SPIRIT WORLD
一歩

「まずは男を探す必要があるわけだが…」

 渡り廊下にて。これから校舎に入る前にと日向少年が振り向き確認する。順番は先頭から日向少年と水戸部少年、次が小金井少年と福田少年、あたし、アレクさんと火神少年、最後尾が黒子少年と鷲の目イーグルアイを持つ俊ちゃんだ。

「適当に歩いてれば見付かるんじゃね?…ッス」

「まあそうなるな」

「あたしが走り回って誘き寄せてみようか?」

「それだとそらが危険だろう。無理しなくてもいい」

 アレクさんに言われ他の人も頷く。

「ありがとうアレクさん。あたしが会った二回とも三階にいたから三階にいる可能性は高いけど、その三階は…」

「マネキン、山口さんから見ればゾンビが大群でいるんですよね」

「イエス。三階から降りてきてないって保証はないけど」

 黒子少年の言葉を肯定する。出来ればお会いしたくない。美術室どころか理科室さえ行きたくないわ。そんな事言ってらんないんだけどね。

「取りあえず二階に行ってみる?」

「三階から近いし、音聞きつけてくるかもしれねえしな」

 小金井少年と日向少年の言葉を聞きながら頷きかけた首を止める。そういえば。

「別館一階の乾燥室。まだ探索終わってないって言ってたよね」

「あ、そういえば…」

 あたしが初めて行った探索時、秀徳の子らが行ったけど時間がなくて見れなかった乾燥室。その存在を思い出して言うと福田少年も思い出したように視線を宙に向けた。

「次の探索でって言われてたけど行ってないから、一回見に行くだけでも行ってみたいかも」

「わかりました」

「鬼男やマネキンゾンビ以外にも怪物はいると思うからみんな気を付けてね」

「「はい」」

 行き先は決まり校舎へ入る。一階を直進しながら日向少年は懐中電灯で先を照らして歩く。

「タイガ〜何でそらの隣は駄目なんだよ〜」

「アレックスが余計な事するからだろうが!」

「えー」

 あたしの後ろでブーブー文句を言うアレクさん。あたしは一人出歩いているので隣に行きたい行きたいと駄々を捏ねている。

「そういえば山口さん。霧崎の人らと何か仲良くなってたけど何もなかったんですか?」

 前にいる小金井少年がやや心配そうな面持ちで聞いてくる。霧崎にはいい思い出のない彼らからすれば何事も心配なんだろう。

「全然?普通だったよ。マコマコもあだ名で呼んでも何も言わなくなったし」

「確かに…」

「あの花宮がねぇ…」

 火神少年と日向少年が意外そうに呟いた。

「他の人にもあだ名付けたんですか?」

「うん!あ、みんなも呼んでもいい?」

 福田少年に問われ頷く。自分も付けてってフリかと思いそう聞くと福田少年ではなく小金井少年が振り向いた。

「オレコガって呼ばれてます!」

「じゃあコガって呼ぶわ。あとみんな敬語外していいんだよ」

「あざっす!改めて宜しくそらさん!」

 人懐っこい笑みを浮かべたコガとちょっと仲良くなれた気がする。

「じゃあじゃあ、日向は?」

「順ちゃん」

「えっあ、あざす」

 何最初のえってやつ。嫌なの?呼ぶけど。

「じゃあ水戸部!」

「水戸さん」

「ん?あ、嬉しいって!」

「エスパーかよ」

 毎回思うけど何でコガは彼の言葉が通じるの?その能力別に何か活かせない?

「福田は?」

「寛です…」

「ちょっそれ芸人!」

「うそうそ。ひろやんで」

 某芸人風に言ってみたら中々いいツッコミを頂いた。

「火神!」

「バカ神?」

「ぅおい!!」

「嘘だって、赤君が呼んでたから〜。かがみんで」

 うーん、いいツッコミだ。ピンでは面白くないらしいのにね。ぷっ。

「じゃあ最後に黒子!」

「テッちゃん!子テッちゃんでもいいけど」

「テッちゃんで」

 前者を選んだか。後者でも虎徹みたいでカッコイイのに。

「そういえばそらさん」

「ん?」

 そんなテッちゃんから話し掛けられ顔を振り向かせる。かがみんとアレクさんの間から顔を覗かせている可愛い。ってか名前で呼んでくれた?うおおお!テッちゃんの名前呼びはレアだ。

「僕の事どう視えてますか?」

「え?」

 何それ実は怪物だって?いや怪物なら見分け付くと思んだけど、と困惑していると俊ちゃんが助言してくれる。

「そらさんは普通に反応するけど、黒子は影が薄いから普段一見で把握されにくいんだ」

「ああ、そっちね」

 影の薄さの話かい。ビビるわ。

「赤司君と高尾君と伊月先輩は特別な目を持っているので僕を見付けられるんですけど、そらさんも初めてお会いした時に直ぐ認識してくれましたよね?」

「んー、そうだね」

 そういや意識してなかったけど、言われてみれば直ぐ目が合ったわ。ちーちゃんも薄いしテッちゃんも薄いとは思ってたけど、認識出来ないなんて事はなかったな。

「そらさんも特別な目をお持ちで?」

「んー、その赤君らの持ってるっていう特別な目がどんなものかは知らないけど、あたしは普通の視力だと思うよ?」

 ボロを出さぬよう言葉を選んで答える。天帝の眼エンペラーアイや鷹の目ホークアイを知ってるなんて当然みんなは知らないし。

「もし目がいいんだとすれば案内人になったからとかじゃないかな?」

 あたしは平凡な人間なので、と笑って言うと納得したのか微笑んで元の位置に下がっていた。よし、難を逃れたぜ。

「でも私には平凡には見えないぞ?」

「え?」

 アレクさんの言葉にドキッとした。まさか遂にバレた?

「そらには不思議な魅力がある、人を惹き付ける魅力がな。私はそらの近くにいて安心するというか落ち着くぞ。それに頑張り屋なお前は偉い」

 そう言ってアレクさんは後ろからあたしの頭を撫でた。

「もっと自信を持て。そらが此処で得た信頼関係はお前の努力によって出来た偽りでも嘘でもなく本物だ」

 アレクさんもそうだけど、本当みんなは欲しい言葉をくれる。いい人達だ。
 最初はただ本物の黒バスキャラが目の前にいると思ってるだけだったけど、いつの間にか一人ひとりの個性や人柄が見えて“ただのキャラ”という認識は少しずつ取れつつあると思う。
 あたしの心臓が動いているのと同じで、彼らも心臓が動いて呼吸しているのだ。だから必死に生きようとしていて、彼らを死なせたくないと思ったんだ。

「うん、そうだね。ありがとう、アレクさん」

 泣くのは全部終わってからだ。










「…此処だ」

 そして乾燥室に辿り着いた一行。何が起きてもいいように武器を手にしながら、順ちゃんがゆっくりドアを開けた。

「!」

 誰かの息を飲む音が聞こえた。順ちゃんを見ていると中を覗き込む体勢から少し体を戻す。

「何…?」

「…人がいる」

 コガに小声でそう答えた順ちゃん。
 人?と首を傾げたあたしを順ちゃんが見つめる。意図を理解して頷き、そっと中を覗き込むとそこにいたのは、

「…人だね」

 あたしが視ても人だった。人っていうか、小3くらいの男の子。
 でもただの人ではない。

「なんか透けてるけど」

 そう、その男の子は薄っすら透けていた。

「…うん、透けてる」

 順ちゃんもあたしに同意した。
 同じに視えているっていう事は怪物ではない、別のナニカって事かな。

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