SPIRIT WORLD
怪物に好かれまくる夢主を守る

「あーもう!全然手掛かり見付かんないんだけど!!なんなのもう!!」

「そらさん落ち着いて!」

 何度目かわからない探索で手掛かりが全く掴めない中遂にあたしが我慢出来なくなった。キィーッと頭を掻いてボサボサにしているとそれを見たさっちゃんに止められる。
 他のみんなも疲労が溜まっているのはわかるのだが、あたしも疲労から我慢ならなかった。

「クッソ由暗君厄介な事してくれやがってべらぼうめ!」

「江戸っ子?」

 玲央きゅんのツッコミを聞き流し結んだ髪は乱れ苛々したまま、意味もなくってやんでい!と怒っているとたっちゃんがいつの間にか傍にいてあたしの肩を抱く。

「そらさんはずっと出ているから余計やきもきするんだろうね。少し息抜きにオレと話でもしようか」

「室ちーん。別に二人じゃなくていいでしょー?」

 連れられるままに歩き出すとその後ろからあっちゃんが割り込んできて二人で何やら緩い言い合いが始まる。それを突っ込む気にはなれず眺めていると、早速次の探索チームが組まれた。

 行くのは清ちゃん、コボちゃん、永ちゃん、マコマコ、たっちゃんと六人。全員ミックスしてクジで決めたらしいが斬新なチームだなと思った。

「髪の毛直してやる」

「ん。ありがとうアレクさん」

 不意に後ろから声が掛かり振り向くとアレクさんがいた。さっき乱した髪を見て一度ゴムを解いて結び直してくれる。

「よし!これでいいだろ。気を付けて行ってこいよ」

「ありがとうございます!行ってきます!」

 最後に癒しをとぎゅっと抱き着くと嬉しそうに抱き締めてくれたアレクさんのお陰で落ち着きを取り戻し、いざ出発と体育館を出た。










「あ。フライパン忘れた」

「いやあっても意味ねえだろ」

「使う時は使うもん」

 校舎に探索に出てから直ぐ、何か身が軽いと思えば愛用のフライパンを忘れてきてしまっていたのを思い出す。永ちゃんに必要ないと言われるが今まで持っていた物だけあって落ち着かない。

「手が軽いと違和感…」

「だからって何でオレの手を繋ぐんだ」

「だって隣だし」

 並び順は先頭に清ちゃんとマコマコ、次にあたしとコボちゃん、最後尾にたっちゃんと永ちゃんの図で動いているのだが、どさくさに紛れてコボちゃんの手を握ると本人から少し恥ずかしそうに突っ込まれた。可愛いな。
 しかしニヤニヤしていると、急に手に衝撃が伝わり手が離れる。

 吃驚して見てみれば繋いでいた手は後ろにいたたっちゃんに手刀でスパンと一刀両断されたようで、次いでその手はたっちゃんに絡め取られる。

「小堀さんが嫌ならオレが繋いでいてあげます」

「え、いや別に嫌なわけじゃ…」

「オレと交代しましょう」

 コボちゃんが何かを言う前に場所を無理矢理トレードしたたっちゃん。何だ?さっきから凄くボディタッチが多いんだけど。甘えたな時期?

「テメェらうるせえよ。静かに出来ねえのか殴んぞ」

「あーいとぅいまてぇーん」

「殺す」

「申し訳ございませんでした」

 前の清ちゃんに騒がしいと注意されればそこまで煩くしてないもんと捻くれた考えでふざけて謝ると、割と本気の目で振り返った彼の形相が怖かったので即座に謝罪した。

 暫く歩いていると、前方に見える教室のドアが一つ開いている事に気付く。此処は一階で、見た所職員室のようだ。確か今までの教室は何処もしまっていたはずだし前の探索時に入ったとしても出る時に閉めているはずなので、開いているのは可笑しい。
 罠でも調べてみる価値はあるとの判断で、あたしは周りを注視しながらみんなで中に入る。一人永ちゃんが入り口に待機し、ドアが勝手に閉まるなどして閉じ込められないよう押さえてもらっているが、特に何も変わった事がない様子。

「何で開いてたんだ?」

「誰かの締め忘れじゃねえの」

 コボちゃんの言葉にマコマコが舌打ちをして言いながら外に出る。永ちゃんが廊下でドアを押さえながら最後尾のあたしが出ようとした瞬間。後ろに何かが落ちる音が聞こえた。

「んえ!?」

 振り返る間もなく後ろから捕まると引っ張られるままに後ろへと倒れるあたしの体。ドサッと音を立てて倒れ込むと、耳に生温い吐息が掛かる。

 ハァ イイ匂イ 好キィ

 鳥肌が立つ程不気味な声で耳元で囁かれ、あたしに振り向く勇気はなかった。スンスンと髪の匂いを嗅ぐ怪物に全身の鳥肌がこれでもかというくらい立った。

「ぎゃあああああああああ!!!」

「そらさん!!」

 暗がりで相手が見えにくかったようだがたっちゃんが駆け寄ってくるとあたしの顔の真横にある怪物の顔を蹴り飛ばし、あたしの腕を引いて抱き寄せる。

「チィッ」

 盛大な舌打ちをしたマコマコは再度向かってくる怪物をナイフで切り付け、あたしに弱点を聞く。やっと見えた怪物はブクブクの太った体で息の荒い醜い豚のような顔をした怪物。あれが触れていたと考えただけでゾッとした。
 鼻の弱点を伝え難なく事は収まるが、あの気持ち悪い行動にあたしはやや心が折れそうだった。

「気持ち悪い…」

「(今までにないくらいそらさんのダメージ大なんだけど…)」

 清ちゃんはチーンと沈むあたしを見て哀れに思ったのか、優しく頭をポンポンと撫でて傍にいてくれる。しかしあの顔が頭に染み付いて離れない。

 そして可笑しな事に、これ以降もあたしはまるで怪物に好かれたかのように襲われ続けた。

 次の誠凛との探索で。

「いやああぁぁぁあぁああ!!」

「「そらさんんんん!!」」

 愛シテ 僕ヲ 愛シテェェェェ

 床から現れた怪物に足を掴まれ地面とこんにちはした際に背後から後ろに乗り掛かられ、スリスリと腰を押し付けてくる怪物。
 珍しくフリが怒ったような厳つい形相で怪物を蹴り飛ばした時には惚れそうになったよね。

 その次の正邦との探索で。

 我ノ 嫁二 来ラレタシ

「嫌だァァァァァアアア!!」

「そりゃああああああ!!」

 何故か壁の隅に追いやられ壁ドンではなく蝉ドンをされるあたし。蝉ドンがわからない人はググってみよう。
 見下ろされる醜い顔にただただ恐怖だったが、怪物の襟元を背後から掴み巴投げを決めたともっきー最高だった。てか、蝉ドンでプロポーズってどうなのよ。

 そのまた次の桐皇との探索で。

 交尾ッ 交尾ッ 交尾ッ

「ひいいいい!!キモいいいいい!!」

「ヤベェ、マジでキモいんだけど」

 某進撃する巨人のような裸に腰部分に布を巻かれただけの原始的な怪物が現れたかと思いきや、その唯一の布を取り払い内股走りで追い掛けてきた怪物にあたしは当然目を瞑った。後ろから翔ちゃんに目元を覆われ良君に立ちはだかってもらい、他三人が全裸で駆け寄ってくる怪物に吐きそうになりながらも撃退した。

 そんなこんなで、何故か急に怪物に好かれ襲われ続けているあたし。怪物に狙われ易いのはそうなのだが今までのはあたしを消しにというか殺しにきてるのに対し、今の怪物はあたしをそういう目で見て襲ってくる。理由が全くわからないままみんな変態怪物を見て気持ち悪がっていたが、あたしはその倍以上に精神的大ダメージを食らっている。

 体育館に無事戻ってきて尚、襲われ続けたダメージは簡単には消えずまるで某ボクサーのように座って白くなっているあたし。襲われていた時に言っていた怪物の言葉など詳細を伝える気にもならなかった。

「そらさんが結構ヤバいかも…」

「あれだけ迫られれば精神的に堪えるのは当然だろうな」

 心配してくれているのかそうでないのかはわからないがコソコソ話しているのにあたしは気付きながらも、その会話に入って行く気になれずにいると不意に隣に誰かが来る。顔を上げるとたっちゃんで、あたしの右隣に腰を落とすとそっと右手を取って指を絡める。

「オレが怖い?」

「…んーん」

 手を握ってからそう聞く彼に思わず笑ってしまった。普通先に聞かない?

「理由はわからないけど…次はちゃんと守るから。もう怪物に指一本触れさせない」

 安心させる為に優しく甘い声で囁きながら言う彼を見つめると、見えるのは片目だけだがふわりと綺麗に微笑んだ。イケメンは狡いよなぁと思いながら、そう改めて言われると安心してしっかり頷き返す。
 そうだ。ただ襲われているだけじゃなくてみんなちゃんと助けてくれるじゃんか。心配する事はない。あたしは少しでも足を引っ張らないように反応を早くしたり怪物の弱点を素早く見付けたり、自分に出来る事をしよう。想定外の事続きで主旨を忘れ掛けていたが、たっちゃんのお陰で気持ちが少し切り替わった。

「ありがとう、たっちゃん」

 お礼を伝えると彼は優しく笑って一つ頷いた。

 そして再度探索。赤君が配慮して一度行くのを止めるか聞いてくれたが、もしそれでみんなが危険な目に遭うのは嫌だったので行くと答える。
 探索チームはまたクジ引きで岩ちゃん、清ちゃん、マコマコ、たっちゃん、ハヤヤとなる。

 探索に出て二階の別館の方へ向かい、別館に差し掛かる所でまた怪物が現れた。

「うわっ!?多い!!」

 ハヤヤが吃驚して声を上げるのも無理はない。今回は一気に一緒の姿をした五体が押し寄せあたし以外の五人が相手をする事になった。

「全部鳩尾に靄がある!」

「了解!」

 流石というべきか岩ちゃんとたっちゃんは素手で倒し、ハヤヤはバットで他二人はナイフであっという間に倒した。

「呆気ないッスね!!」

「ああ。コイツら本当何処から湧いてくるのか…」

 ハヤヤと岩ちゃんが消えていく怪物を見ながら会話しているのを聞いていると、目の前に何かが落ちてきた。

「わっ!?」

 またこのパターンかよと思いそれを見れば、先程の怪物と同じ怪物でニタリと笑うとあたしに手を伸ばす。

 オレト 永遠二

 あたしが一歩下がるより早くグイッと後ろに腕を引かれた。トンと背中に当たるのは固いしっかりした胸板で、怪物は離れたあたしに少し目を見開いた後、前方後方同時の攻撃に目をひん剥いた。
 ハヤヤから奪ったバットを背後から鳩尾に突き刺した清ちゃんと、伸ばした腕を蹴り上げたたっちゃん。見事なコンビネーション。

「指一本触れさせないって約束したからね」

「何回も同じ手を食うかっつーの。撲殺すんぞ」

 清ちゃん、もう殺っちゃってます。
 消えていく怪物に安堵しそういえばと顔を上げると、背後にはマコマコがいて未だあたしの腕を掴んで支えてくれている。

「マコマコ…ありがと」

「ボケッとしてんじゃねえよ。バァカ」

 コツンと頭頂部を叩かれ腕を離された。暴言は多いけどちゃんと助けてくれる辺り、照れ屋さんなんだからと心の中でいじっていると睨まれた。何故わかった。

「二人もありがとね。みんな怪我ない?」

「ああ」

「そらさんは?」

「平気」

 最初は何にも手掛かりはないし理由不明で襲われるしでイライライライラしていたけど、ちゃんと守ってくたり協力してくれるみんながいる事を再確認出来たので大分落ち着きました。一人で暴走してごめんね。

「さてと。気持ちも切り替わった所で探索続けよっか」

「可笑しかったのお前だけだけどな」

「シャラップ」

 仕切るようにあたしは言うのをマコマコは鼻で笑って馬鹿にするが、それくらいの事ではあたしは怒りませんよ。シャラップって言っただけで怒ってません。
 あたしが意気揚々と別館へ一歩踏み出した時、今では嗅ぎ慣れた腐臭が鼻につき足が止まる。

 オ布団 用意シタヨ

 曲がり角からヌッと姿を現したのは、桐皇と回っていた時に遭遇した全裸怪物二号。あたしはそれを見た瞬間白目で、やっぱり気持ち切り替えられないわと真逆の事を思った。

 気絶しそうなあたしを脇に抱えた清ちゃんとみんなは逃げるように走り出し、追い掛けてきた怪物にマコマコがキモいなど暴言を吐きながらナイフやバットを投げまくっていたのを、途中で意識を飛ばしたあたしは知らず気付けば無事に体育館にいてもう外に出たくないと膝を抱えた。

 それを赤君やあっちゃんに慰められるのは別の話。











ゆあ様、お待たせしました!
宮地花宮氷室贔屓目でしたが、ご希望に添えているでしょうか。変態怪物の見過ぎで死にそうな夢主書くの楽しかったです(笑)
気に入って頂けると嬉しいです。
素敵なリクエストありがとうございました!

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