SPIRIT WORLD移行
話がまとまり、その場でひのちゃんと向き合う。ひのちゃんの後ろでは影君が背に手を添えて控えていた。
「まずそらさんの中にあると思われるあたしの力を戻します。これが出来た時点であたしとそらさんの間での力の譲渡が出来ていたと確定されます。そして力が戻り次第、一度影葉も戻します」
「僕と話し合って決めた事です」
心配げな様子が伝わったのか、影君からも同意の上でと伝えられる。
「力が戻れば影葉も中に戻れると思います。そして式神である影葉も戻る事で更に力の増幅を図ります。その後は武器の設置、そらさんに力を戻して終了です」
「影葉君は?」
「最悪力が足りず出せなくなると思いますが、元々命を遂行し終えた影葉は一度戻り休息する必要があるので、あたしの中にいてもらう事になります」
玲央君の問いに微笑んで答えたひのちゃんは、あたしを真っ直ぐ見つめた。
「それでいいですか?」
「異議なし」
「ありがとうございます。では、そらさんはただ力を抜いていてくれればいいので。不束者ですが、宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「「お見合いか」」
互いに正座して頭を下げる様子を見て翔ちゃんとスーさんがツッコミを入れる。うむ、冷静なツッコミである。
そして互いに見つめて頷き合った後、あたしは目を閉じた。
「いきます」
膝上に置いていた両手を取られひのちゃんの両手に包まれる。少し持ち上げられたかと思えば、温かくなる手。そして体。
ひのちゃんは念仏を唱えるようにブツブツと呟いていた。あー、あったかくて気持ちいい。あれだ、草原で日向ぼっこしてる感じ。
「そらちゃん」
ん?誰か呼んだ?気の所為?
「そらちゃん、聞いてよ!ママねぇ〜」
え?お母さん?ああ、言われてみれば母の声だわ。何で聞こえるんだろ…これ夢?
「いいもの買っちゃったんだ〜。気になる?気になるでしょ?」
うざかったこの会話…高校生くらいの時にしたような…。
そう思っていると、急に体から熱がひのちゃんに吸い込まれるように一気に引いていき寒くなった。さ、寒い…!!
この感じはもしかして今までひのちゃんが味わってた寒さだったりして…ひのちゃん冷たかったもんな…。
そう思っていると次は急に力が抜けて後ろに倒れそうになる。
それを支えたのはあたしの後ろに位置する場所に座っていた真ちゃん。おお、ファインプレー。
「…大丈夫なんだろうな?」
「…あたしの力だけではなくそらさんの元々ある生命エネルギーまで少しもらってしまったみたいです。すみません、少しだけ我慢して下さい」
「ん、オッケー」
後ろでやや狼狽した声が聞こえ目を開けると目の前に血色よくなったひのちゃん。影君はいなくなっていたので、恐らく無事中に戻れたのだろう。申し訳なさそうな表情を浮かべている彼女に笑って見せると微笑まれた。
すまぬな真ちゃんよ。もう少し支えていてくれまいか。許可取るように後ろを見上げると、少しだけぎこちない様子の彼が見えたが、離れる様子はないのでOKと思っておこう。
ひのちゃんはあたしの手をそっと離し、素早く印を組む。うおお、本格的だ。カッコイイ!
「……戻りました」
ふわっと一瞬風が舞って無事に力は戻ったらしいが、そう呟くひのちゃんの額には汗が滲んでいるので辛いのかもしれない。真剣な顔のまま目を閉じ印を組んでまたブツブツと唱え始める。
「…
放!」
そう言った瞬間、ぶわっとひのちゃんの体が光って風が起こり、三つの光りがみんなの前に落ちる。
「!?」
「…銃だ!」
目の前に発光していた物体が露わになる。銃三丁と銃弾が多数。
「…そらさん」
そう言われ手を伸ばされたのでその手を握る。随分と疲れた顔をしているので、申し訳ない気持ちになった。
「少しでいいよ、ひのちゃんの力。後はあたしが頑張る」
「でも、それだと案内人の力が足りなくなるかもしれません」
「じゃあ半分で」
「でも」
「五分の三!」
「競りかよ」
そんなやり取りをしてザキにツッコミを頂きつつ、大半をまた戻そうとしたひのちゃんは渋々納得して五分の三で納得した。
「送りますね」
目を瞑って最初のように両手を握り合いながら、そう言われた後温かいものが体に流れ込んでくる感覚がした。寒い場所で飲むあったかいココアみたいな、そんな感じ。
するとまた聞こえた。
「これね、霊感とか超能力とかその人に合った能力を目覚めさせてくれるんだって〜」
「いやいや、嘘っぽいんですけど。ただの粉じゃん」
「“神秘の粉”よ!さっき商店街で占いのお婆さんにもらったの!たったの千円よ!」
「待ってそれ絶対騙されてるから!この小瓶に千円とかボッタクられてるから!!」
「そんな事ないわよ、大丈夫!って事でそらちゃんで試していい?我が娘に凄い能力があったら売れるわよ!」
「それが本音だろうがァァァ!!お父さんも何とか言ってやって!」
「お金いくらくらい入るかな?パパ新しいゴルフクラブ欲しいんだけど」
「お父さん、お前もかァァァ!!」
ぶわあっと一気に記憶が蘇った。これはあたしが高一の頃に経験した事、会話した内容だ。そうだ、すっかり忘れてたけどこの時変な粉頭にぶっ掛けられたんだった。両親の目が金になっていたのが印象的だ。
結局その後特に何もなかったから騙されたって嘆いてたっけ。でもちょっと勘がよくなったり白と黒のふわふわが見えたりって事はあったけど、年々それも薄れてったから忘れてわ。
もしかしてこの粉の力がひのちゃんの言ってた不思議な力なんじゃないの…あっそんな気がしてきた。これこのタイミングで思い出したって事は絶対そうだよ。
そんな事を思ってる間に終わったようでそっと手を離された。目を開けると最初のように血色が悪くなってるひのちゃん。
「大丈夫ですか?」
「…うん、大丈夫。戻った。真ちゃんありがと」
真ちゃんに預けていた体を戻して立て直し、手をグッパーしてみるがさっきの怠さは消えていた。
「ひのちゃんは?」
「大丈夫です。影葉を出せる程の力は残っていませんが…」
「そっか…ごめんね」
「いえ。休ませたかったので丁度よかったです」
ひのちゃんは柔らかく微笑んだ後深く息を吐いた。
「二人共大丈夫か?」
順ちゃんに声を掛けられあたしは返事を返すがひのちゃんは頷くだけ。相当疲れているようで、背中をさすってあげていると肩にもたれ掛かってきた。
「男の気持ちが凄くわかる…抱き締めたい」
「変態か」
真顔でさり気なく肩を抱き寄せていると清ちゃんに冷たく言われてしまった。
「これが武器?」
「はい。扱い易い銃をモデルに三丁準備しました。銃弾は対怪物用の弾なのでもし人間に当たったとしても害はありません。ちょっと痛いだけです」
「陽葉ちゃんハイスペック…」
一番に銃を手に取ったコタ、たっちゃんとにじむーも残り二丁を手に取りまじまじと見つめみんなに回している。さっちゃんは感心したように呟いた。同感である。
「これで新館での怪物対策になればいいんですが…」
「充分だよ。ありがとう」
赤君がそう言うとひのちゃんは安堵したように微笑んだ。あたしが少し眠るように伝えると頷き、直ぐに目を閉じて眠りについた。
アレクさんが近寄ってきてひのちゃんに膝枕をして寝かせるというのでお願いする。
あたしは立ち上がって体を軽く動かし、違和感がない事を確認してみんなに向き直る。
「案内人の目がちゃんと機能するか確認も兼ねて早速探索にって思うんだけど」
「そらさんがええなら」
「ひのちゃんが頑張ってくれたからね!準備万端なんだZE!」
「「うっぜ」」
「泣くよ?」
サムズアップからの腕でZポーズを取ってアピールするが、主に霧崎の方から暴言が聞こえてショックを受けた。
これより探索を再開します!銃がどんな威力あるのかも気になるしね。
私は勿論例のブツを持って行きやすぜ。
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