SPIRIT WORLD
嘆願

 体育館に戻ってから報告を行い、これまでの事情を説明すると皆一様に顔を歪めていた。

「すると何や、簡単には倒せやんくなったってわけかいな」

「少なくとも黒い靄が視えるようになるまでに一手間掛かると思います」

 翔ちゃんは面倒臭そうに顔を歪めており、赤君は肯定しつつも同様表情が晴れない。

「もっと武器があればなー。例えば銃とか」

 そう言ってコタがひのちゃんと影君をチラッと見る。

「武器の設置まで気が回らなくて…すみません」

「ひのちゃんの所為じゃないよ。っていうか、此処がこっち側を苦しめる為の世界だったとしても多少こっちに有利に働くような事があってもいいのにそれが全くないって可笑しくね」

「どういう意味っスか?」

「結局案内人の設定とかこっちの為になる事は創造者じゃないひのちゃんがしてるわけで、この世界を作った張本人の由暗君はこっちの為になる事一切してないじゃん?それこそ武器を設置するとかさ。いくら君らが身体能力高いからって一人間に武器なしとか無情過ぎない?“世界を創る”ってルールに銃とかある程度のお助けアイテムは設置しましょう〜とかないのかなって。設定してないんだとしたら相当ケチだなと思ってー。ちなみにナイフとかハサミは学校にあって当然なんでノーカンですよぉ」

 途中から無駄にスピーカーに向かって話し掛けるあたしにひのちゃんは苦笑した。言いたい事が伝わったようでマコマコが鼻で笑う。

「有白がこの世界に引き込まれた時点で創造者に荷担してるって判断されてりゃ、無月が何もしてなくても有白が案内人等の設定をした事で済まされてるのかもしれねえな」

「むむ…成る程そうきたか」

 あり得ん話でもないな、と思いながら深く溜め息を吐く。もうあんな思いしたくないんだけど。靄視えなかった時マジで焦ったよね、このままあたしが見破らなきゃみんな死んじゃうって。
 チラッとにじむーを見るが本人はたっちゃんと話をしていた。怪我とか大丈夫かな。

「とにかく今ある武器で対処しなくてはなりません。それぞれの怪物に黒い靄以外の弱点を見付ける為に、どんな道具でも使って対処するしかない。そらさんが紙とチョークを使ったように」

「まさかあれがアイテムとか言わないよな」

 タカ君がまさかなと笑っているが、何かそんな気がしてきた。たまたまあったにしてはタイミングがいいというか何というか…由暗君のイメージケチ臭いになりつつあるもん。

「何か衝撃波とか打てたらいいのにね」

「かめはめ波か?」

「あるいは元気玉」

 峰さんとそんな会話をしていると解散になった。また次のメンバーを決めているようで主将同士集まっている。

 あたしはひのちゃんの元へ行く。影君が座る逆へと腰掛けた。

「ねえ、ひのちゃん」

「はい?」

「あたしの案内人の力、戻せるとして少しでもひのちゃんに戻したら武器の設置とか出来ないかな?」

 力の移動とかどうやるか、そもそも出来るのかなんて知らないけど。戻せるものなら戻して、お助けアイテム設定してくれるとみんなの為にもなると思うのね。まあ、その後また案内人の力が戻せるかって言われりゃ微妙だけど。

「…出来ると思います。あたしに力が戻れば、武器の配置は」

「本当?」

「はい。でもあたしに力を戻せたとしてどれ程使うかわからないので、その後にまたそらさんに力を与えられるかわかりませんけど…」

 あたしが案内人としての能力を失ったら、道も怪異の正体もわからなくなる。これは賭けだ。

「…ひのちゃんは、あたしに不思議な力があるって感じて案内人にしてくれたんだよね?」

「はい、そうです」

「じゃあその不思議な力ってのが本当にあるなら、あたしはそれを信じるよ。そんだけそこらの事でへこたれないネバーギブアップ精神で頑張るから、やって欲しい。一回戻してまたあたしに力くれないといけないから、ひのちゃんにかなり頑張ってもらう必要があるけど…」

「いえ。さっきも言いましたけど、あたしに出来る事は何でもします。力の移動の仕方も考えます」

「ありがとう。ちなみに聞くけど、案内人ってひのちゃんの力が他人にあるから案内人が成り立つんだよね?」

「はい。但し、案内人になれるのはそらさん限定です。あたしは霊体なので案内人にはなれません。そうしたいのは山々なんですけど…」

「んーん。確認したかっただけだから」

 そこまで話をして、方法を今から直ぐに考えると言い影君と話し合い始めた。影君にはあたしの周りにいただけで力アップして、ひのちゃんは接触しても力戻らなかったから出来るのかちょっと不安だ。いや、此処は二人を信じよう。

 あたしはにじむーの所へ移動し、灰君と話している彼の隣に座った。気付いたにじむーがこちらを向く。

「そらさん、どうした?」

「助けてくれた時にお礼言ってなかったから。助けてくれてありがとう」

「気にすんな。したくてやった事だ」

「うん。…怪我ない?」

「大丈夫だよ」

「服捲っていい?」

「いや駄目だろ」

「怪我ないか見るだけ」

「いやいいって」

 一向に折れないにじむー。あたしはにじむーの横にいる灰君に目配せした。ら、凄く嫌そうな顔をした。意味は伝わったみたいだけど、とばっちりくるのが嫌なんだろうね。でも頼む。
 そう見つめると溜め息を吐いてにじむーを羽交い締めにする。

「!?おい灰崎!!」

「失礼しまーす」

「そらさん!!」

 べろんと無遠慮に服を捲り上げる。と、見事な腹筋がお目見えしてちょっと照れたのはここだけの秘密です。
 見ると横腹両サイドに手形が付いていた。

「…嘘吐いたな」

「…怪我に入んねえよ、こんなもん」

 バツの悪そうに視線を背けるにじむー。あたしは遣る瀬ない気持ちになって俯く。プレイヤーでしかも年下に怪我させるとか、あたし馬鹿か。

「ごめんね」

「だからそらさんが悪いわけじゃ、」

「ごめん。だから、今度はあたしが守るから」

 目を伏せながらもそう決意を口に出しながら痣にそっと手を添えた。這わしちゃうと擽ったいかなって思ってやめた。しかしいい筋肉だ…。

「…っ、」

 息を飲む音が聞こえて顔を上げると、顔を赤く染めたにじむー。え、どうした。あれ、もしかして照れた?照れたの?だって今のあたしの台詞カッコよかったもんね。

「っ、駄目だろアウトだろこれ!!」

「は?」

「もういいから!!わかったから!!」

 何がアウト?と思いながらポカンとしていると、灰君の拘束を無理矢理解いてちょっと離れた所でしゃがみ込み頭を抱え出した。
 あ、もしかしてキモかった?あちゃー、やっちまったなオイ。

「あんな虹村さん初めて見るわ…」

「…そんなに?」

 灰君の呟きを聞き取ったあたしは申し訳ない気持ちになった。スマン、にじむーよ。

「(女にあそこまで言わせて何やってんだオレは!狡い!あの台詞とあの表情かおは狡い!!顔が熱いぃぃぃ…!!)」

「「(虹村さん…ご愁傷様です)」」

 この後リコぴんにお願いしてにじむーの手当てをしてもらいました。










「そらさん」

「ひのちゃん」

「…やりましょう」

 ひのちゃんに声を掛けられてステージ側に移動する。そこでひのちゃんにお礼と共にジャージの上着を返してもらった。忘れてたわ、と思いながら着込む。

「方法わかった?」

「はい。少し考えたんですけど…」

「あ、ちょっと待って。みんなにも話しておきたい」

「そうですね、わかりました」

「は〜い皆さ〜ん!集合の時間ですよ〜!」

「普通に言えないんですか」

 影君も中々いいツッコミしてくれるよね。わらわら集まったみんなに座るよう促し固まって座る。
 そしてさっきひのちゃんに話した内容、今からする事を伝えた。数名はやや顔を顰めて納得いかなそう。まあ、一か八かだし。

「成功の確率が見えねえな。案内人の力がなくなるリスク背負ってする必要ねえよ。今の武器で充分だ」

「でももし凶暴な奴が来たら?接近戦は避けたい時に銃とかあったら危険だって少なくなる」

「お前は案内人としての役目を果たせばそれでいい」

「だから、案内人として言ってる」

 不機嫌なマコマコと見つめ合う。あたしは引かない姿勢を見せると益々不機嫌になった。怖い。

「あたしとひのちゃんを信じて欲しい。あたしは約束した、みんな助けるって。だから、お願いします」

 あたしは正座をして頭を深く下げた。リコぴんが止めようとするが、言葉を飲み込んでいた。

「…黒子君言いましたよね。そらさんに案内人としての役割が残っているから、あたしに力が戻らないんじゃないかって。でもその案内人の役割の一環として“武器の設置の援助”とか、条件を追加すれば力の移動は出来るんじゃないかって影葉と考えたんです」

 ひのちゃんからも考えを伝えた。無茶苦茶な事を言ってる事はあたしもひのちゃんも百も承知で言ってる。此処を全員が無事に脱出する為には、やっぱり決定的な武器が欲しい。
 守る力が欲しいのは、あたしだけじゃないはず。

「信じて下さい。あたしとそらさんを」

 ひのちゃんも隣で頭を下げたらしい。周りのみんなは息を飲んだり溜め息を吐いたり、様々な反応を示している。

「…わかりました。二人を信じましょう」

 赤君の声に顔を上げた。

「但し、その目的以外の事はしなくていいです。武器の設置、案内人の力はそらさんに戻す、その二つだけです」

「はい」

「わかった」

「…有白さんは力が他人へ貸しっぱなしになる事。そらさんにはこれからも案内人が必要なオレ達の為に視たくないモノも視てもらう必要がある事。二人には負担が大きいですが、脱出するまでは宜しくお願いします」

 赤君のお願いと共に数名からもお願いしますと言われた。照れて言えない人もいるみたいだけど、それがまた可愛いよね。
 なんて思いながら頷き、ひのちゃんと目を合わせる。

 成功しますように。
 そういえば、今日の大半真面目な感じだね。あたしも真面目に出来るんだなって思った瞬間でした。はい、作文です。

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