SPIRIT WORLD
流動

「かがみん!ソイツ右肩!」

「おう!!」

「若ちゃんソレ眉間にピンポイント!」

「どっせぇーい!!」

「あっちゃん、ソレは膝に靄視えるようになった!」

「りょうかーい」

 あ、騒がしくてすみません。バタバタと慌ただしい突撃隊は現在新館一階にいます。目的は、由暗君探しの前に鍵探しです。

 これまでの経緯をざっと説明すると、何度か探索に出て地道に怪物相手しながら鍵探してる感じ。
 取りあえずあの移行儀式を経て案内人として機能するか試す為に、パワーアップ怪物のいる新館からは距離があり且つ怪物が多いとされている三階に向かいヤツらを待ち構えていたところ、のこのこやってきた怪物を発見。そして視る。

 最初は霞む程度で焦ったが、自分で何とかするとひのちゃんに言った手前此処で視えませんなんて言ったら「ほれみろ」と特にマコマコ馬鹿にされ殺されると思って必死に目を擦ったり凝らしたりして視て、何とか普通に視る事に成功。winnerそら!
 あ、普通ってみんなに視えている通りじゃなくて、今までの案内人として視えていた通りに視えるって事ね。え?わかってる?失礼しました。

 案内人として機能しているとわかり新しい武器を持って新館へ出発。
 ちなみに最初出会った怪物はテケテケでした。下半身がないだけじゃなくて皮膚ドロドロでした。うっぷ…。ソイツの靄は直ぐに視えたので新館の怪物ではなかった。

 そして最初のチームと新館へ行き、片っ端から開けてって由暗君を見付けよう作戦を立てて決行する事になった。ただ一番怪しい四階の視聴覚室に直行したけど開かなかったので、鍵を見付ける必要があると判断し各教室を回る事になったんです。で、3年A組から鍵探し開始。

 片っ端からって無謀とか銃弾勿体ないとか思うだろうけど、確かに銃弾の無駄遣いは出来ないが銃弾自体がBB弾より少し大きいくらいで銃弾ケースに沢山詰め詰めで入っているので、やたらめったら打たなきゃ保つかなと言う考えでこの作戦をする事になった。
 さっさと鍵も由暗君も見付けちゃおうぜって事で、今ある勢いでノリのいい性格の子達と乗り込んで行きまくりました。振り返ってみて、あのテンション凄くよかったと思う。潔くて活発で。

 ここで冒頭に至るまでの探索結果をつらつら述べていく。まずA組には何もおらず鍵もなし。
 三階へ移動して3年B組には肌荒れの激しい小豆洗い。もう肌に小豆くっ付いてるよって突っ込みたくなるくらい。で、ソイツはやっぱり靄が視えず小豆洗いはこちらに気付いた瞬間厳つい顔で小豆を投げまくってきた。
 地味に顔に当たると痛いから、教室の中心で机の上に立って投げてくるソイツに腹立ったあたしが入口周辺の机をガガガッと真ん中に寄せるように思い切り押すと、バランスを崩して床に倒れ小豆を全部ばら撒いた。

「ざまあ!」

「そらさん大人気ねえ」

「怪物相手だからいいんですぅー」

 ショックを受けている小豆洗いの右手に靄が見えて、あとはお察しの通り新調のピストルでバーン。小豆洗いの片手が吹っ飛ぶ程の威力と効果だった。この威力と効果で射撃の反動はあまりないらしい。恐ろしいんですけどこの武器。

 此処で確信した事。恐らく、赤君も言っていたがパワーアップ怪物は靄を視るまでに一手間必要で、その一手間が靄以外の元々ある弱点・対処法(キョンシーならお札、口裂け女ならべっこう飴など)だという事。
 小豆洗いは見た感じ、大事な小豆を自分で投げるならまだしも他人に全部落とされてショックで油断したから靄が視えたのではないかな。
 新館の怪物対策を、名付けて二段階弱点攻撃!…中々ダサいね。
 ちなみに以上の考えは報告会で伝達済みだ。

 まあそんな感じでB組に鍵もなくC組に移るってところで、廊下の天井からボタボタマネキンゾンビが落ちてきて一旦退避。毎回マネキンゾンビに邪魔される辺り、由暗君が探索を一気にさせずにちびちびと区切らせようとしてるんじゃないかと疑う。本当ケチ臭い野郎だ。決め付けだけど。

 そして次の探索でCからE組まで探索。その間も当然怪物は出てきたが、銃の扱いや第一の弱点攻撃に慣れてくると難しいものでもなかっ た。怪物が何かわかれば弱点で思い当たる事を試していけばいいだけで、知識も必要だが観察しているとわかる事もある。隠す素振りとかあるし。
 そんな事が言えるのもひのちゃんが銃を準備してくれたからなんだけどね。でも彼らも流石だよ、飲み込みがお早い。

 それからまたマネキンゾンビに邪魔されて退避、次のチームで出発して今に至る。現在のメンバーはかがみん、若ちゃん、あっちゃん、俊ちゃん、そしてマコマコとあたしの計6人。
 探索の続きで一階の3年FとG組を行く事になり、F組は何もなくG組で多くの怪物に遭遇。
 唐傘お化け、人面犬、河童などの妖怪ばかりだったが、どれもグロテスクに変身しておりあたしとしては「なんだあ、普通の日本の妖怪じゃーん」なんて軽く言えないレベルです。そしてやっと冒頭に至る。お待たせしました。

 かがみんはバット、若ちゃんとマコマコと俊君がピストルを持ち、あっちゃんは素手&あたしのフライパンが武器。マコマコと俊君が援護射撃的な感じであたしを守ると同時に援護しており、何かもう、動きが仕事人なんだけど。

 時間は掛かったが全部の怪物を倒し、G組の探索を行う。しかし何処にも鍵が見当たらなかった。

「どっかで見落としてねえだろうな」

「うーん…隅々まで探してたから見落としはないと思う」

 参ったな。そう思いながら凝った首を解すように回した。本当偶々そうしただけなんだけど、不意に天井で何かと目が合った。
 お互いが固まる。

「…目玉の親父だ!!」

「は?」

「アレ!!」

「は!?ちっせ!」

 なんと鬼太郎さんでお馴染みの目玉の親父さんが天井にしがみ付いているではありませんか。ただあたしからは目が血走ってつけまがぶっ刺さっててある意味グロい姿だけど。
 何より驚きなのはその小さなボディに縛り付けてある鍵。絶対あれが視聴覚室の鍵だよ。

 目玉の親父はせかせかと逃げるように天井を器用に這って教室を出て行こうとしているが、忘れちゃならない、こちらには凄い奴らが沢山いるんだよ。

「取れたよー」

 ハッ 離セェ!

 天井に手を伸ばしひょいと目玉の親父を掴んだあっちゃん。ナイス。流石ととろ以上。
 ジタバタ暴れる目玉の親父から紐で付けられている鍵を取り、あっちゃんは目玉の親父をその紐でぐるぐる巻きにすると教卓の上にちょこんと乗せて放置。ちょっと可愛いかも。
 目玉の親父はヒーヒー言いながら紐から抜けようと頑張るが、あたし達は無事にゲット出来た鍵を持って移動する。
 倒さないのは小さ過ぎて可哀想だと思ったから。ええ、贔屓ですとも。

「さっさと行くぞ」

 また途中で怪物に鉢合わせは勘弁だ、と誰もが思っていたので駆け足で四階まで上る。

「ゼェ…ハァ…」

「そらさん大丈夫?」

「ヤバイ、階段一気に四階まではヤバイキツイ死ぬ」

「ほら、頑張って」

 年はとるもんじゃないですね。いや、あたしが体力なさ過ぎなだけか。二階過ぎてから既に息切れしているあたしを引っ張ってくれたのは俊ちゃん。
 他は気にする事なくひょいひょい上って行くからちょっとムカついた。もし怪物に襲われたらどうするんだよ!結果的に襲われなかったけどな!!

「遅えよババア」

「それは言っちゃいかん。あかんやつ。冗談に聞こえないし普通にショックだからヤメテ百円あげるから」

「いらねえよ」

 真顔で抗議すると必死さが伝わったのかマコマコは顔を引き攣らせていた。デリケートな部分なんで気を付けて下さい。

 気を取り直して、目の前には視聴覚室。あっちゃんは持っている鍵を鍵穴に差し込み、横に捻る。

 カチャ、と解錠の音が鳴った。

35/45
←|→

BACK/TOP
ALICE+