SPIRIT WORLD笠松とほんわか甘
「いって!」
「あ、ごめん」
只今そらはゆっきーの治療中にございます。何故治療中かと言えば、先程の探索でゆっきーがあたしを庇って肘を擦りむいたからです。擦り傷だけでよかったけど、軽い怪我でも消毒液って滲みるから、ゆっきーは痛みで腕を引いた。わかるよその気持ち。
あたしは容赦なくトントンと消毒液を染み込ませた綿を当てていき、少しまだ出血があるので絆創膏を貼っておく。
ちなみに女子が苦手な彼に普通の触っていると思われるかもしれないが、一切触れてませんよ。
責任取って治療するって言ったら真っ赤な顔でいらないと拒否されたが、それも何だか嫌でドスを効かせてさせろって脅したら素直に頷いてくれたので今に至るわけですな。
いやぁ、マコマコとか峰さん真似てみたけど案外あたしなんかでも効くもんだね。
「でもさっきの笠松先輩とそらっちの息の合い具合ヤバかったっスよ!あーゆーのって阿吽の呼吸っていうんスよね!」
「おー。きー君そんな難しい言葉で知ってたんだ!偉いね!」
「ちょ、馬鹿にし過ぎでしょ!?」
きー君がやや興奮気味に話すのは先程の探索での事。うさぎくらいの大きさのいっぱいのダンゴムシ型おじさんがわらわらやってきた時には絶叫したよね。みんなにはただのダンゴムシに見えたようだけど、それでも大きいそれを見て青ざめていたので気持ち悪かったんだと思う。きー君一緒に叫んでたし。女子か。
本来ならあたしも逃げてるけど、そのおじさんの顔が酔っ払いみたいにニヤニヤしてあたしの足元に群がってきた時に気持ち悪過ぎてキレちゃって。ああいうのってよくあるよね、「何でこんな所に虫がいるんだよ!!ああもう地に還れ!!」とか怖いのにキレちゃう事。え?ない?
まあそれがあってフライパンで滅多打ちにしたり振り回してヒットさせてたりして暴走していたらバット持ってたゆっきーも参戦してくれて。全部胴体の腹側が弱点だったのでもう他の四人が引いて何も出来ないくらい二人で暴れまくって、生還を果たしたんです。
きー君曰く、その時のあたし達は息ぴったりで背中合わせに互いを援護しながら退治していくというミラクルを起こしたので、興奮したように話してたんです。
「よし!オッケ」
「…悪いな」
治療という簡単な手当てが終わりゆっきーは捲っていた袖を戻す。
「ゆっきー助けてくれてありがとね」
「別に大した事はしてねえよ」
「んーん。でもありがと」
「…おう」
言えなかったお礼を告げると少し恥ずかしげに目を逸らしながら頷くゆっきー。かわゆいのう。
「笠松先輩とばっか狡いっスよ!オレとも話を」
「あたしは今ゆっきーとお話ししてるんですぅー。きー君は後でね。はい向こう行って」
「ええ!?酷いっス!!」
「そらさんオレは!?」
「何で自分はいいと思ったのか知らないけど向こう行ってて」
「ガーン…」
「コボちゃんハヤヤ宜しく」
「はは…わかりました」
絡んでくる二人を遠ざけゆっきーがもたれる壁にあたしももたれる。勿論ぴったり隣とかではなく一人分空けてね。意地悪したかったけどそれで離れてちゃったら嫌だし。
「…オレに何の話が?」
「ん?別に大した事はないよ。ただゆっきーとお話ししてないなと思って」
そう言うとゆっきーは少しこちらに向けていた顔を気まずそうに前に戻した。
「ゆっきーは何で女の子が苦手なの?」
「苦手っつーか、どう関わっていいかわかんねえっつーか…」
「テンパるんだね。わかるよ。目の前に好きな芸能人来た時にテンパり過ぎて「ヤバいマジカッコいい!!」しか言えなかったりするもんね」
「いや、ちょっと違うような…」
そんな感じでどうでもいい他愛ない話をしていたらゆっきーは少しずつ肩の力を抜いて話せるようになってきた気がする。もうちょっとテンパるイメージあったけど、まあそれは同年代ではなくて少し歳が離れたあたしだからという事にしておく。
「さっちゃんやリコぴんとは話してないけどあたしとは話せてるんだし、これから少しずつ慣れていけばいいと思うよ。ところで好きなタイプは?」
「……真面目な奴」
「あ、じゃああたし真面目だからタイプ入ってんね!」
「どこが!?」
「えっ!?酷っ!!」
突然振った話に大分間を空けてから答えたゆっきーの回答は、本気で自分も当てはまると思っていたので否定され中々のショックだった。
「あたし真面目だよ!そりゃふざける時はふざけるし下品な事も言うけど」
「認めんのかよ」
「細かいししつこいって言われるけど、やる時はやるし真面目キャラだよ!!」
「真面目な奴は自分で真面目って言わねえよ!!」
おおう、中々のツッコミだぜゆっきー。だがしかしあたしのライフはもう0に等しいぜ…。
さっきの森りんではないけどガーンだよ。あたしが本気で落ち込み床にごろりと倒れるとゆっきーが焦った。
「あーあ、可哀想〜」
「うっ、うるせえよ!!」
みんなこのやり取りを見ていたようで翔ちゃんがからかうようにゆっきーに言い、彼は言い過ぎたと少なからず思っているようでぐっと言葉を飲んだ。
「クッ…ゆっきー中々やるな…だがあたしは負けない!」
「誰だよ」
あたしが腕で体を支えながら重い体をゆっくり起こすとどこぞのアニメだよとか漫画の読み過ぎだとか所々聞こえる。うるせえよ。
ゆっきーはふざけるあたしを見て大丈夫だと判断し突っ込んだ後前のめりになった体勢を戻す。もうちょっと心配してくれよ。
「まあでも、あたしとここまでコミュニケーション取れたら他の女の子でも大丈夫だよ!前向いて生きてこうぜ!」
「そのドヤ顔と親指ムカつくんだけど」
あたしが親指グッをしていると無性にへし折りたくなった顔をしていた。やめて。でもあたしに簡単に触れないのは知ってるから身の安全は保障されている。フフン。
でも冗談抜きで本当にあたしとここまで絡めたら後は慣れで大丈夫だと思うけどな。
あたしとゆっきーは再度壁に背を預け一息つく。ゆっきーツッコミ上手だからあたしもついボケちゃうんだよね。
本来ヒロインなら自分の所為で怪我したゆっきーを思って悲しんで「気にすんな」って慰められて、でもでもとうだうだしてると頭撫でられて「本当に大丈夫だから。擦り傷なんて怪我のうちに入んねえよ」とか言われてナチュラルに頭撫でられた事で、あれ?女に普通に触れて関われてるよ!みたいになってあたしだけ特別に触れるし関われるみたいな少女漫画チックな展開にしていくべきだろうけど、あたしにその技術はない。この物語の主人公なのにね。可笑しいね。誰の所為だろう。
「そうだゆっきー」
「?」
「今度から守ってくれる時は怪我しないように守ってね。そうじゃないとあたしの罪悪感が半端ないから」
思い出したように話し掛けたあたしの言い方は狡いが要は怪我しないようにしてねって事が言いたかった。みんなもそうだけど絶対無理するじゃん。んでしなくていいって言っても守ってくれるじゃん。みんなだってあたしが庇って怪我でもしたら怒るし悔しい顔するし。
ゆっきーはそれを聞くと一瞬瞠目したが、少しバツ悪そうな顔をしてから苦笑をして頷いた。
「約束する」
うわ。落ち着いたあの声で言われたからちょっと鳥肌立っちゃった。カッコいいよゆっきー。でもこれを言うと真っ赤に照れてどっか行っちゃうかもだから言わないでおこう。
もう少しゆっきーの隣いたいしね。
「でも」
「ん?」
「確かに怪我はしたが…オレからすればそらさんは怪我なくてよかった、と…思ってる」
ああもう。狡いわぁ狡いわぁ!
そういう不意打ちの言葉が一番きゅんとくるんだよ!!もう!ゆっきーも隠れプレイボーイかよ!!
あたしが悶えて顔を両手で覆い体操座りしていた膝に顔を埋めると隣ではゆっきーが首を傾げていた。天然って怖い。
それを見て待てを食らっていたきー君と森りんがもうお話し終わりと突っ込んできてもみくちゃにされてんやわんやになったので、折角の休憩なのに疲れてしまった。
あんたらはいいけどあたしはまたこの後探索なんだかんな!とか思いつつこんな時間が楽しくて仕方がないそらでした。
もみじ様、お待たせしました!
私レベルの文才ゆえこんな事に…すみません!
ほんわか甘に仕上げる為ホラーや戦闘シーンをなるべく省きましたが、実は息ぴったりで戦ってた時が一番二人が男前だったりします。
こんな話でも喜んで頂けると幸いです。
素敵なリクエストありがとうございました!
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