SPIRIT WORLD不意
森りんを無視して、集合を掛けられた為さっちゃんとみんなの所へ集合する。玲央きゅんに手招きされ洛山付近に座り、みんな集まった所で探索の経緯を赤君より説明してもらう。
白玉が破壊された後体育館でも変異はなかったとの事。怪物の大群は白玉を割ったからではなく普通に奇襲仕掛けてきただけだと思うけど、一つその怪物が言った事で気になる事を伝える。
「階段ゾンビ達見上げてた時にね、みんな口々に喋ってたんだけど、“邪魔者見付けちゃ駄目じゃないか”って言ってて。それがあたしには女の子を指してるように聞こえた」
「邪魔者…か」
「じゃあ敵側にとって邪魔って事はオレ達にとって味方って解釈になんの?」
そう伝えると各々が考えるように呟き、コタが疑問を口にすると翔ちゃんが微妙やなと言った。
「よくあるやん。敵でも味方でもないっていう奴」
「まーね。でも起きて話してみればわかるし、敵か味方かは後でいいとして。アイツらからして邪魔者って言うなら排除の対象になるんじゃないかって心配なんだよ」
あたしがステージ付近に寝ている女の子の方を見てそう呟くと、玲央きゅんに頭を撫でられた。何でだ。
「そらさんったら優しいんだから」
「いやいや、君らのが優しいでしょ」
異端者であるあたしを受け入れてくれたんだから、と言うと何故か抱き締められる。だから何でだ。
「そらさんと知り合えてよかったわ」
後ろから抱き締められながらヨシヨシと撫でられる。ありがとうと言いつつも子ども扱いされているようで複雑だった。赤君に言われて玲央きゅんは渋々離れる。可愛い。
「現状はここまでです。探索は彼女が目を覚まして話を聞いてからどうしていくかを考えましょう」
その後解散になり休むよう言われたあたしが女の子の方へ行こうと立ち上がると前に大きな影が出来る。見上げれば黒髪編み込みスタイルの灰崎少年がいた。
「どうしたの?」
「アンタさァ、随分と仲良くやってんだな」
みんなとの事だろうか。
「うん?まあよくしてもらってるけど」
「へえ…オレは赤司が女で名前呼びすんの初めて聞くけど、アイツとも仲良い感じなわけ?」
「へー、そりゃ嬉しいね。普通によしてくれてると思うけど」
何が言いたいんだこのボーイは。喧嘩か?買わねーぞ、ま、負けるわけないけど買わねーぞ!
「ふーん」
そう言うや否やこちらに手を伸ばす。大きい手だなと思っているとその手は顔の下へ向かい。
むに。
「え」
「「なっ…!?」」
むにむに。
「着痩せするタイプかと思ったけど、やっぱアンタ胸ねーな」
「あ、俺もおっぱいねーなって思ってた」
胸を鷲掴みされた…だと…?
左胸を軽く揉まれ揉んだ当の本人は期待外れと言わんばかりに溜め息吐きながら手を離し、それを見ていた峰さんも淡々とした口調で言う。
放心するあたしと周りだが、あたしより逸早く覚醒した周りが叫ぶ。
「「あああああああ!!?」」
「灰崎テメェ何してんだゴラァ!!!」
「乳揉んだ」
「そういうこっちゃないのだよ!!!」
「ショウゴ君最低!!」
大丈夫ですかそらさん!と女性陣が寄ってきて守るように庇ってくれているけど、あたしは中々ショックから立ち直れなかった。
今あたし、乳揉まれて乳ねーなって言われた?屈辱受けた?辱めを受けた?
「ひゃああああぁぁああ!!?」
「「遅っ!!」」
初対面で普通乳揉むかね!?あり得ん、マジプレイボーイ過ぎるぜ灰崎少年!!
「しかも失礼極まりない!!峰さんも普通言う!?」
「だっておっぱいねーから」
「ふざけんなああああ!!」
「大ちゃん本当最低!!」
信じられない!こんな屈辱ないよ!!
「オレの女にするにゃ全然色気足りねーけど、周りの奴らに大切にされてんなら欲しくなんだろ」
ああ…コイツは何でも欲しい物は盗むんだったね、忘れてたよ。何をどう勘違いしたかは知らないけど、だからってあたしにちょっかい出すんじゃないよ。
「まあ足は長くて綺麗って部分ではいい感じだからな、仕方ねーからエロくなくても我慢してやるよ」
舐め回すように見られてあたしは遂にキレた。もう激おこプンプン丸までいった。
「お断りじゃあああああ!!!」
「ふごぉ!!?」
灰崎少年に近寄り全力でアッパーをかます。油断していたのか綺麗に決まって灰崎少年は宙を舞う。
「Oh!It's a wonderful punch!」
アレクさんはパンチを褒めてくれた、ありがとう。倒れる灰崎少年を睨み付けてあたしは壁際まで走って行き、みんなに背を向けて拗ねモードに入る。いいもん、貧乳でも好きって言ってくれる人見付けるからいいもん。
すると峰さんがこちらに近寄って余計な事を言いに来た。
「別にぺったんことは言ってねーじゃん。俺からすれば胸ねーから言っただけで」
「大ちゃんは何でそんな余計な事を言うの!?」
「青峰テメェいい加減にしろよ!!」
わざわざ余計な事を言いに来た峰さんにさっちゃんや若ちゃんが代わりに怒ってくれる。
「煩いな!人が気にしてるコンプレックス一々言わないでよ!デリカシーないとモテないよ!バーカバーカ!!」
「(顔真っ赤…)」
「(涙目だ…)」
「(ちょっと可愛い…)」
周りが何考えているかは当然知らないけど、どうせ馬鹿にしてるんだろう。乳揉まれたくらいでーとか、貧乳くらいで拗ねんなーとか…ふんだ。
悔しくてメソメソしているとリコぴんが近寄ってきてあたしの隣にしゃがみ込み、背中に手を添えて慰めてくれた。
「私はそらさんの味方です」
「リコぴん…!!」
ひしっと抱き合うあたし達の向こう側では最強な人達にセクハラした二人が怒られていたのを、あたしはリコぴんの愛情に涙していて見ていなかった。
「青峰、灰崎。今後同じような愚行をした場合は覚悟しておくように。二度目はないぞ」
「テメェらには男としてのデリカシーってもんを叩き込んでやるよ」
正座している二人の前に仁王立ちした赤君と拳を鳴らす虹村少年。背後に般若像の見える二人はこの異世界の怪物全てを無にする能力でも秘めているのではないかと思ったくらいに本当に恐ろしかったと、後にあっちゃんは語る。
あの騒動以降、あたしは女の子がよく見える位置で起きるまで待機していた。すると峰さんと灰崎少年はボロボロになってあたしの前に正座し謝りに来た。その姿に流石に不憫に思ったので許してあげる事にした。
「山口さん、コイツらがすいませんでした」
「いや、虹村君が謝る事じゃないから」
「…うっす」
一緒に謝りに来た虹村少年に礼儀正しいなーと思いながらじっと彼を見つめてみる。うん、やっぱりイケメンだ。
「にじむーって呼んでいい?」
「は?え?」
「彼女はみんなに色んなあだ名を付けて楽しんでるんだよ」
近くにいたたっちゃんが補足してくれる。何でもこの二人はアメリカで知り合っていたらしく、再会を喜んでいた。そんな設定あったか…あ、小説版であったか。
「へえ。何でもいいですけど」
「敬語もいらないよ」
「んー…わかった。じゃあオレもそらさんって呼ばせてもらう」
礼儀正しい彼の事だ。年上に敬語なしでいいのか?とか思ってそう。で結果的に名前で呼ばせる事にも成功してあたしはハッピーだった。だってにじむーってキセキの先輩でバリバリお兄さんみたいな感じだったじゃん?そんな子に慕われるってどんな感じなのかなって思って。
まああたし自身が慕われるような性格してないから、そんな感覚ちゃんと感じれるのかって問題はあるけど。名前で呼ばれるだけでも嬉しいからいいや。
「仕方ないから灰崎君にもあだ名を付けてあげるね」
「別にいらねえし」
「グレルリンで」
「それ妖怪じゃねーか!」
あ、知ってたんだ。意外にアニメ好き?
今は違うけどおそらく地毛であると思われるグレーの髪とグレてる性格からピッタリのあだ名だと思ったんだけど。
「じゃあアッシュ君」
「普通に灰君って呼べよ」
あら?聞きました?奥さん。灰君って呼べよだって。
「呼んで欲しいの〜?仕方ないなあ、じゃあ灰君って呼んであげるね」
「そうじゃねえよ!英語にするくらいなら普通にしろっつってんだ!!…ヤメロそのニヤニヤした顔!!」
さっきの仕返しでニヤニヤしながらからかうと灰君は怒るが手を出せないのはにじむーが近くで目を光らせているからだね。ありがとう。
すると視界の隅で何かが動くのを捉えた。みんなで視線を移すと女の子が目を覚まし起き上がっていた。
女の子は胸元で両手をきつく握って不安そうな顔でキョロキョロ見渡している。仕草から可愛いってどういう事なの。
あたしはその子に近寄り前に座って話し掛けた。さっちゃんがしてくれたように、笑い掛けて不安を解こうとする。
「起きた?おはよ」
「あ…!」
挨拶からと思ってそう声を掛けると女の子はあたしの顔を見て目を見開き、何かに気付いたように声を出した。
あたしも周りも「ん?」と首を傾げていると、女の子は嬉しそうに、でも泣きそうな顔で笑った。
「あの、お久しぶりです…!あたしを覚えていますか?」
「え?」
どゆこと?あたしが吃驚して瞠目していると後ろでマコマコが声を掛けてくる。
「オイそら。お前知り合いじゃねえっつってたろうが」
「え?いやいやいや、だってあたし…」
振り返ると全員が戸惑いマコマコは眉間に皺を寄せている。あたしが状況が飲み込めず慌てていると、女の子がハッとしたように弁解する。
「覚えていなくても無理はないと思います!あたしとそらさんが会ったのはほんの少しの間だけなので…」
ほんの少しの間…?すれ違ったとか?でもそれじゃああたしの名前知っているのに説明が付かない。
口元に指を押し当てうーんと考え込む。失礼ながらまじまじと女の子を見つめていると、女の子は遠慮がちに呟いた。
「あの、あたし…
有白陽葉です」
「…有白、陽葉…」
陽葉…陽葉…ひのは…
「ありがとう…ございます…」
「…あーーーー!!!」
「「!?」」
思い出して大声を上げると一同吃驚していたが、それ以上にあたしは吃驚していた。
「あっ、あの時の子…!?」
「はい!」
ニッコリ笑う可愛らしく笑うこの表情と、記憶の奥底から湧き上がった脳内にいる女の子の表情がシンクロした。
あたし、この子と自分の世界で会ってるわ。
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