SPIRIT WORLD発見
ゆらゆら揺すられる感覚に気付き、沈んでいた意識が浮上する。
「んー…?」
「そら、起きろ。出発だ」
「んー…うん…」
薄っすら目を開けるとアレクさんとさっちゃんの顔が見えた。優しく起こされ微睡む中何とか返事をし、ゆっくりと体を起こす。
それを支えてくれるさっちゃんは本当出来た子だよ。
「さっちゃんありがとね。足痺れたでしょ」
「大丈夫です!少しでも疲れ取れましたか?」
「疲れ吹っ飛んだよ。心地いい眠りの提供ありがとうございました」
「いえいえ、どういたしまして」
さっちゃんと向かい合って正座しながらお互い頭を下げる様子を見て、アレクさんは礼儀正しいと笑っていた。
「山口さん。お疲れのところすみませんが、お願いします」
「んーん、大丈夫」
赤君に声を掛けられ目を擦りながら立ち上がる。休ませてもらったお礼を言うと、いえ、と微笑み返された。
「では今から出発してもらいますが、今回は桐皇と行ってもらいます」
「ワシらんとこや」
「宜しゅう〜」
「ははっ宜しゅうな〜」
今吉少年があたしに近付き隣に立った。やっぱりみんな背高いなあ。
「行き先は山口さんが言っていた通り、二階の第二資料室から先へお願いします。武器は先程高尾が持って来たバットを青峰に持たせます」
「目的はわかってんだろうな?二枚の黒い紙の捜索、3年生教室への道調べ。後者はあんたしかわからねえかもしれねえんだ。しっかりやれよ」
「あいよー」
青峰少年がバットを肩に担ぐ様子が様になっている。マコマコがポケットに手を突っ込みながら歩いて来たかと思えば薄ら笑いで声を掛けてくる。
「にしても上から目線とか…マコマコ心配してくれないの?」
「あ?…チッ。してるに決まってんだろうが」
「えっ」
「なんて言うわけねえだろ、バァカ」
生バァカ頂きましたあああ!!今すっごく声を上げて笑いたい!!草生えそう!!高尾二号になりそう!!はあああああ!!
俯いてぷるぷる肩を震わせて笑いを堪えているのを見た周りが「あーあ、泣かせたー」と泣いているのを前提にマコマコを責めている。それに対しマコマコが苦虫を噛み潰したように盛大に舌打ちした。
「おい、嘘泣きすんなよ」
「嘘泣きじゃなかったらどうすんの」
「女性を泣かせるなんて…男の風上に置けないな」
あっちゃんとたっちゃんも責め立てているが、もう我慢ならん。
「ぶっは!!あひゃひゃ!!マコマコ可愛過ぎィィィ!!!」
「「…は?」」
遂に吹き出したあたしにみんなの動きが止まる。赤君や隣にいた今吉少年は泣いていないとわかっていたようで、特に反応は変わらないが。
「ふっくく…マコマコ素直じゃないね。ツンデレならぬデレツン可愛いわ!」
「はあ!?てめっふざけんなキモい!!」
「マコマコデレツン〜!」
「ふ・ざ・け・ん・な!!」
「いひゃひゃ!」
マコマコをからかって遊んでいると目の前まで来た彼に鬼の形相で両頬を抓られる。それでも笑いは絶えずずっと笑っているとあからさまにマコマコが不機嫌になっていく。
「花宮デレツンだったんだー」
「確かにいつものアレ表現するならデレツンだな」
「案外合ってるんじゃないか」
「デレツン花宮」
「テメェらぶっ殺すぞ!!」
原山崎古橋瀬戸少年ら霧崎にヒソヒソ話されマコマコが激おこ。そっち怒るなら手離して、結構痛いてか大分痛い。
「花宮さん、その辺で」
「…チッ」
「花宮いじるなんて中々やるなあ、山口さん」
「いてて…せやろ〜」
赤君に止めてもらって漸く解放された。両頬を摩っていると今吉少年に褒められたので嬉しくなった。
「何か問題があれば直ぐに戻って来て下さい。決して無理はしないように。怪物にも充分気を付けて下さい」
「ん。了解」
「桐皇の皆さんは、山口さんを守って下さい」
「任せろ」
若松少年男前だ。さっちゃん以外の桐皇スタメンメンバーで出入り口まで歩いて行く。途中話した事のある正邦と陽泉、あたしのエンジェルちゃん達(女性陣)に声を掛けられ出発する。
他の人からも心配した視線をいくつか感じた。それは多分あたしよりも桐皇の人達に向けてだと思うけど。まだ会話してない人とお話ししたいなと思いながら校舎へと向かう。
先頭に今吉若松少年、次にあたしと桜井少年、後ろに青峰諏佐少年。やはりこういう所で囲まれると安心しますね。
「こっからやな」
何事もなく第二資料室前へ到着する。周りをキョロキョロ見渡し警戒するあたしに、その度に何かあったのかとビビっている桜井少年には申し訳ない気持ちになった。
「開けるで」
今吉少年が小声でそう言い、戸に手を掛ける。海常が来た時は怪物がいたという中から物音は聞こえず、ゆっくりと開けられたそこはやはり薄暗い。確認するが怪物の影は見えず、隠れているかとも思ったが姿はない。
みんなが安堵の息を吐き出し中へと入る。後ろにいた青峰少年が一番溜め息大きかったから、一番怖がってたのかもしれない。原作でも怖がりさんだったし。可愛い奴め。
そして探索開始。
「…お、懐中電灯みっけ」
「おお、よくやった。貸せ」
「(凄い偉そうだ…)」
山積みにされている資料を退けるとその影から懐中電灯を発見。近くにいた青峰少年に渡すとちゃんと点いたようで喜んでいる。今吉少年に渡しに行く様子を一瞥し、再度探し始めるとあるリングファイルが目に止まる。
真っ黒なファイルだが周りにある汚れた資料や本とは違い新品に見え、この古びた部屋で異色を放っている。それを開くと、そこにはキセキの世代のプロフィールが一人一枚綴じられていた。赤君達五人だけではなく黒子少年、さっちゃん、この世界にはいない灰崎少年と虹村少年も載っている。キセキの世代というより帝光のメンバーか。
「これって…」
何かの手掛かりになるかと思いみんなを呼んで見せる。見た途端青峰少年は怪訝に顔を顰めた。
「何だよこれ」
「何で青峰らだけなんやろ?この最後の人誰や」
「俺らの先輩」
それを眺めながら各々が疑問を口に出す。その様子を見ながらあたしは口元に指を添えて考える。
ファイルがある意味が何かあるはず。よくある流れなら、才能溢れるキセキの世代に恨みや妬みを持った人物が彼ら調査して招集、ファイルはその時作った物で他の人は巻き込まれ復讐する為に連れて来られるという流れ。あとは此処は人々の怨念が作り上げた世界で、恨まれ易い彼らが引き寄せられて集められた流れ。でも後者だとプロフィールがある意味がないな。
うーんと唸っていると不意に悪寒がしてみんなの方へ顔を向ける。そこには蜘蛛の如く天井に張り付く怪物。体がヤモリのようで頭は人間。長い髪が垂れ下がっており実態が視えているなら彼らの視界に入り気付くはずだが、実態が視えていなければ気付かない。
全く気付かない彼らに焦り声を上げようとしたが、彼らの手元のファイルを見ていた顔がぐるんっと360度以上回転しあたしの方を向く。焦点の合っていなかった血走った目がぎょろりとかち合うとニタリと笑った。
見付カッチャッタァ
それは怪物かファイルかどっちの事だ。疑問が過ぎりつつぞぞっと鳥肌が立ったと同時、震える声を抑えて叫んだ。
「上!!」
「「!?」」
「ひいっ!?」
「でけえヤモリ!?」
「っ、らあ!!」
一瞬視線をあたしに向けたがみんなが天井を見上げると怪物がいて、みんなには普通のヤモリに見えている様子。青峰少年が咄嗟にバットを振り回すと周りにいた桐皇メンバーは即座にしゃがみ込んだ。すげえ反射神経。
避けた怪物はべちゃっと音を立てて床に落ち、そのままあたしの方へ向かって来た。頭はぐるぐる回っており、耳を劈くような笑い声を上げている。
ソノ体交換シテェェェ!!
異様に長い舌が伸びあたしの足を捉えようとしたが、避ける前に体が宙に浮く。
「!?」
「あっぶね…っ!」
「諏佐ナイスや!」
「し、舌が伸びた!?」
諏佐少年があたしを(何とお姫様抱っこで)抱き上げており、舌から逃れると素早い身のこなしで怪物から遠ざかる。桜井少年の言葉を聞いて、舌が伸びたのは見えたのかと理解した。
ヤモリ女は壁にぶつかるかと思いきや体はヤモリの為壁に沿って這い上がり、天井を伝ってこちらに来ようとするのを見てあたしは怪物に狙われているのか、偶然かという疑問を抱いた。
「若松!桜井!」
「「はい!」」
二人が返事するとその辺にあった椅子と分厚い本を思い切り投げ、衝撃を受けて落ちたヤモリ女を青峰少年が踏み付ける。
「山口さん弱点は!?」
「え!?っと、あ、頭!!」
今吉少年に促されヤモリ女を見ると頭部に黒い靄が掛かっており、答えた直後青峰少年がバットで突き刺す要領で頭を突いた。グシャッと頭が潰れたと同時に断末魔が響き、金の粒子を飛ばして消えていった。頭グロかった…まともに見てしまった…やらかした。
「大丈夫ですか?」
「う、うん、ありがとう。助かった」
いつの間にか諏佐少年にしがみ付いていた為、慌てて手を離して下ろしてもらう。案外近くてドキッとしたのは秘密だ。
「吃驚したなぁ。みんな怪我ないか?」
今吉少年にみんな頷き返し、彼はずっと持っていたファイルを掲げた。
「取りあえずこれは保留や、持って帰って考えよ。続きパパッと探して移動しよや。また此処に怪物寄って来られたらたまらんでな」
その言葉で早速行動する。だがファイルと懐中電灯以外は特になく、その場を後にして移動する事になった。
「まだ一つしか回ってねえのに疲れたぜ…」
「同感…」
青峰少年とあたしはドッと疲れたような顔をして、二人で支え合いながら教室を出た。友よ、頑張ろうぞ。
14/45
←|→
BACK/
TOP
ALICE+