SPIRIT WORLD証明
「あんただけ化け物が違うように見えたのは案内人だったからって事だ」
「白い紙の文面からも案内人には何かがわかると示唆されていた。今までの話からみんなには見えないものが山口さんには見えた事が引っ掛かっていましたが、決定ですね」
「あたしが案内人…何で?」
謎過ぎる。あたしは本当に至って普通の人間なはずなのに…ハッ!?もしかしてトリップ特典!?
こんな特典いらんわ!!
「何で山口さんが案内人なんかは知らんけど、まあこれで山口さんが脱出に必要な事はようわかった」
確かに。あたしがいないと脱出出来ないから、取りあえず仲間外れにされる事はないと考えていいな。そしてみんなから信用を得るチャンス!でもこれがいいの悪いのか…。微妙…。
「そらさんが…案内人…」
リコぴんが床を見つめてショックを受けたように呟いている。羨ましいはずはないし…どうした。
「策を練るのは後にしようぜ。残りのA-3とA-5を解くのが先だ」
「もうあたしの目に映るとかないよね」
「大丈夫でしょー多分」
「適当か」
笠松少年が先へと促した事に対し先程の事もあって心配で呟いたが、あっちゃんのマイペースな言葉に他人事かと呆れてしまう。いや、所詮は他人事か。へっ。
赤司少年はA-3の黒い紙を見ながら答える。
「はい。A-3は円周率。該当する数字が英語の頭文字を取って表現されている」
そこまで言うと例の如く問題が消え解答のある場所を指し示す。赤司少年の手元を覗き込んでいた黛少年以外の洛山が読み上げる。
「中心?」
「何のかしら?」
「あいつの中心か?」
根武谷少年含め一部の人があたしを見る。
「あたしの中心って何」
「此処?」
「おぅふっ…あっちゃんセクハラだよ。てか案内人って書いてないんでしょ?」
あっちゃんにプスッとお腹を指で刺されて変な声が出た。あたしなら大人の心でまだ百歩譲って許すけど他の女の子にしちゃ嫌われるぞ。
「…あ!あれ!」
不意に降旗少年が声を上げコートの中心を指し示す。そこは体育館のど真ん中で円を作っているあたしらの中心なわけで、赤文字で文字が浮かび上がっていた。
「怪異の正体…?」
「怪異って怪物って事か?」
各々が読み上げる首を捻る。怪物や怪奇現象含めての怪異だとすれば、もしかすると体験した無限ループの脱出の仕方とかもわかるかも…。
“此処を出るには案内人が必要”
“案内人は道や怪異の正体がわかる”
“案内人を失う事なかれ”
以上が白い紙5-1から5-3までの解読。これだけ見るにしても、案内人は重要な役が担われる事は明白だ。
「…A-5もさっさと解いとこうぜ」
みんなが考え込んでいると日向少年が口を開いた。そういや主将組で唯一口を開いてなかったな。
「A-5の答えはやっぱり。絵師はイラストレーターと考え、“い”がラストにこないのはやっぱりだけだよん」
花宮少年の後ろにいた原少年が答えた。トントンとは進んでなかったから多少痺れを切らしていたのかも。短気は損気よ。
そして黒い紙に指示が浮き出る。
「校章?」
「…あそこか?」
校章。今のところ体育館内で全部解決してるから体育館内だと思うが、体育館内に唯一ある校章と言えばステージ上。一文字幕の所だ。
ボロボロで校章って言えるか微妙じゃね?と思っていたが浮き上がる赤文字。
「…番人」
赤司少年が小さく紡いだ。
番人って…かっけえ!でも厳ついイメージ。
「これで今ある問題全部解いたな。5-4の指し示す場所や番人に何を差し出すのかは、まあ黒い紙集めてからでええとして。問題は山口さんやな」
ですね。あたしどうしましょう。
わかりきっている事ですがね!現実逃避したくなりますもの!
「案内人って事は、これからも探索に出なくちゃいけない…のよね」
「…まあ、そうなるな」
「そんな…」
リコぴんが確認するように言った言葉は今吉少年によって拾われ、肯定される。リコぴんもさっちゃんも顔を青ざめさせた。
そうか。さっきリコぴんが呟いた意味はあたしを心配してか。成る程…。
「ほんっっっとに!!いい子!!!」
「急に何アルか」
「ご乱心か?」
劉ちゃんと岩村少年含め一同吃驚するぐらいに声量やばかったみたい。ごめん急に。でも言いたくなった。
「リコぴんもさっちゃんも、みんな心配してくれることが嬉しくて…ぐすん」
「嘘泣きっぽいよ」
「な、泣いてはないけど泣く程に嬉しいのは確か!知り合ったばっかで怪しいあたしをこんなに心配して顔色まで変えてくれるなんて…親御さんの顔が見たい」
あっちゃんに指摘を受けたが本当に感動してるんだよ。親身になってくれるこの子ら、どんだけ寛大な心を持ってるんだろう。
「ありがとう本当に。でも大丈夫だよ。あたしがいなきゃ脱出出来ないんならあたしは何でもやるよ!大船に乗ったつもりでみんなカモン!!」
「急に元気になったな」
「嬉しいんじゃろ」
福井少年と岡村少年がのほほんとあたしを見ていたのは気付かなかった。
「泥舟の間違いだろ」
「泥水に沈めてやろうか?」
先生。青峰少年が生意気です。
「…何の因果で山口さんが案内人に選ばれたかは知りませんが、その理由含めてオレ達が此処にいる理由を解決し脱出しましょう。その為には自覚されている通り、山口さんの協力が必要になります」
赤司少年はその場から立ち上がるとやや離れていたあたしの前まで歩いて来て目の前に腰を下ろした。あたしは自然に正座して背筋ピーン状態です。
「山口さんは最初に協力して欲しいと言っていましたが、今度はオレからお願いします。今までの疑うような言動、お詫びします」
今までの流れでもまだあたしを疑う余地はある。あたしが案内人に選ばれたのも自作自演と言われてしまえば、疑いを晴らす事は難しい。
それでもあたしを信じると言っている目の前の赤司少年目は、綺麗な赤色で澄んでいる。
あたしにはとても信じた風を装っているようには見えなかった。
やっと本当に肩の力が抜けたような気がして、ちょっぴり泣きそうにもなった。でも泣かない。あたしはみんなより人生の先輩で、案内人として引っ張って行かなければならないから。
視線で他のみんなを見渡してみたけど、赤司少年がそう言うなら言う事はないって顔をしている。
赤司信者ですか。嘘、ふざけてごめん。
「ううん、気にしてないよ。大丈夫。信じてくれてありがとう」
此処に来て、あたしは本当に心から笑えた気がした。
「此処から全員で出ようね」
赤司少年はしっかり頷いた。
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