解説すると問題が消えて文字が浮き出る。
「案内人の目?」
隣の岡村少年がそう言った途端に体に異変を感じた。
「あっつう!!!」
目が焼けるように熱い。咄嗟に両目を両手で覆うが熱さに耐えられず後ろに倒れ悶える。
いやオーバーリアクションではなくてね、本気熱い。痛くはないけど熱い。
「!?ちょ、そらちん!?」
「おいどうした!?」
「大丈夫か!!」
当然後ろにいたあっちゃんにもたれ掛かる事になるわけだが、流石あっちゃん、しっかり支えてくれる。目を押さえたままのあたしに福井少年と岡村少年が顔を覗き込んでくる。
「目があ!!目がァァァ!!!」
「ブッフォ!!ムスカ…!!」
「笑ってる場合ではないのだよ!!」
「てめえ空気読め!!轢くぞ!!」
遠くで吹き出した高尾少年と怒る緑間宮地少年二人の声が聞こえる。
あたしも言いながらちょっとジブリっぽいって思ったけど、冗談じゃなくて本気で熱いのよ。ってかジブリ異世界共通なの?
「そらさん!」
心配そうなさっちゃんの声が聞こえる。泣きそうに聞こえるのは気の所為かな。やっと熱さが落ち着き始めたのでそっと目を覆う手を離せば物凄い近くに岡村少年がいた。
「うわ!?」
「退けモミアゴリラ」
「痛い!!」
思わず驚いて声を上げると劉ちゃんが押し退けていた。ちょっと可哀想、でもごめん。
「見せてみろ」
「こっちを見て」
いつの間にかアレクさんが近くにいて、両手首をやんわり握られながら顔を覗き込まれる。だけではなく、たっちゃんまでも覗き込んでくるので、美形に至近距離で囲まれたあたしが赤面するのも仕方ないと思う。
「…目の中に道って見えるぞ」
「痛いかい?」
「いや、熱かっただけで痛くはない…今はもう大丈夫だけど」
「あ、消えた」
ならもう離れてくれますか。近いです。
とは言えず俯くとアレクさんにぎゅうううっと抱き締められた。
「You're too cute!!」
「アレックス!!」
スリスリと頬擦りされていると火神少年によって引き剥がされた。
「何回も悪ィ…です」
「あはは…」
興奮したアレクさんを抑えて代わりに謝罪する様子は、まるで火神少年が保護者かのように見える。思わず乾いた笑みが出るが迷惑ではないので大丈夫と伝えると少しホッとしていた。
一度目も二度目も単純にアレクさんの魔の手に掛かったのを助けてくれたようだ。あたしを疑ってるから、とか寧ろあたしが疑ってごめんね。
「大丈夫ですか?」
「あ、ごめん。もう大丈夫」
「ふはっ!何にしても決定だな」
赤司少年もこちらに近寄ってきて身を案じてくれる。花宮少年は鼻で笑うとこちらを見て言い切った。
「山口そら。あんたが案内人だ」
やっぱりそうなります?
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