SPIRIT WORLD
当事

 体育館へ入ると峰さんに担がれているあたしを見て一同驚く。さっちゃんは飛び付く勢いで駆け寄ってきた。

「そらさん!?だ、大ちゃん何かあったの!?」

「あ?何にもねえよ。階段から仮面被って斧持った奴に追い掛けられて逃げてきただけだ」

 慌てるさっちゃんに簡単な説明をしていると赤君が近寄ってくる。

「お疲れ様でした。青峰もご苦労だったね」

「おー」

「早速話を聞かせてもらってもいいですか?」

「ああ」

 峰さんに降ろしてもらい体育館の中心に向かう。何人かに労いの言葉を掛けてもらいながら、今度はみんな円形でなく駄弁る感じに座っているがあたしは桐皇の近くへと座った。隣にはさっちゃんがいる。心配して怪我はないかなど聞かれるので、返事しつつ頭を撫でて落ち着かせた。

「結果報告からするで。黒い紙二枚と果物ナイフ五本、布切り鋏三丁、懐中電灯と重要なファイルを見付けた」

「あとフライパン」

「ああ…フライパンもや」

 各々持っていた物を出し合い真ん中へと置く。ちゃんと持っていたフライパンそこに添えると数人は何でフライパン?と首を傾げていた。コレすげえ殺傷能力なんだかんな。
 翔ちゃんから探索の流れを説明してもらい、ひと段落つくと赤君があたしに視線を向けた。

「途中で会ったという大型ヤモリと老婆、斧を持った男は山口さんにはどう視えていましたか?」

「おい、それ聞く意味あんのかよ」

「脱出のヒントが隠されていないか一応確認する為です」

 若ちゃんが止めるように話に割入るが理由を言われぐっと言葉を飲み込む。多分なるべく思い出させない為にとあたしに配慮しての言葉だと思う。イケメンだ。

「若ちゃん大丈夫だよ」

「「若ちゃん…?」」

「っ、ほっとけ!!」

 随分可愛らしいあだ名で呼ばれているなと言いたげな周りからのツッコミに若ちゃんが赤面する。高尾少年が向こうで吹いて宮地少年に拳骨を喰らっていた。

「ヤモリは女の頭してたよ。老婆は全身痩せ細ってて内臓色々出てた。あと歯が鋭利だったかな。最後のは斧を持った超怖い鬼だったよ」

 うえ…と顔を顰める面々。想像しただけでも気持ち悪いよね。

「ありがとうございます。今の所山口さんが三回鉢合わせている怪物に狙われているのですが、今回も何か言っていましたか?」

「…大体が体交換してとか寄越せとか」

「案内人の体を狙っている…?」

「でも桜井も噛まれそうになっとったで」

 赤君の質問に答えると彼の後ろの実渕少年が推測するように呟くが、翔ちゃんの言う通り近くにいたとは言え良君も被害に遭っており確証が得られていない。

「探索繰り返していけば確定するとは思うけど」

「でもそれじゃそらさんが危険よ」

 リコぴんが眉間に皺を寄せてこちらを見つめる。心配掛けてばかりで申し訳ないな。

「んん…でも多分一番危険なのはあたしじゃない気がする」

「どういう意味ですか?」

「翔ちゃん、ファイルなんだけど」

「せやな。赤司、見てみぃ」

 促された赤君が黒いファイルを手に取り開くと中を見た途端目を見張る。

「キセキの世代五人と黒子、桃井、あと灰崎と虹村っちゅう奴のプロフィールが載っとる」

「え…!?」

「ファイルの意図はわからんけど、此処にワシらがおる理由のヒントとかにになると思って持ってきた」

 既に見た峰さん以外のキセキの世代みんなが赤君の所へ移動する。後ろや横から覗き込む様子を見て仲良しかと心中悶えて死にそうなのはあたしです。

「うわっ、マジでおれらっスよ!」

「これ細か過ぎでしょー」

 黄瀬少年まともに喋ったのが今って。あっちゃんが嫌そうな声色で文句を言う。確かに事細かに書いてあったから気持ち悪いだろうね。さっちゃんも眉を寄せている。

「じゃあ赤司らに関係ある奴が此処に連れて来たって事?」

「…帝光時代のオレ達に関係する第三者がいるのは間違いないようだね。バスケでオレ達は恨まれても仕方ない行いをしていたから恨みによって連れてこられたとも考えたが、そこに灰崎は別だが黒子と桃井、虹村さんは関係ないから言い切れない」

「才能に憧れてとかか?」

「その線なら黒子達にも関係はあるだろうが、この異様な世界に呼ばれた理由に直結させるには些か理由が不充分であやふやだ。それに第三者が才能で考えているなら無冠の五将であるお前達も他の有能な選手もリストに入っていて可笑しくはない」

 葉山少年と根武谷少年が考えを言うが、はっきりと答えは出ず。

 まあ、やっぱり路線として強いのはファイルを見付けた時に考えた、才能溢れる元帝光の彼らに羨望や妬み等の念を抱き復讐や能力を強奪する為に此処に連れてきて、以外の人はキセキと仲がいいから巻き込まれたっていうやつかな。
 巻き込まれたって何度も言うけど、それ程この子らには才能があってその分目立っちゃうから、目を付けられて周りが巻き込まれるっていうのは仕方ない事なのではないかとあたしは思う。気にするかしないかは捉え方や考え方の問題ではないだろうかと思います。はい作文です。

 てかあたしは何で此処にいるのって話だよ。この子らがどんな理由で呼ばれたとしても、世界が違うあたしには関係ないはずだ。もしかして、あたしがこの子らを巻き込んだとか…?いやいやあたし人に恨まれるような事してないしナイナイ!普通のピーポーだよ!…ないよね?えっ、ないよね?

「私達の所為でみんな巻き込まれたのかな…」

 心中でふざけているとさっちゃんが俯き悲しそうな声色でポツリと呟く。それにキセキの世代みんなバツの悪そうに顔を歪めた。やっぱりそう思っちゃうか。

「いやいや、君らは何も悪くないでしょ」

 あたしは悲しい顔をするみんなを見て耐え切れず、口が勝手に動いた。弾かれたようにあたしを見つめるカラフルな彼らを見つめ返す。

「現に君らしか載ってないファイルがあるから巻き込んだかもって思うだろうけど、どんな理由があってもこんな危ない世界に連れてきた奴が悪いよ!怪物はうちらを殺しにきてるんだよ?」

「でも…」

「恨みとか妬みとか、どんな些細な理由でも危険な目に遭わせるって選択した奴の負けだよ。その第三者とやらはそんな方法に頼るしか出来ない弱い奴だ。君らが自分を責めて責任負ってやる必要なんかない。てか負うな」

「負うなって…」

 この世界に連れてきた第三者がいるのは確定した。ソイツがもしこの話を聞いていたら怒るだろうなと思いつつ、喧嘩売るように言葉を並べるあたしはやっぱり性格捻くれてるな。
 我を通すかのような物言いに黄瀬少年は口元を引き攣らせたが、その後は少しだけ安堵したように笑った。シャララ。

「もしかして巻き込みやがって畜生とか言う人いる?」

 辺りを見渡してみるが特にそんな顔した人はいない。よし、いい子達だ。

「ってゆーかオレらは別に君らと仲間でもなければ直接関係ないし」

「そんなくだらねえ事悩んでる暇あったらさっさと黒い紙の問題解けよ」

 原少年とマコマコが鼻で笑って言う。その態度に数名カチンときているけど、気にするなって聞こえるからそれなりのフォローしたんだろうと予測。ナイス霧崎。

「それよりさっきも言ったけど君らの身が危険な気がするんだよ。調べられてるって事は目を付けられてるってことで、狙われてるのかもよ?」

「確かにそうじゃな。今は狙った様子がなくても後で、とも考えられるしのう」

 自慢の顎を摩りながら岡村少年が同意してくれた。流石アゴリラ。

「そらの言う通り此処に来た理由は兎も角、そのファイルが意味するのは何かっていう事だな。狙っているのがそらではなくお前達の可能性も出てきたわけだ。対策を練らないとな」

 アレクさんが赤君達を見据えながらまとめた。赤君はしっかりと頷き、気持ちを切り換えた様子で話す。

「ありがとうございます。第三者がいるとわかれば、その人物が誰か調べ何かしらアプローチ出来るように探索の主旨に加えます」

「じゃあ探索目的は3年教室の手掛かりと第三者の調査って事っスね!」

「偉そうにまとめてんじゃねえよ!」

「痛いっ!!」

 元気になっている黄瀬少年が海常の所に戻り張り切ってまとめると、笠松少年が蹴りを喰らわせていた。うむ、中々の理不尽で扱いが雑だ。可哀想だけど面白い。

「ふはっ馬鹿か、忘れんじゃねえよ。黒い紙が示した事も実行する必要があるんだぞ」

 マコマコがそう言うと床に置いてあった黒い紙二枚を取り上げ、赤君から全ての白黒の紙をもらうと自分の前に置く。

「さっさと解読して先に進む。いい加減飽きてきた」

 ずっと動かなけりゃそりゃ暇だろうねこんな所。マコマコが解読を開始する。

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