SPIRIT WORLD
配慮

 それから一度解散し、主将達が集まり何やら話し合っている。あたしの処遇だとかこれからどうするかとかかな。
 他の人達は学校毎で分かれて固まっている。あたしは言わずもがなボッチである。

「これさあ…マジで誰がしてんだよ…」

 大体がキャラに恨み持ってる奴が作った世界で連れて来られたとか、単純に異空間に巻き込まれただとか、ゲームを作った人がいて試させる為に連れてこられただとかだけど、此処にあたしがいる意味はどのパターンだろう。
 何にせよあたしに怪我(という程の怪我ではないが)をさせた奴ブッコロ。縛られるより縛りたい派なので。
 赤い両手首をさすさすと摩りながら最初寝ていたステージ近くへ腰を下ろす。そこに影が差し掛かった。

「あの…」

「ん?」

 これはこれはリコ嬢ではないですか。手に持っているのは救急箱。

「手首さっき赤いのが見えたから、湿布貼った方がいいと思って」

 救急箱は探索時に保健室で見付けて確保したらしい。手当てをしてくれるとの事だが、目の前に座った彼女より気になる視線。誠凛の2年組が心配そうに見ている。
 ああ、怪しい人物に我らが監督が近付くのが心配なんだね。

「リコぴん」

「え?り、リコピン?」

「湿布とテープだけちょうだい?自分で出来るよ、ありがとね」

「え、でも…」

「あたしの身の潔白が証明されるまでは、ね?」

 そう言ったあたしにリコぴんは目を見開くと、直ぐにムッとして苦い顔をする。そしてあたしの腕を掴むと両手の処置を開始する。
 あれ?人の話聞いてた?この子。

「ちょ、」

「私が好きでする事ですから」

 あれ?何か笑顔なのに黒いオーラが…見える気がするよ…。

「山口さんも女性なんだから、体は大事にしないと」

 そう言ってくれたリコぴんに感動する。優しさに触れてちょっと涙腺が緩みそうになる。年を重ねると涙腺が弱くなるんだから…え?年寄り臭いって?言うなよ。

「ありがとう」

「はい」

 自然に頬が緩みお礼を言うと、大きな目をぱちくりとさせてから擽ったそうに笑うリコぴん。天使が此処にも。

「あの、私もそらさんって呼んでもいいですか?」

「呼んで呼んで〜」

 あだ名は気にしない事に決めたのか文句などなく、数少ない同性として配慮してくれていると思われる。やっぱりボッチは寂しいので距離を縮めてくれる人はウェルカムしますよ。それに乗じて名前呼びの許可を得た。リコぴん可愛過ぎ。

「これで大丈夫です」

「ありがと!綺麗な処置だね」

 両手首に貼られた湿布を見て感心する。流石相田さん家の子。

「私も名前で呼びたいです!」

「うわっ!」

 急に右から出てきて吃驚した。桃井嬢が手当しているあたし達に近付いてきて仲間に入れてくれと言う。断る理由が見当たらない。

「あ!驚かせちゃってすみません」

「いやいや、こっちこそごめんね。気軽に呼んで?あたしも名前で呼ぶから」

「はい!宜しくお願いします、そらさん」

「宜しく。あ、そうだ。起きた時声掛けてくれてありがとうね、さっちゃん」

 率先して声を掛けてくれた彼女にお礼を言ってなかったから今言う。するとキョトンとしてからふわりと微笑んで頷いてくれた。可愛過ぎか。

「じゃあ私も是非とも混ぜて欲しいな」

 いつの間に左側にいたのか、肩に腕を回してきたアレックス姉さん。たわわなお乳様が腕に押し付けられています柔らかい。

「えーっと…」

「アレクサンドラ=ガルシア。アレックスでもあだ名でもいいぞ。宜しくな、そら」

 言い淀む様子を見て忘れたと思ったのか再度名乗ってくれたが、近くてちょっとしどろもどろになっただけです。そして早速呼び捨てありがとうございます。

「宜しくお願いします、アレクさん」

「アレクさん…?ぶふっ!!本名とさんを掛けてるのか!面白いなそらは!」

「どうも!ところで日本語お上手ですね」

「まあな」

 そう言うとニコニコと間近でじーっと見つめてくるアレクさん。近い。見つめられ過ぎて頬にじわじわ熱が集まってくるのがわかる。

「あの、」

「ん〜?」

「あ!?アレックス!!!」

 アレクさんの篭ったような声と火神少年の焦った声が聞こえると、鼻先触れる程まで詰められていた距離が更に縮まり隙間が埋まった。「あ」と思った時には既に遅し。

「んむ」

「んん〜」

 キスという名の接吻をされました。それはもうブッチュ〜とね。
 今思い出した。アレクさんは確か子どもや可愛い女の子限定のキス魔らしい。しかしあたしは子どもでもないし特別可愛いわけでもないから大丈夫、なはずなのに何でチューされてんの。
 視界の隅では火神少年と氷室少年が慌てて駆け寄って来るのが見える。それはキスをしたアレクさんの暴走を止める為か、はたまたあたしという異質な存在に無闇に近付くなと言う為か。どっちもか。
 いやしかし中々離れない。肩に回された腕の力パネェ。柔らかい感触にじわじわ顔が熱くなる。数秒してからチュッとリップ音を立てて漸く離れた。
 目の前のリコぴんとその隣のさっちゃん、そして数名の男子は赤面している。同性と言えどキスシーンは照れるよね。
 頭ではちゃんと考えられるが突然の事に体は反応せず、赤面しながらぽけっとアレクさんを見つめていると再度引き寄せられた。

「こ〜いつ〜う!吃驚した顔もcute!」

「え!?」

 キュート?可愛いとな?不細工ではないと思うけど可愛いわけでもないのに可愛いとな?
言われ慣れてないのと突然のキスに赤面は益々酷くなっていく気がする。
 てか抱き締める力強過ぎ苦しい。

「アレックスゥゥゥ!!やるなっつってんだろうが!!!」

 火神少年がポカッとアレクさんの頭を叩き引き離す。叩かれたアレクさんと火神少年があーだこーだ言い合いを始めたのを見ていると、トントンと肩を叩かれ振り向く。

「大丈夫ですか?」

「あ、うん。大丈夫、吃驚しただけ」

「彼女は可愛い女性や子どもによくキスをしたがるんです。見ての通り外国人でスキンシップも日本人とは違うけど悪気はないんだ。許してあげて下さい」

 そう話すのは氷室少年。泣き黒子がセクシー過ぎる。優しく微笑む彼に苦笑を返す。

「怒ってもないよ。寧ろ可愛いなんてお世辞でも言ってもらえて嬉しかったし」

「お世辞ではないと思いますよ。あなたは充分可愛い女性です」

 何このイケメン辛い。キラキラが眩しい。
 この笑顔の裏には〜、って考えませんよ。高尾少年の時と同じです。皆疑ってるもんは疑ってんだから今は仕方ないし気にしないが一番。










【赤司side】

「では、岡村さん。お願いします」

「おう。任せとけぃ」

 主将での話し合いの末、これから行く探索では陽泉のチームに山口さんを入れて行く事に決まった。何かあってもタッパのある陽泉のメンバーなら上手くやるだろうと判断だ。
 先程の話の場で今吉さんと花宮さんに両サイドについてもらい可笑しな点はないか、プレッシャーからボロが出ないか山口さんの様子を見てもらっていたが、取りあえず嘘は言っていないだろうとの結論。疑問がないわけではないがオレから見ていてもそう思うので、一先ず監視の元動かせて様子を窺う事にする。

 陽泉が集まっている所へ岡村さんが向かう様子を横目で見ていると、騒がしい声が聞こえて視線をそちらに向ける。
 ステージの近くで誠凛の監督と桃井、アレックスさんと火神と氷室さんに囲まれた山口さんがいた。裏表のない屈託ない笑みを携えている。成人してなお無垢な笑顔をしている彼女は一見害のないただの人に見える。いや、恐らくは本当にただのオレ達と同じ巻き込まれた側の人間なのだろう。だがもしもの時の為に隙や意表を突かれないよう、油断せず警戒しているのだと振る舞う。その為の監視だ。

 汚れ役は買って出る。そうする事で全てが上手くいくのなら、何の惜しみもない。

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