SPIRIT WORLD察知
ニーハオ!みんなのアイドルそらだよ!現在あたしは霧崎の子達と探索してるよ!行き先は三階の別館だよ!
調子に乗りましたすみません。
あれから少し休ませてもらって、霧崎一行と出発する。装備は原少年がバット、その他がナイフ、あたしがフライパンである。懐中電灯はマコマコが所持。
「フライパン持ってくるとか…」
隣の山崎少年が呆れたように言う。わかってないわ。この殺傷力わかってないわ。
前にいるマコマコと原少年も鼻で笑ってくる。見てろよ!
「三階って怪物が多いって話じゃなかったか?」
「だが山口さんが三階に来た時は一体だけだっただろ」
「うん。でも斧持った鬼は三階から来たから油断出来ないよ。その鬼も今は何処にいるか知らないし…」
後ろの瀬戸少年と古橋少年の会話に混ざる。此処に来て大分みんなと関わるのに慣れたなと何となく思った。
てか話変わるけど、あたしこのメンバーで守ってもらえるのかな?他のみんなは守ってくれたけど、大丈夫かな?
前の二人とか襲われてもゲラゲラ笑ってそうなんだけど。
「あ゛?」
「えっマコマコ何?」
嘘、エスパー!?と凄みながら振り返ったマコマコにビビる。
「見てんじゃねえよ」
視線に気付いただけのようです。ビビった…。バレてないならいいや。
「ハイ自意識過剰〜」
「あ゛あ!?」
ツンツンと背中を突いてからかうと怒られた。もう!可愛いんだから。
「マコマコ怒るなって」
「マコマコ言うな!!」
原少年にもからかわれてマコマコおこ。
「そういや桐皇の奴らにもあだ名付けてたな」
「何?付けて欲しいの?」
「いや違くて」
「欲しがるね〜」
「聞けよ!!」
山崎少年が思い出したように言うがフリにしか聞こえない。
「やっぱ山崎君はザキっしょ」
「ザキはオレらでも呼んでるー」
「原君はかずやん」
「え…」
何だよその反応。いいじゃん。
「瀬戸君はせんとく「駄目」
「じゃあ太郎ちゃ「普通」
「健ちゃ「いいよ」
うわあああん!!めっちゃ被せてくる嫌だコイツ!!最後まで言わせてよォォォ!!
「古橋君は康ちゃんね」
「どうも」
「つかずっと思ってたんだけどよ」
みんなのあだ名を決め終えるとマコマコが前を向いたまま淡々とした口調で言った言葉にあたしは目を見張った。
「アンタ、頭悪ィのに名前間違えねえよな」
ドキッてかギクッとした。あたしは漫画通してみんなの名前を全員覚えてるから違和感なくあだ名付けまくってたけど、彼らからしてみれば最初に一回自己紹介しただけで大人数の顔と名前を一致して覚えているって見られるわけで。
赤君やマコマコ達のように頭のいい人ならまだしも、白黒の紙もまともに解けないお馬鹿なあたしが記憶力いいなんて思われないわけで。なのにスラスラあだ名付けて言うもんだから周りからすれば違和感だらけなのは納得。
やっちまった。
「人の名前覚えるの得意だから?」
何でもないような顔をして言うと、チラリと振り返ってふーん、と前を向く。誤魔化せたって思えないのは何故だろう。相手がマコマコだからですね!
「っていうか頭悪いとか失礼過ぎる」
「事実だろ」
普通に接してくれるがマコマコが何を考えているかわからなくて恐怖なんだけど。今の会話で多少気に留めても可笑しくないのにみんな態度が変わらないから余計に強い。助けて。
いつの間にかL字の突き当たりに着いていた。マコマコが照らすと第三資料室と書かれている。赤君の言う通りだ。
「此処からだな。油断すんじゃねえぞ」
マコマコがそう言うとガラッとドアを開ける。中は第二資料室同様、資料が山積みになっている。
「…番人と怪物はいなさそうだね」
「ああ。白玉探すぞ」
白玉って聞くとどうしても餡蜜に入ってる白玉が浮かんでくる。お腹空いたな。
そう思いながら康ちゃんの近くで資料を退けながら探す。暫く続けて全体的に探し終えたが見付からないなと思っていると、遠くで何かが聞こえた。ピタッと動きを止めたあたしに気付いた隣の彼が声を掛ける。
「どうした」
「何か聞こえる……歌?」
耳を澄ませれば廊下の遠い方から子どもの歌う声が聞こえる。みんなが状況を理解して探す手を止めた。
フライパンを持つ力を込めながらドアの方を見るとちゃんとドアは閉まっていて、廊下は見えないが段々近付いてくる。
「…かごめかごめの歌だ」
寒気がした。いい意味ではない話も聞いたことあるし、怪物の出るこの世界で聞けば嫌でも怖い方に考えてしまう。
一同ドアの方を向いて警戒する。さり気なく前に立ってくれた康ちゃん男前だ。
「今どの辺?」
「もう直ぐ近くに来てると思う…」
怖いけどあたししか聞こえないので耳を塞ぐ事も出来ない。かずやんの問いに答えじっと息を潜めていると、教室の近くでピタリと止んだ。あ、フラグ綺麗に立った。
後ロノ正面ダァレ?
やっぱり後ろにいたよねぇぇぇ!!バッと振り向くと包丁を持った子どもが満面の笑みで立っていた。しかし背丈は子どもでもよく視ると子どもと言えないくらいに老け顔でオジサンみたいな…ちっちゃいオッサンみたいな!!抜け落ちた歯の隙間から腐臭が漂った。
あたしの様子に気付いた面々が振り向きオジガキ(オジサンと子どもを掛けた)怪物の存在を確認すると瞠目した。
「ガキ!?」
「ガキじゃないいいいい!!」
ザキが吃驚しながらも顔を歪めていた。みんなには子どもに見えるのね。咄嗟にあたしが泣き叫ぶ勢いで真実を言うと包丁を突き出すオジガキ。
ガキデイインダヨ!!
怒られた!!でも声オジサンになってるよ!?そんな事を思っているとあたしの心臓に迫る包丁を避け切れなくなってしまった。やばい…!
「何、っやってんだてテメェは!!」
勢いよくグイッと横に手を引かれ体勢を崩すと脇を通っていく包丁。マコマコが腕を引いてくれたお陰で助かったが、あたしの後ろにはさっき庇ってくれた康ちゃんが…!
「っ康ちゃん!!」
言うや否やヒョイと避ける康ちゃん。え、冷静過ぎない?
「ガキ痛め付ける趣味はないけどー」
バットを持ったかずやんがオジガキの頭を殴り飛ばした。壁際まで飛ばされたオジガキだが直ぐに起き上がり、近くにいた健ちゃんを狙って包丁を振り回す。
「アリ?死なないの?」
「馬鹿!弱点があんだろ!」
「あそっか。そらさん何処?」
ザキに突っ込まれたかずやんに聞かれるが。
もう何なの。何でそんなにみんなナチュラルに名前呼ぶの。免疫ないんだから止めてよ呼ぶよって前振りしてよドキドキするから!!
いや、呼んでくれた方が嬉しいから怒ってるんじゃなくて。照れるじゃん。…じゃなくて。
「えっと、胸!心臓辺り!」
「はいよー」
かずやんは返事をするとヒョイヒョイと避けている健ちゃんとのナイスコンビネーションで心臓をバットで突く。断末魔と共に金の粒子になって消えたオジガキ。
安堵の息を吐いていると腕を掴んでいた手を離したマコマコに今度は頭を殴られた。
「痛い!!」
「ボサッとしてんじゃねえよ!マジで殺されるぞ!アンタは案内人で死なれちゃオレらが脱出出来ねえんだぜ!?」
あ、そうか。あたしがいなくなると脱出出来ないんだ。
そう思うと怒られている最中なのに一気に熱が冷めたような感覚になった。だってみんな優しくしてくれてるのって、忘れてたけど結局あたしが案内人でいなくなると困るからじゃん。
ちょっと優しくされただけで、信頼関係出来てきたとか思ってた自分馬鹿じゃん。恥ずいわ。
「うん。ごめん」
そうだ。あたしはこの子らを脱出させる為に案内人の役割をちゃんと担おうと思ったんだ。
もっと仲良くなりたいとか親交を深めたいとか私情で動くんじゃなくて、役割を果たす為に動かなくちゃいけないんだ。脱出すれば結局違う世界のあたしは彼らに会える術もないから、信頼作ろうったって無駄なんだ。
「…おい」
「ごめん!気を付けるから」
手を合わせてちゃんと謝る。あと助けてくれたお礼も忘れずに伝えた。
勘違いしちゃ駄目だ。気合いを入れなおさねば。
そう思いながら白玉探しを再開するが、ぐっと肩を掴まれ振り向かせられる。相手はマコマコで目の前に怒った顔の彼がいる。え、もしかして謝り足りない!?
「あの、」
「最後まで聞け馬鹿女」
「おい」
その暴言は必要ないだろうが。
「目の前で死なれたら後味悪いだろうが。死ぬなら元の世界に戻ってから見えねえ所で死ね」
え。何それ。
それだけ言うとポカンとするあたしを放って探索を再開するマコマコ。みんなはこの光景を見てちょっと笑っているように見える。康ちゃんは相変わらずの死んだ目ですが。
えっと、つまり?これはマコマコあたしが考えている事わかっててフォローしてくれたって解釈してもOK?
もしかして顔に出てたのかな。ペタペタ自分の顔を触りながらマコマコを見ていると、一瞥した彼に舌打ちされた。酷ェ。
「マコマコのデレが見られてよかったね」
いつの間にか隣に来ていたかずやんに耳打ちされる。やっぱあれってちょっとしたデレなの?うっそ、可愛い。
思わずニヤニヤ笑ってしまい二人でクスクス笑っているとマコマコにギンッときつく睨まれた。怖っ。
でも凄く嬉しい。死ぬなって言ったのは案内人だからってだけじゃないんだぞって言われた気になる。
そんな真意がなくても、あたしにとっては普通に嬉しい言葉だった。だからありがとマコマコ。最後の見えない所で死ねっていうのは余計だったけど。
もうちょっとだけ調子に乗ってもいいかな、なんて思いながらあたしも探索を再開したが結局何もないので第三資料室の捜索を終えて、いよいよ別館の方に向う。
何にもいませんように。いるだろうけど。
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