SPIRIT WORLD
誠凛レギュラーを救う

「いやー暗いな!」

「お前は脳天気過ぎだ」

 やっはろー!そらだよ!
 あ、ごめん調子に乗ったの謝るからその拳を下ろしておくれ。

 現在あたしは誠凛レギュラーの皆様と探索中にございます。順ちゃん、ヨッシー、俊ちゃん、かがみん、テッちゃんの五人ですね。新館への入り口探しを頑張っております。ヨッシーは足の怪我もあるし無理しないでって止めたんだけど行きたいって言うからこのメンバーになりました。

 冒頭に喋っていたのはヨッシー。へらっと笑いながら薄暗い廊下を歩いていて隣にいる順ちゃんに突っ込まれている。そして二番目にあたしとテッちゃん、後ろに俊ちゃんとかがみんがいる。

 現在二階の別館を探索中です。いつも体育館側から探索してるから、奥からしたら何か変わるかと思っての事だ。
 一行は被服室へ入るとミシンの山がある部分を崩してみたり、かがみんに肩車してもらって天井裏を調べたりして新館の入口を探す。
 肩車の際にかがみんがトギマギしていて可愛いなと和んでいたのは内緒だ。

 力のあるかがみんと手が大きいヨッシーに作業台の大きい机を移動してもらったり、テッちゃんに黒板とかをイグナイトしてもらったりしたけど何も見付からず。イグナイトして痛がってたけど。
 調理室もトイレも同様何もなかったので、体育館側に向かって来た道を戻る事になった。

「…ん?」

「何だあれ」

 廊下を歩いてL字突き当たりに来た所で、ヨッシーと順ちゃんが何かに気付く。丁度曲がり角の所に何かが落ちていたようで立ち止まり順ちゃんがそれを拾った。

「…羽根?」

「カラスのか?」

 テッちゃんとかがみんも二人に近付きそれを見て首を傾げる。最初はなかったのに、と俊ちゃんが呟きながら四人の手元を覗き込んでいるのを眺めていると、左側の視界の隅に何かが過ぎりそちらを向く。
 視線の先のそこ、階段付近には黒マントで全身を包んだ人がいつの間にかいて、フードを被っているがそこから見える老いた口元がにやりと弧を描いた。

「「うわっ!?」」

「何だ!?」

「!!」

 怪物だと言おうとした瞬間、近くにいたみんなの悲鳴が聞こえ振り向くと五人ともがいつの間にか網に掛かっており足元が縺れて倒れ込んでいた。

「ちょ、みんな!」

「急に羽根が網に変わって…!」

「あまり動かない方がいいと思います。余計に絡まるので」

 何事だと問えば先程拾った羽根が突如網に変形し五人を絡め取ったとの事。あたしは一人余所見していて網の範囲内に奇跡的に立っていなかったようで間逃れた。
 バッと振り返り階段付近を見てみるが既にマントの人はおらず、逃げたかと軽く舌打ちをしてみんなに向き直り持っていたナイフで網を切ろうと近付いた瞬間。

「うぉあっ!?」

「!?そら!!」

 何かに弾かれるように後ろへ飛ばされ別館側に向かって廊下を軽く滑り倒れる。何今のバリア!?結界!?
 かがみんの声を聞きつつ痛む身体を押さえて直ぐに起き上がるとみんなとあたしの間に先程のマントの人があたしの方を向いて立っていた。

「っ、アンタか!こんな事してんのは!」

 ヒッヒッヒ ソウダヨ〜ン

「うっぜえ」

 何がソウダヨ〜ンだよ。フードから覗く口元は老いていて皺が見えるし声も嗄れてるし格好もまるで魔女のようなので、仮に魔女と呼ぼう。
 魔女は後ろのみんなを指差すと楽しげに笑った。

 アノ子達ヲ助ケタクバ 自分デ何トカスルンダネ ヒッヒッヒ

 そういうとスッとその場から消えてしまった。あたしは立ち上がりみんなの所に向かってナイフを取り出し網に切り付ける。しかし全く切れず、どんなに刃を擦り付けても切れる様子はない。みんなも色々試すが結局切れない。
 立ち上がろうにも絡み付いていてこのままの移動は不可能だ。

「そらさん、体育館に行って助けを呼んできてくれ!」

「え、でもその間此処にいるの?危ないよ!」

「大丈夫、武器はあるから」

「…わかった」

 順ちゃんと俊ちゃんに言われて置いていくのはかなり気が引けたが覚悟して頷き、体育館の方に向かって走り出す。

「直ぐ呼んでくるから!」

 全速力で体育館駆ける。早くみんなの所に。

「ほぐあぁぁぁああ!!!」

「「!?」」

「「え!?」」

「は、跳ね返っ…ブフッ」

「誰だ今吹き出した奴」

 そう、走り出して間もなく、本当に直ぐに見えない壁みたいなのにぶつかったあたしは跳ね返されました。そりゃもう全速力で走ったわけだからめっちゃぶつかるよね、コントみたいに綺麗に跳ね返ったよね。
 声からして順ちゃんだと思うけど笑われてめちゃくちゃ恥ずかしくなった。折角シリアスな感じでみんなを助ける為に駆け出したのに出鼻挫かれるとは何事。

「てか何これ!?壁!?結界なの!?」

 ソウダヨ〜ン

「だからそれうぜえって!しかも何処にいるかわからないから天の声みたいな感じで更にうざい!!」

「誰かと話してるのか?」

「怪物じゃないでしょうか」

 見えない壁にペタペタ触りながら大きな独り言を言うと返事がきたがそれにエコーがかかってるように聞こえて更に苛ついた。後ろではヨッシーとテッちゃんが暢気に会話している。

「これじゃ助け呼びに行けないじゃん!」

「反対の階段は!?」

 俊ちゃんに言われて逆走し、別館側の階段に行こうとするが階段前に見えない壁があって通れない。別館の境界線から先も進めない。

「無理ィィィ!!閉じ込められたァァァ!!」

「落ち着いてそらさん!」

 俊ちゃんに声を掛けられるもののどうしようと頭を抱えていると、再び魔女の声が聞こえた。

 助ケル為ノヒント 欲シイカイ?

「教えろクソババア!!」

「口悪いですよ」

 テッちゃんは冷静にツッコミを入れてくれるがあたしは焦っている。だってあたししか助ける人いないんだもん。

 私ヲ見付ケテ 倒シテミナ

「それヒントって言えんの?」

 ヒントと言うよりそれ答えだねと思いながら、出来る事はやろうと移動出来る空間で走ったり壁を叩いたりするが何処にもいない。
 魔女がどんな感じか、どんな会話をして今走り回ってるかは魔女を探しながらみんなに伝えた。すると囚われた状況でも辺りを見渡すなどしてみんなも探してくれた。

 しかしこの状況で他に何もないわけがなく。

「おい!三階から何か来たぞ!!」

「えっ?ひぃぃいいい!!」

 かがみんの言葉で階段の方を振り返るとそこには赤いワンピースを着たマスクをした女性。マスク以外の部分は酷く爛れていて腐臭もし、目は全体的に真っ赤で恐怖を煽る。絶対アレ、奴じゃん!!有名な奴じゃん!!
 みんなにもマスクをした人が見えているようで「え、まさか口裂け女…?」と呟いていた。だが特に初見で怖がっている様子ではないのを見る限り、グロくは見えていないようだ。

 アタシ キレイ?

 言われたあああああ!!どどどどどうしよう!怖いよォォォ!!

「ふっ、普通うううう!!」

「あ、綺麗か聞かれたんだ」

 かなり力んで絶叫すると順ちゃんが一人納得し、そして女はマスクを掛けた耳に手を伸ばす。ま、まさか…!!

 コレデモォ?ォオグッフォアァァァ!!

「いやあァァァァァァ!!!」

「「「ええええええ!!?」」」

 有名な台詞を言いながらマスクを取った女の耳まで裂けた口が一瞬見えたが、それより早くあたしは隠し持っていたフライパンを構えて目をきつく瞑りながら振り回す。
 油断していた口裂け女の顔面にフライパンの底が直撃し、絶叫を上げながら後ろに倒れるのに被せてあたしも叫んだ。
 順ちゃんと俊ちゃんとかがみんもあたしの暴挙に声を上げた。

 ちなみに靄は口元にあったので、歯を全て折る程の勢いがあった為そのままご臨終なさった。

「うええええ!怖いよォォォ!口裂け女怖いよォォォ!!」

「見る前に殴り倒して言うかよ…」

 ブルブル震えるあたしを見て冷や汗をかいているかがみんの言葉は無視した。だって倒す勢い大事。
 そこでまた声が聞こえた。

 フッフフフフフフ フンフン フッフフフフフフ フンフン

 鼻歌だった。

「すっごいムカつく…鼻歌歌ってる。しかも日曜夕方に放送してるアレのオープニング」

「ああ、笑点?オレも好きだぞ」

「あたしもだよ」

 流石ヨッシー、わかる奴だ。魔女の鼻歌が聞こえてわざとなのかそうでないのかは知らないが、こっちは怪物に襲われててんてこ舞いなのに余裕綽々でムカつく。
 早くしないとまた怪物が来る、と思ったその時、魔女を誘き出す方法を思い付いた。

 そうだよ、見付けるより誘き寄せればいいんじゃん。

「これだ!!」

「「?」」

 疑問符を浮かべる五人を放置し、あたしはもし何かあっても巻き込まないようにみんなより少し離れた位置に立ち、フライパンを左手にナイフを折り畳んだ状態で右に持ち大きく息を吸った。

「ゆ〜め〜じゃないアレもコレも〜!フフフフフフフ〜フフフフンフン!」

「え?」

「歌?」

「つか歌詞知らねえのかよ!」

 フライパンをナイフで叩いて音を奏でてリズムを取り、歌とわからない部分は鼻歌で誤魔化してノリノリで歌い出すとみんながどうしたとツッコミをくれるが、間違いなくあたしの作戦であるので黙っていて欲しい。

 そして終盤まで歌い上げ、

「そ〜して〜かーがやーくウルトラソウル!」

 ハァイ!!

「そこだァァァァァァ!!!」

 ギャアアアアアァァァ!!!

 カンッ!とフライパンを叩いたと同時にあたしの目の前に拳を突き上げた魔女がノリノリで現れ、あたしは瞬時に靄を読み取り弱点の頭頂部目掛けてフライパンを叩き付けた。
 絶叫と共に崩れ落ちた魔女。それを見ていた一同は何とも言えない顔をしていた。ヨッシー以外。

 何故 私ノ居場所ガ

「いや、鼻歌歌うくらい歌好きだったら絶対ノってくれるよなって思ったら出てきたから?試しにやっただけ」

 これで出てこなかったらただの痛い人だったけど出てきてよかった切実に。
 ショックを受けつつもまだ諦めないで手を伸ばしに掛かる魔女の頭に、あたしはナイフの刃先を出し脳天にぶっ刺した。
 殴る蹴るより生々しい感触が手に伝わったが、絶叫して消えていくのを見送りこれでいいんだと自分に言い聞かせた。
 今までみんなにこんな事させていたのを反省するいい機会だったかも。うん。

 消えたと同時の網が消え解放された五人に気付き、あたしも駆け寄るとみんな立ち上がった。怪我はないみたいだ、よかった。

「あの歌のやつ意味わかんなかったけど、あれ作戦だったんだな」

「当たり前じゃん。この状況で無意味に歌い出すような馬鹿じゃないよ」

 かがみんに言われて少し恥ずかしくなりながらも意図をちゃんと説明する。

「ナイスアイデアだったぞそらさん!」

「ありがとうヨッシー。まあざっとこんなもんよ!あたしだってやれば出来るんだから」

 ドヤァとドヤ顔をしながら作戦や討伐を褒められて威張ってみる。すると俊ちゃんが手を伸ばしあたしの頭を撫でた。

「?」

「本当は怖かっただろうなって。オレ達の為にありがとうございました」

 綺麗な笑みを浮かべて丁寧にお礼を言った俊ちゃんにちょっと見惚れながらも笑い返しておく。そして他の四人も口々に礼を言ってくれた。助かった、助けられたと実感して今更になって震えが出てきた。

「あ、そらさん。此処怪我しています」

「え?」

 テッちゃんに左腕を軽く引かれて見てみると半袖から出ている肘の辺りが擦り剥けていた。最初に飛ばされた時に床の摩擦で出来た傷だと思う。認識すると痛くなるもので滲み出した肘に顔を歪めると、次はヨッシーに引き寄せられた。

「そらさん二回も飛ばされて体打ち付けていたよな?痛くないのか?」

 腕を掴まれながら真剣に聞かれて首を縦に振る。でも本当はちょっと痛いと言えば痛い。これ以上心配掛けたくなくて否定したが、溜め息を吐いた順ちゃんにわしゃわしゃと頭を撫でられた。動物じゃねえよ。

「無理しなくていいっつーの。おい火神、そらさんおぶってけ」

「ウス」

「え!?大丈夫だって!」

「いいから」

 順ちゃんとヨッシーに背中を押されてしゃがみ込んだかがみんに背負ってもらう。まさかこの歳になって年下におんぶされるとは…。
 少し恥ずかしくてかがみんの肩を掴みながら背中に顔を押し付けた。

「どうだ?そらさん」

「…どうもこうも、ちょっと恥ずかしいよ。でも視界は高いね。ありがとうかがみん」

「う、ウス」

 ヨッシーに聞かれて顔を上げたが赤くなっているであろう顔を見られたくなくて俯き加減になる。でも視界はいつもより更に高く新鮮に思えた。
 そんなかがみんの服越しに伝わる体温が高くて凄く落ち着いた。ちなみに筋肉も素晴らしく安心感がある。
 照れたままちらっとみんなを見てみると、背負っているかがみん以外の四人に何故か頭を撫でられた。急にどうした。

 そして体育館へ戻った後はリコぴんから擦り傷の処置以外に手厚い応急処置と言う名の全身打撲用マッサージをしてもらい絶叫する事になるなんて知らずに、みんなの会話を聞きながら揺られる背中で目を閉じた。











ナオ様、お待たせしました!
ピンチを救うという事で夢主には今回頑張ってもらいました。ギャグ甘ご希望でしたが、甘の部分は伝わったでしょうか?気に入って頂けると嬉しいです。
素敵なリクエストありがとうございました!

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