SPIRIT WORLD
真意

《こんにちは、皆さん。無月由暗です。僕の正体を突き止めた…というか陽葉が教えて知られたから、もう正体を隠す必要はありませんね。僕がこの世界の創造者です》

 放送がなった後、古いスピーカーから聞こえた音声にみんなが耳を傾ける。自然とスピーカーへと視線が向いた。

《僕に会いたいなら君達が探している3年生教室のある新館を探す事だ。その新館の何処かに僕はいる。だけど気を付けて、怪異はこっちに来ると多くなるよ》

 口振りがやけに楽しそうで、微かに笑い声も聞こえる。数名は怪訝に眉を寄せて聞いており、陽葉ちゃんも悲しそうに目を伏せた。

《辿り着く前に死んじゃったりして…なーんてね》

「なーんてね、じゃないわよ!こっちの声もどうせ聞こえてるんでしょ!?じゃあよく聞きなさい!あんたなんかとっ捕まえてとっちめてやるんだから!!コイツらがね!!」

「「オレらかよ!?」」

 突如声を上げたリコぴんは青筋を浮かべてキレモードでスピーカーに向かって啖呵を切る。カッコイイ!と思っていると最後に親指を誠凛のみんなに向ける辺り流石だと思った。

「おーおー!そうだぜ、首洗って待ってやがれ。オレ達の能力が欲しいってんならやってみろよ!」

「奪うはオレの専売特許だぜ?真似してんじゃねーよ」

 峰さんと灰君が同じように挑発する。それに便乗してあたしもスピーカーに向かって叫んだ。

「ケツの青いガキが粋がってんじゃねーよ!そんなお子様はご飯食って糞して寝ろ!!」

「そらさん…?」

「嘘!今のなし!!」

「弱っ!」

 汚い言葉を言い切るや否や赤君から冷たく黒いオーラを感じたので直ぐに撤回した。怖い!あと煩いよかがみん。

「兎に角!あたしがそこにみんな連れて行ってやるから覚悟しておく事だな!!フハハハハハハ!!」

「そらちんが悪役みたいになってるんだけど〜」

 相変わらずマイペースなあっちゃんに癒されつつ反応を窺うと、スピーカーからクスクス笑い声が聞こえた。

《ふふ…わかりました。お待ちしております、案内人さん?皆さんの健闘を祈ります》

 最後にそう残すとブツッと音が切れた。何で他のみんなも挑発したのにあたしだけ挑発され返されたの?虐め?

「アイツが3年生教室のある新館とやらにいるのは間違いねえだろうな」

「本校舎か別館の何処からか行ける所があるはずです。探しましょう」

 マコマコと赤君の指示に頷く。あたしは抱き締めたままだった陽葉ちゃんを離して涙を手で拭う。

「ありがとうございます…」

「ごめんね、由暗君に喧嘩売っちゃって。腹立ったからさぁ」

「いえ、あの子が悪いんです。気にしないで下さい、寧ろもっと言ってやって下さい」

 少し可笑しそうに笑う陽葉ちゃん。吹っ切れた部分はありそうだ。よかった。

「今後の探索は新館探しに絞る。時間決めて探して見付けたら一旦戻って作戦を練る流れでいこか」

 翔ちゃんの意見に賛同し、主将組は固まって探索に行くチーム決めをしている。
 その間にあたしは周りに少し陽葉ちゃんと二人きりで話したいと頼み、みんなに離れてもらった。いくつか不思議そうな視線を頂くが、これは周知し難い事だからごめんよ。

「陽葉ちゃん。あのさ…」

「そらさんの世界の事ですよね」

 言う前に悟られていたようで瞠目する。陽葉ちゃんは微笑んで一つ頷いた。

「知っています、世界を跨ぎましたからね。この世には色んな世界があります。此処みたいに作られた異世界や、時系列は違えどいくつも並行するパラレルワールドと呼ばれる世界…色々です。その中でそらさんの世界が何処に位置しているかなどは当然わかりませんが、あたしが生まれた世界とは違う事は認識しています。だからあの時バレそうになって少し焦ってましたよね」

「うん。多分翔ちゃん…あの眼鏡の子や赤君とかマコマコは何か察してると思うけど」

「そうですね、そんな感じの雰囲気ですよね」

 チラリとその三人を見てから陽葉ちゃんを見つめる。

「でも恐らく聞いてくる事はないんじゃないでしょうか」

「だね。言うまで待つ精神だと思う」

 あの場であれ以上突っ込んで来なかったし…まあ二人きりとかになったら問い質される可能性はあるけど、その時は仕方ない。

「あたしはそらさんの世界の事を言うつもりはありません。特に知っていても知らなくても脱出には関係ありませんし」

「うん、ありがとう。ただ…」

「ただ?」

 あたしは少し視線を落として苦笑した。

「言わない事が結果傷付けるだろうなって思ってね。脱出出来たとしたらもう会えなくなるからさ。あたしがあの子らの世界にいない事知って、少しはあたしの事詳しく探してくれたりするのかなーって思うんだけど、その時にもし…もし、探してもいない理由がはっきりしないって事があの子達を傷付けたら、って思うんだよね。まあ、この世界にいる間の事をお互いに覚えていればの話だけどさ」

 真剣に聞いてくれる陽葉ちゃんの真っ直ぐな視線に少し泣きそうになりつつ、笑って自分の心配する事を吐き出す。吐き出すだけでも解決しなくてもスッキリするし。うん、大丈夫。

「そらさん…」

「ごめんね、こんな話して。結論は言わないって事で変わらないんだけど。…あの子らにちょっと依存し過ぎた、かな」

 陽葉ちゃんは悲しそうに微笑む。あたしがこれ以上慰めの言葉とかいらないのをわかっているからだろう。この子も本当いい子だ。
 
「出会いがあれば、いつかは別れがありますから…難しいですよね」

「だね。…難しいね」

 二人で遠くを見ながら話す。お互いに思う事はいっぱいだから、考えがついていかないのかも。てか頭使い過ぎて疲れたわ。

「そらさん」

「ん?」

「あたしに出来る事があったら、何でも言って下さいね」

 そっと両手を握られ真っ直ぐ見つめられながら言われた言葉に目を丸くしつつ、直ぐに笑って頷いた。その気持ちが嬉しいんです。

「そういえば陽葉ちゃん。ひのちゃんって呼んでいい?」

「え?あ、はい勿論」

「で、そんなひのちゃんに質問なんだけど、影葉君は白玉割ってから消えちゃったんだけど何処にいるの?」

 あたしは気になっていた事を聞いた。影葉君は主人を助けてと言い消えたが、約束通りひのちゃんは助けたものの式神と言えど彼は何処に行ったんだろう。消滅しちゃったとか?
 あたしの質問に対してひのちゃんは両手を離して目を伏せる。不味い事聞いちゃったかな。

「影葉は…」

「此処にいます」

 聞き覚えのある声が背後ではっきりと聞こえた。透明感のある声が更に小さくなって、消えそうな声だったあの声。
 バッと振り向くと目の前に顔があった。

「ひぎゃああああぁぁぁああ!!?」

「どうしましたそらさん!!って誰だこの子!?」

 吃驚し過ぎてひのちゃんの方にひっくり返る。後ろのひのちゃんもあたしを支えつつ吃驚していて硬直している。逸早く駆け付けてきた森りんに続いて数人が来るとあたしの目の前にいた人物を見て驚いた。

「あら、この子影葉ちゃんじゃない!」

「本当だ!!消えたのに何で!?」

 玲央きゅんとコタら洛山と誠凛の一部は実際に見ているのでお気付きだが、間違いなく影葉君だった。ただ少し違うのが、薄っすら透けていた体がくっきり鮮明になっており、声もはっきり聞こえ言えば存在感が出来た。幽霊っぽくなくなった。

「か、影葉…!」

「ご主人様…やっとお会い出来ました…」

 あたしが起き上がると影葉君が近付くので、そっと横にズレればぎゅっとひのちゃんに抱き着く影葉君。涙声で抱き着いてからひのちゃんの胸の中で震えているのを見ると、再会に涙しているんだろう。

「影葉…影葉!ごめんね…ごめんね…っ」

「ご主人様…ご無事で何よりです…」

 お互いに泣いて喜ぶ様子を見てもらい泣きしそうになる。ぐっと耐えているとトントンと肩を叩かれ振り向くと直ぐそこに森りんが真顔で座っていた。

「由孝の此処、空いてますよ」

 そう言いながら両手を広げる様子を見てあたしは吹き出した。

「それ芸人のネタじゃん!!やめてよ吹く!!」

「もう吹いてるってそらさんブフォッ!!」

 あたし以外に吹き出したのがタカ君。やっぱり笑いのツボ浅いね一緒だね。てか真剣にしている辺り森りん最高。めっちゃ面白い。

「え、冗談じゃなくて真剣なのに何で笑われてるの?」

「「真剣だからでしょブッフォオ!!!」」

 片やシリアスムードで片や爆笑ムードって、ただのカオスだった。
 当然こんな爆笑している中で感動の再開を味わえる事なく、苦笑するひのちゃんはまだいいとしてじと目で睨んでくる影葉君に居た堪れなくなった。スマン。

「何故君が此処にいるのか説明してくれないか?」

 主将組も近付いてくると赤君はあたしとタカ君スルーで影葉君に説明を請う。ちょっとは触れてよ突っ込んでよ。無理か。
 影葉君はひのちゃんから体を離すと淡々と話し始めた。

「本来、式神は主人の命めいを完遂する毎にその都度消えますが完全消滅するわけではなく、主人が生きている限り、あるいは式神自体が直接消滅させられない限り式神として何度も再生します」

「ズバッと言っちゃうけど、ひのちゃん死んじゃったんでしょ?死んでも式神使えるの?」

「肉体が死すれば使えません。ですが主人の場合、肉体と魂が引き剥がされてバラバラになった状態なだけで、言わば体は仮死状態にあります。その状態なら術は霊体でも使えます」

「はあー、成る程…」

 納得したが、ならひのちゃんは此処から出たら戻れるの?と思ったが、その心の中の疑問は察した本人に否定される。

「でもあたしはもう生き返る事はありません。あたしもまた、この世界のルールに介入して縛り付けられていますから。案内人を作ったりヒントの紙を作ったり、です。今は仮死状態ですがこの世界がなくなれば体も死ぬでしょう」

 じゃあこの世界がなくさない方がいいの?でもそれだとひのちゃんのお願いと違うくなるし、由暗君も助ける事は出来ない。こればっかりは諦めるしかない、のかな。
 あたしが考える間に影葉君は話を進める。

「今回は主人の封印を解く鍵の番人の任務で、主人が力尽きる直前という事で完全形態ではなくあのような半透明な姿をしていました。白玉を壊し鍵を渡す任務を全うした僕は存在が一時的に消え、残った術…魂と言えばわかりやすいですね。それだけが空間を彷徨っていました。本来なら主人の元へ帰るのですが、その主人は封印されていて戻れなかったので…」

 一つ間を置いた影葉君はひのちゃんを見上げ、彼女を見つめながら話す。

「そして主人の封印が解かれ僕は中へ戻る事が出来る状態になりました。戻れば気付いた主人にもう一度必要とあらば出して頂けると思ったのですが…封印は解かれても力は完全に戻っていない主人の中へ力が戻っていない事が関係あるのか帰れず、術として彷徨っていました。ちなみに案内人のお姉さんの周りをウロウロしていました」

「嘘だろ」

 マジかよ。想像したら、見えない人魂があたし付近をフヨフヨ纏わり付いて浮いている図が浮かび上がった。何か怖い、と同時にちょっとシュールに思えた。

「さっきそらさんに影葉の事を聞かれた時にいつもなら自然に戻ってる影葉の存在を感じなかったから、消滅しちゃったんだと思ってショックだったんだけど…急に出て来たから吃驚したよ」

「すみません、驚かせて。結局今も主人の中には戻れないままなんです。やはりまだ力が完全に回復していない事が原因だと思います。でも、案内人のお姉さんの近くをウロウロしてたら何故か僕の力は回復してこの通り、主人の中でなくとも完全形態で復活しました」

「あたしすげえ」

「自分で言うか」

 にじむーに軽く頭を小突かれた。嬉しい。あ、Mじゃないよ。

「陽葉ちゃん、いつもは例えば疲れても少し経てば回復したの?」

 さっちゃんの問いにひのちゃんはコクリと頷く。

「じゃあ何でひのちゃん回復しないんだろ」

「でも最初よりは少しだけ回復してはいますよ」

「…これは僕の憶測なんですが」

 影葉君が言った後で言葉を発したのはテッちゃん。顎に手を添えながら彼は独自の考えを述べる。

「案内人の能力を作ったのは有白さんですよね?なら単純に考えて、案内人の能力を作った事で案内人に選ばれたそらさんに有白さんの力が移り、回復しにくいんじゃないでしょうか。そう考えれば、影葉君がそらさんの近くを彷徨っている間に回復した事に頷けます」

「でもその本来の能力の持ち主である有白がそらさんと近くにいても回復しないのは?」

 一理あるが今一つ根本的な解決になっていない、と清ちゃんが指摘する。そして名前呼びありがとう。

「案内人としての役割が残っているからではないでしょうか。でも少しは回復しているんですよね?先程抱き締めるなど身体接触がありましたし、その時に少し回復したとか…都合よく解釈しているだけですけど」

「そういえばひのちゃん見付けた時顔色悪かったけど、少しほっぺ突いた時にほんの少しだけど顔色よくなった気がしたよ。気の所為かもだけど」

 テッちゃんの言う事にあたしはそれしかないと思った。的を得てるし。ひのちゃん発見時の事も思い出して伝えるとそうか、と清ちゃんは納得する。

「その線が強いな。黒子、お手柄だ」

「ありがとうございます。本当に都合よく解釈しただけですけど」

「ああ、それでいい。充分だよ」

 赤君も納得したようでテッちゃんを褒めた。少し嬉しそうにするテッちゃんを見てさっちゃんが素敵だと言ってフラフラしていた。大丈夫か。

「あたしもそれなら納得出来ます」

「僕もです」

 ひのちゃんと影葉君も頷き、仮定ではあるが解決したとしておく。

「よし、じゃあこうしよう。あたしの所為で回復出来ないひのちゃんの護衛を影君に命ずる!」

「そらさんの所為だなんて…!」

「影君…?そして何故案内人のお姉さんはそんなに偉そうなんですか」

 気遣わせるような事言っちゃったからひのちゃんが慌ててる、何かごめん。そして影君は影君呼びに首を傾げつつ任命した言葉に対し冷たい返しをした。でもめげないんだぜ!

「いいじゃん別に。まあ言われるまでもなくそうするつもりだっただろうけど。でも自分も探索に行くとか言い出すかなーって思ってさ」

 そこまで言うと目を見張った影君。前者と後者どっちも図星だったようね。

「由暗君の事は任せて。あたしだけじゃなくて此処にはいっぱい強いお兄さんお姉さんがいるんだからね!だから影君は此処でひのちゃんの事、支えて守ってあげてね」

 あたしは影君の目の前まで行くとわしゃわしゃと頭を撫でてやる。すると吃驚したようにキョトンとしていたが、初めて小さく笑うとしっかり頷いた。

「あと案内人のお姉さんじゃなくてそらさんとお呼び」

「…考えておきます」

 考える余地必要?嫌なの?ねえ、嫌なの?

「で、探索ってどうする感じ?」

「まずは海常と行ってもらいたいんですが、どうでしょうか」

「海常の方が宜しいなら」

 赤君が海常の子達に目配せすると、五人が近寄ってきて宜しくされる。

「宜しくっスそらっち!そらっちはオレが守るっスよ!!」

 え、いつの間にそらっちなんて呼ぶようになったの?あたしがキョトンとしていると、きー君は察したのか親指をぐっと立てながらシャララな笑顔で言い切った。

「さっきの有白さんに言ってた言葉にグッときてやられました!!姉御って感じで素敵だったっス!!」

 ああ、あの時ね。大号泣してたけどあたしの言葉に感動してくれてたんだ。へー、ありがとう。でも正直言っていい?チョロ過ぎだろ。

 そんな事を思いつつ、あたし達は武器を所持して探索の準備をする。休むか言われたが特に問題ない為このまま出発する事にする。
 早く目的達成したいしね。今の所トントン拍子に進んでるから、このまま勢いで直ぐ新館への通路見付けちゃったりして。
 心中ムフフと考えながら、無月由暗へ接触する為みんなに見送られながらいざ出陣!





 だがそう甘くはなく、一時間探索しても見付からなかったので次のチームである秀徳と探索に行くが、以下同文。探索を何度も続けるが、怪物には出会うし簡単には見付からないしで…。畜生!!

30/45
←|→

BACK/TOP
ALICE+