SPIRIT WORLD
愛着

 どうも、そらです。先程まで海常本部にいたのですが、現在所変わって秀徳本部でございます。
 何故ここにいるかと言うと、高尾少年に拉致られたからです。

 「この人借りまーっす!」と言ってあたしを俵担ぎにし、すたこらさっさと走り去る高尾少年は明らかにきー君の真似をしていて遊んでいると思われます。

「おい高尾!勝手に連れてきてんじゃねえよ!」

「というか、いい加減休ませてあげろよ。ずっと誠凛から海常まで引っ張りだこだったろうが」

 そんな気遣いをしてくれるのは宮地少年と木村少年。見てたのか、照れる。

「いいじゃないっすかー。みんな交流深めてんのにうちまだだし、このウェーブにあやかろうと!」

「一々周りはお前の遊びに付き合ってられんのだよ」

 緑間少年が眼鏡を押し上げながら咎めるが高尾少年は気にしていない。寧ろ益々ニコニコしている。

「そらさんそんな事ないっすよねー?」

「まあ悪い気はしないよ」

「ほら!」

 高尾少年が嬉々と四人に向かって言うと四人が一斉に溜め息を吐いた。高尾少年の扱い。いや、あたしに対してか?

「そういえば高尾君はあたしに上着貸してくれてたよね。あの時はどうも」

「紳士として当然の事をしたまでッスよ」

「これから宜しくタカ君」

「宜しくでっす!」

 高尾の高と鷹を掛けてみたよ。上手いじゃんあたし。

「秀徳のみんなって真面目なイメージだったけど結構口悪いよね」

「宮地だけな」

「轢くぞ」

「「それ」」

「くっ…」

 何それ可愛い。ふと思った事を言うと木村少年が宮地少年指差し、そんな彼は思わずといった様子でつい口から出て木村少年と指摘すると唇を噛んだ。これでわざとじゃないんだから狡い。

「かーわーいーいー清ちゃんマジかーわーいーいー」

「清ちゃん!?」

「ぶっふぉ!!!可愛いって!!」

「高尾コラァ!!」

 清ちゃんと命名しふざけて褒めれば、怒るかと思いきや年上だからと思ったのか暴言はなかったが代わりにタカ君が怒られていた。

「他の奴にも付けてますよね」

「うん、あだ名つけるの楽しいじゃん。ね、村ちゃん」

「はあ…どうも」

 どさくさに紛れて呼ぶと目を丸くしてから苦笑して何故か礼を言われた。

「じゃあ主将は?」

「決まってる。ツボちゃん」

「「「「…ぷっ」」」」

「………」

 コボちゃんと被るけどいいだろうと思い張り切って言うと、大坪のツボちゃん以外の四人が小さく吹き出して笑った。似合わないとでも思ったんだろうね。でも可愛いじゃんねツボちゃん。

「緑間君はタカ君も呼んでる真ちゃんだよね」

 有無言わせないようなニッコリ笑みを浮かべて言うと、緑間の真ちゃんは眼鏡を押し上げた。光が反射して目が見えない。怒った?慣れ慣れしいっておこですか?

「…好きに呼んで下さい」

 ええええええええ!!!まさか此処にきてのデレ!?吃驚し過ぎてタカ君も3年の方々も放心してるよ!
 もしかしてだけど〜もしかしてだけど〜それってタイプが年上好きだからなんじゃないの〜!!
 そういう事だろ。

「え、真ちゃん?」

「何なのだよ」

「そらさんに何か態度違くない?」

「そ、そんなわけないのだよ!あるとしても目上の方だからそれなりの態度を取っているだけなのだよ!」

「「「それなりの態度取られた事ないけどな」」」

 秀徳のリズムも好きだわ。ケラケラ笑っているとみんなは目を丸くさせたが各々がはにかんだり微笑んだりしていた。和やかだ。
 そんな事を思っていると、ツボちゃんに後ろから両肩を支えられやんわり壁際まで押される。

「そろそろ休んで下さい。話なら後でも沢山出来ますし、まずは疲れを取ってもらわないと」

 決してあたしと関わりたくないとかではなく、単純に心配してくれているのが伝わる優しい言い方だった。配慮が嬉しくてクスッと笑っていると、目の前にまた大きな影が来た。見上げるとやる気のない顔のあっちゃん。お久しぶり。

「そらちんこっちー」

 そう言った後に何度目かになるかわからない誘拐です。次は横に担がれて連れられる。何でみんな普通に歩かせてくれないの。虐めですか?
 連れてこられたのは当然陽泉の所。そこには何故か正邦もいる。仲良くなったの?

 あっちゃんはその場に座るとあたしを胡座の上に座らせスポッと収めた。あたし子どもかよ。

「ワシらにあだ名はないんかのう?」

 岡村少年が隣に座ったかと思えば寂しそうに聞いてきた。

「ずっと煩いアル。そらが他の奴らと仲良くしているの見て自分も自分もって煩くてうざいアル」

「劉酷い!!」

「そういうのもうざいアル。いい加減黙らせて欲しいアル」

 劉ちゃんは淡々としたように述べているが、あたしはそう思ってもらえる事が当然嬉しいので勿論喜んでお付けしよう。

「あー、岡村君と福井君はまだ付けてなかったもんね。よしよし、じゃあ岡さんね。福井君は福君」

「え、おう」

 図体でかいのに心は繊細な岡さんをポンポンと撫でてやると嬉しそうにパアッと破顔した。

「「「キモい」」」

「何で!?」

「まさか主将が撫でられる場面を見る事になるとは」

 その様子を見てあっちゃんと劉ちゃんと福君がズバッと斬る。泣いている岡さんだがこの光景には慣れたものだ。いつの間にかたっちゃんもいて真剣な顔で言う程驚いているようだ。

「じゃあオレは〜?」

「カス」

「しばくよ〜」

 春日少年も便乗してきたが即行ボケると拳を握っていた。本気だこの人。

「うそうそ、その拳しまって。スガにするから」

「ならいいよ〜」

「岩村君は岩ちゃんか努君がいいんだけどどっちがいい?」

「いや、オレはどっちでも…」

 やや困惑気味に言う岩村少年はあだ名が慣れてないんだろうか。

「じゃあ可愛い方の岩ちゃんでいいんじゃね!?」

「津川黙れ」

 ともっきーが飛び出てきたかと思えば岩ちゃんにしろと言うのでそうする事にした。岩ちゃんに調子に乗るなよとともっきーは軽く叩かれている。

 それをのほほんとしながらぼんやり眺めているとあっちゃんの両腕が後ろから前に回されゆらゆらと揺れる。揺り籠のように揺れるリズムが心地良くてウトウトしだすと、あっちゃんの片手が目に覆い被さる。

「寝ていーよー」

「…んー…」

 寝かせる為に揺れているのかと思いながらお言葉に甘えようと目を閉じ、広い胸板に体を預け睡眠を取る。元々よく寝る方であるがこの世界では精神的にも疲れるので睡魔は簡単に襲ってくる。
 聞いた話ではみんなも適当に休息を取っているから心配いらないとの事だ。そんな事を考えている内に意識は沈んでいった。










 暫くして自分で起きると体勢は変わらずで、違うと言えばあっちゃんも壁にもたれて寝ている事くらい。他の人は各々が自由に過ごしている。
 回された腕を起こさぬように解こうと少し身じろぐと起きてしまった。

「ごめん、起こしちゃったね」

「ん〜…」

 振り返って虚ろな目を見上げていると頭を肩口にグリグリ押し付けてぎゅーっと抱きすくめられる。可愛い、甘えん坊か。
 しかし困った。起きたからには探索に行かなければならない。

「あっちゃんありがとね。あたし行ってくるよ」

「んー…もうちょい…」

 いやいや。駄々をこねる大きな子どもだ。どうしたものかと考えていると、急に視界が反転して間近に床が見え遠くに天井が見える。
 抱きすくめられたままゴロンと床に寝転がった事を理解したが、問題はそこではない。

「ぐえええ!お、重いぃぃ…っ!」

 あっちゃんが全体重を掛けてくる事だ。足を絡められまるで抱き枕のような、いや蛇に締め付けられているような状況と言える。押し潰されながらみっともない悲鳴を上げているとさっちゃんときー君が走ってきた。

「ムッ君!そらさん死んじゃうよ!!」

「紫原っち離してあげて!」

「無〜理〜」

 あれ、もしかして妖怪憑いてる?無理壁的なの憑いてる?

「アツシ、離してあげて」

「やだ。そらちんいい匂いなんだもん」

「ちょっと変態臭いんだけど。てか走って絶対汗臭いからやめて下さい」

「甘い匂いするよ〜」

「しない」

 ツッコミを入れたものの本格的に苦しい。段々青ざめていくとそこに赤君が現れた。

「紫原、山口さんが起きたなら出発する。離してやれ」

「えー…」

「紫原」

 有無を言わさぬ雰囲気にあっちゃんは暫し動きを止めたが、渋々あたしを解放する。

「丁度いい抱き心地だったのに…」

「ムッ君だけ狡いよ!」

 名残惜しそうなあっちゃんに苦笑しているとたっちゃんに起こされる。さっちゃんちょっと怒る所ズレてる気がするよ。

「山口さん、すみません」

「いやいや。懐かれる分には嬉しいんだけど、あっちゃん体大きいからね」

 赤君に謝られるがあっちゃん可愛いから許す。座り込んでチーンと落ち込むあっちゃんの頭をよしよしと撫でると顔を上げた。

「でもお陰でゆっくり休めたよ、ありがとうね。帰ってきたらまたお話ししようね」

「…うん」

 小さく笑うあっちゃん。マジ天使。
 きー君達にもお礼を言って赤君について行き洛山の元へと向かう。赤君は注目を集めると出発の旨を伝えた。

「これから白玉を持って乾燥室へ行きます。ただこれからは先程も言ったように何がどう変わるかわかりませんので、体育館にいても気を付けて下さい」

 一同が頷くと、赤君はもし一時間しても戻らない場合があれば捜索に出て欲しい事を全体へお願いした。
 赤君とちーちゃんはナイフと鋏一丁ずつ、葉山少年がバット、実渕少年がナイフと白玉、根武谷少年が一応ナイフ、あたしがナイフとフライパンを持って出発した。
 根武谷少年は素手でいくと言っていたがもしもの時のためにナイフは持たせた。素手って…筋肉パネェな。

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