SPIRIT WORLD
赤司といちゃつく

【赤司side】

 幾度となく繰り返される探索。その中で確実に皆の疲労は蓄積されているが、探索チームから外れている間に休息や息抜きをする事で事なきを得ている。
 だがそらさんに関しては多少の休息を取っているとは言えど、案内人という事もあって毎回探索に出てもらっている。本人は平気だと笑うが明らかに最初より疲労している様子が見て取れる。

「そらさん。顔色が優れないようですが」

「え?ああ、さっきの探索で見た怪物がちょっと尾を引いてるだけだよ」

 先程までの探索で見た怪物はそらさん以外には巨大な芋虫、そらさんには長方楕円形の体に人の顔が付いた怪物で、全身が膿んだように腫れ血が動く度に吹き出していた事で流石に吐気を催したと話していた。
 オレ達とは見え方が違うそらさんは最初スプラッタな光景は案外平気と話し然程気にしていない様子だったが、限度はあり何度も違う物を見ていれば精神的に辛くなっても可笑しくない。

 今の彼女はその怪物の所為というだけではなく、誰から見ても身体的にも精神的にも参っているように見える。
 オレが声を掛けていたのを聞いていたようで、皆が集まってきた。

「そらちん大丈夫ー?オレが抱っこしてあげるから寝る?」

「大丈夫だよあっちゃん(恥ずかしいし…)」

「確かに顔色がよくないね。何か飲むかい?」

「んー、じゃあ水もらおうかな」

 紫原と氷室さんが心配気にあれやこれやと声を掛けている。
 氷室さんの言う飲食物だが、体育館倉庫の床下から見付けられた物を指している。有白が用意していたアイテムで、彼女に空腹を訴えた紫原の言葉により彼女に教えられ隠されいたそれらを見付けた。空腹が限界に達していた者は我先にと食べていた光景は記憶に新しい。
 しかし極端に少なくないとは言え数に限りはあるので、節約するようにしているがそらのような不調の者は例外だ。栄養は必要なので、それならこれはあれはと桃井や相田さんも混ざってそらさんに尽くしている。

「大丈夫じゃねーなら大丈夫じゃねえって言え馬鹿」

「ごめん…」

「チッ、謝ってんじゃねえよ」

 いつもなら馬鹿は余計と食って掛かるはずの彼女が苦笑して言うのを聞き、花宮さんは苦い顔をして彼女の腕を引き壁際に座らせる。

「ヤマ、ジャージ貸せ」

「オレかよ」

 山崎さんが上のジャージを脱いでそらさんの下に敷く。皆に至れり尽くせりな彼女は苦笑した。

「みんな心配し過ぎ」

「「そらさんは無理し過ぎ」」

「……」

 皆からの一言でそらさんは何も言えなくなったのか黙った。

「オレが膝枕してもいいっスよ!」

「男の膝枕なんか誰が喜ぶかよ」

「ならそらさんの膝枕を…」

「テメェがしてもらってどうすんだ!!」

 黄瀬と森山さんを黙らせる笠松さん。苦労人だなと他人事のように思う。

「じゃあここはうちの緑間が膝枕を」

「しないのだよ!誰が喜ぶ」

「あたし嬉しいよ?」

「なっ…」

 高尾が勝手な事を言って緑間が怒る。だがそらさんの予想外の言葉で緑間は赤面して狼狽えた。絶対そらさんは楽しんで言っている。

 オレはそらさんの元へ行くと右隣へ腰掛けた。

「赤君?」

「肩、お貸しします」

「えっ」

 そらさんはオレを見て目を見張り、その隙に彼女の右手を取るとそっと握った。そらさんはみるみる赤面していき動きがトギマギし出す。

「赤ちん狡い〜」

「お前達では騒がしくて休めるものも休めないだろう」

「「(赤司が近くでも緊張して休めないんじゃ…)」」

 何か言いたげな視線を感じるが、オレは右手を伸ばし彼女の頭に添えるとこちらに体重を掛けさせ肩に頭を寄せさせる。ついでに悪戯心で頭に唇を寄せるとそらさんから少し情けない声が漏れる。

「あ、赤君」

「無理しないで下さい。…肩の力は抜いて」

 困惑したような目と目が合って微笑み返すとそらさんはぎこちなく頷くと少しだけ力を抜く。

「…小さいですね」

「…そ?赤君は意外と大きいね。しっかりしてて大人の手だね」

 握った彼女の手を少し持ち上げてみると、大人と言っても女性特有で小さく線も細い。そらさんは大きさを合わせるように広げて見ており、オレの手は固くて骨張っていて、と観察しながら特徴を述べていく。少しむず痒い。

「そらさんの手は綺麗ですね」

「え〜?普通だよ。今はそこまでだけどカサカサだし」

「いえ。オレと違って柔らかいし、綺麗です」

 そう言って彼女の手を持ち上げれば指先にリップ音を鳴らしてキスを落とす。辿るように指先から指の付け根、手の甲へとキスを降らせていくとそらさんは瞠目しながら息を飲み、耳まで赤くさせながらこちらを見つめた。

 そんな彼女に笑い返し小さな手を軽く握りながら眠るように促すが緊張と周りが煩くて眠れない様子で、一声掛けようと口を開き掛けた瞬間、隣の温もりが消えた。

「オレが抱っこして寝かせるしー」

「うえ!?」

 紫原が横抱きにそらさんを抱き上げており陽泉の皆が集まる方へ連れて行こうとする。

「紫原。強引はよくないぞ」

「はあ?あんただって無理矢理連れてこうとしてんじゃん。うざー」

 それを見て木吉さんが止め、そらさんを横取ると抱き上げながら彼もまたそそくさと誠凛の元へ連れて行く。

「いやいや!オレらがそらさんの面倒見るんで!」

 すると次は高尾がそらさんを掻っ攫い横抱きにして小走りしながら秀徳の方へ。

「そらはオレらのがいいよな」

 そして青峰がそらさんをすれ違い様に俵担ぎに抱き上げ桃井の元へと駆け寄り彼女にそらさんを託す。

「か〜ら〜の!オレ達の方っスよねー」

 一瞬の隙を突いてそらさんを抱き上げた黄瀬が逃げるように海常の方へ走る。

「ちょっとちょっと、みんな乱暴過ぎっしょ〜」

 黄瀬に足を引っ掛け転んだ拍子に投げ出されたそらさんを受け止めた原さんは霧崎の方に連れて行く。

「お宅もそうじゃないっすかー!」

 そんな原さんから彼女を器用に抜き取った津川が正邦の方へ身軽に走る。

「てめーらさっきまで赤司が寝かせようとしてたのを邪魔すんじゃねーよ!」

 根武谷が立ちはだかりそらさんを奪い取ると肩の上に座らせてこちらに戻って来ようとする。しかし各学校がそらさんを争奪するように再度押し寄せてきて揉みくちゃにされており、益々彼女の顔色が悪くなってしまった。

「うっ…」

 根武谷の肩の上で口元を押さえながら嘔吐えずくそらさんが見え、やめるよう声を掛けようとしたがそれより早く虹村さんが声を上げた。

「テメェらいい加減にしろ!!そらさんの調子が更に悪くなってんじゃねえか!!」

 鶴の一声とは正にこの事。はた、と動きを止めた全員がそらさんを見上げると、彼女は真っ青になって言った。

「吐く…うっぷ」

「「まっ待ってえええええ!!!」」

 皆より頭上にいるのでそこで吐かれてしまうと色々とまずい。根武谷にトイレまで連れて行くよう促し相田さんにお願いして介抱してもらう。

「…皆さん」

 そらさんのいなくなった空間でオレが言葉を発するとピシリと空気が固まった。わかっているようだね。

「オレが彼女を介抱するので、次は邪魔しないでもらえますか」

 全員から肯定の意を受け取った。










 胃の中の物を出してスッキリしたのか、幾分顔色のよくなったそらさんが戻ってくる。問答無用に彼女を寝かせ片足で膝枕をすると、そらさんは照れ臭そうに笑った。

「ごめんね赤君」

「いえ。もっと早くに助けるべきでした」

「ううん。みんな心配してくれてるのは伝わったから」

 離れた所で怒られ悄然とする皆を一瞥したそらさんはクスクスと小さく笑う。

「…赤君」

「はい」

「ちょっとでいいから、頭撫でくれる…?」

 おずおずといった様子でオレを見上げるそらさんに小さく微笑み返す。

「勿論です。少しと言わずいくらでも」

 結い上げていた髪は寝やすいように解かれている。その髪を梳くように、眠気を誘い出すように精一杯優しく撫でていると彼女の目がゆっくりと閉じていく。

「赤君の手、あったかいね」

「そうですか?」

「うん…赤君の手、好きだな」

 ドクン。心臓が一度大きく跳ねたのがわかった。そらさんはこちらの気も知らないでそのまま眠りに落ち、暫くして寝息を立て始める。
 皆彼女に心を掴まれていると思っていたが、存外オレも人の事は言えないな。

 薄く開いた唇にそっと指を這わせる。擽ったいのか僅かに唇を震わせた彼女を見て、輪郭を辿るように頬へ、額へと指を滑らせた後、少しでも疲労感が消えますようにと願いながら瞼の上に手を翳し深い眠りを促せるように暗闇を作った。











紫宛様、お待たせしました!
キャラの争奪戦でのイチャイチャとの事で中盤と終盤に入れ込みましたが、イチャイチャっぷりが甘かったですかね(笑)
気に入って頂けると嬉しいです。
素敵なリクエストありがとうございました!

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