SPIRIT WORLD
秀徳と性転換夢主

【木村side】

「へいへいほー」

「ほー」

「へいへいほー」

「ほー」

「煩ェ黙れ焼くぞ」

 現在秀徳とそらさんで探索中。慣れてきたのもありえらくお気楽に歌いながら歩いているそらさんと高尾に注意するのは宮地。確かに気を抜き過ぎだな。
 先頭を歩くオレと大坪はそれに呆れつつ苦笑しながら後ろの二人を一瞥すると注意されて少ししょげていた。それを後ろから呆れた目で見下す緑間。みんな通常運転だ。

「ねーそらさん。体格偏差値っていうの知ってる?」

「知らない」

「身長と体重とか入れて簡単に算出してくれるんだよ。んでね、何が面白いかって男体化とか女体化した時の身長と体重も教えてくれるんだぜ」

「ヘェ〜」

「そらさん年24歳だよな。身長いくつだっけ?」

「164cmだよ」

「じゃあ……そらさん男体化したら178cmだな!」

「計算出来んの?凄ーいタカ君!」

 注意されたにも関わらず会話を続ける高尾とそらさん。その話題に少し興味がありオレも聞き耳を立てて歩く。無事に帰れたらオレも検索してみようなんて。
 にしても178cmか、男にしては高い方と言えば高いな。オレ達と比べたら目立って高いわけじゃねえけど。

「もし男体化したら俺よりちょっと高くなんねー」

「ねー。見下ろしてやんよ」

「ヤメテもう充分普段から見下ろされてっから」

 高尾がケラケラと笑うとそらさんも確かにみんな高いもんねと笑って周りを見上げた。するとオレ達が通り掛かった教室から急に煙が溢れてきて、モワモワと足元に纏わりつくように流れてくる。

「何だ!?」

「煙!?」

 みんなが身を寄せ固まって様子を窺っているとそらさんが何かに気付いた。

「あ!怪物発見!」

 指差す方を見れば煙が溢れてくる教室に科学者のような格好をしたオッサンがいて、しゃがみながら鍋から溢れる煙をパタパタと団扇で扇いでこちらに送ってくる姿。そらさんには片目眼鏡をしたゾンビの顔に視えるらしく顔を歪めていた。

「チッ!靄は!?」

「んっと…鎖骨辺りかな?」

 宮地が舌打ちをしてそちらに近付こうとするがそれに気付いた科学者は慌てて何かを鍋に投入し更に溢れてきた煙を必死に扇いでこちらに送ってきた。辺りが煙に覆われる。

「ゴホッ煙い!!」

「ゴホッゴホッ…ま、前が見えん…!」

「あんまり吸っちゃ駄目だよ!すぅっゲッフォオオ!!」

「「いやお前がな!!」」

 高尾と緑間の声が聞こえるくらいで周りが見えない程に煙が充満した。吸うなと言うそらさんは自分が一番吸い込んでいたので宮地とオレがついツッコミを入れてしまう。しっかりしてくれ。

「うっ…!」

「そらさん!?」

 不意に呻く声が聞こえて大坪が声を荒げた。ただならぬ雰囲気を感じ取りみんな上着や手で扇いで煙が晴れた頃、そらさんがいた場所にはそらさんが蹲っている。

「そらさん!…ん?」

「オイしっかり…、?」

 高尾がそらさんの背中に手を添え声を掛けるが違和感を感じたかのように疑問符を浮かべて、緑間も声を掛けるが同様に首を傾げた。オレ達もそらさんを見下ろして違和感。
 何か…髪の毛短くなってね?

「ん゛ん…ゴホッ…何か体が重、い…?」

 煙を吸ったので咳払いをしたそらさんが言葉を発するが、何故か声が低い。あれ?そらさんの声こんなんだっけか?そらさんも疑問符を浮かべて顔を上げると、顔立ちもそらさんそっくりだけど男っぽい……え?

「え」

「…ええええええええ!?」

「え、待って何…えっ!?」

 声を上げた高尾にそらさんは立ち上がり何が起こっているんだと窓ガラスに映る自分を見て瞠目した。

「なっ…なんじゃこりゃあああああ!!?」

 何処ぞの刑事だよ。










 その後暫くその場に留まって状況整理をした。怪物は煙が晴れた頃にはもうおらず、そらさんは高尾と冗談で話していた通り男体化しちまったというわけだ。それ以外の異変はない様子。あれフラグだったんだな。
 身長は高尾より少し高いくらいで、計算とは違い180cm以上はあると思われる長身。細身だがヒョロヒョロなわけでもなく普通体型の宮地みたいな髪型で…うん、普通にイケメンの部類だな。不思議な事に服まで男性サイズ仕様になっているから驚きだ。どんな万能の薬だよ。

「あの煙の所為だ…なんであたしがこんな事に」

「ブッフォ!!ちょ、そらさん自分の事あたしっていうのやめてくんない?た、耐えらんねえ…っ!」

「他人事だと思ってコンニャロ」

 笑いを堪える高尾に青筋を浮かべたそらさんは深い溜め息を吐き出す。

「取りあえず体育館に戻るぞ。現状整理をしたい」

「だな」

「タカ君小さいですねぇ〜」

「やめろし!」

 大坪の声に宮地が頷く傍ら、よしよしと高尾を撫でるそらさんはさっきの仕返しのつもりなのか。

「さっさと行くのだよ」

 緑間が痺れを切らしそう言った瞬間、緑間の頭上から何かが落ちてきた。それは小さな子どもで緑間の背中にしがみ付くとよじ登って大きく口を開いた。

「真ちゃん!!」

 怪物だと認識するのに時間が掛かってしまったが正体が視えているそらさんは緑間の右手首を掴み引くと、右手で拳を作り背後にいる子どもにパンチを繰り出す。メリッと顔にめり込んだ拳を振り切ったそらさんはバランスを崩した緑間を片手で軽々と支え、自分の後ろに隠す。

「大丈夫?」

「あ、ああ…問題ないのだよ」

「そっか。よかった」

 振り返って安否を確認したそらさんに緑間はやや挙動不審に肯定したが、その後の安心したような優しい微笑を見て緑間が固まった。お、おお…イケメンだ。
 そして落ち着きなくカチャカチャと眼鏡を押し上げて顔を背けた緑間のツンデレっぷりにいつものように笑い掛けたオレだが、周りの異変に気付いて固まった。

「「「(イケメン…)」」」

 お前らもかよ!!
 口元を覆ったり胸を押さえたり、ときめいちゃってんじゃねえか。吊り橋効果だろ、落ち着けお前ら。相手はそらさんだけど今男なんだからな。つか戻んのか?コレ。

 一方飛ばされた怪物は床を転がり険しい顔をして動物が警戒するように四本足で立ちぐっと踏み込む。

「うっわ、怖!」

「何に視えてんの?」

「小さい鬼みたいな顔した子ども。靄は首だよ」

 そう言った瞬間に飛び掛かった子どもに次は緑間がそらさんを引き後退して、大坪が宮地からバットを受け取り子どもの喉を目掛けてスイングした。
 グギャッと鈍い音が響き弾き飛ばされた子どもは金の粒子を飛ばして消えていった。

「ふう…」

「お疲れ。さんきゅ大坪」

「真ちゃん大丈夫?」

「問題ないのだよ」

 宮地が大坪に声を掛け高尾も緑間に声を掛けるが眼鏡を押し上げて問題ないと答え、緑間はそらさんを見ると視線を彷徨わせながら礼を言う。

「助かったのだよ…ありがとうございました」

「ん。怪我なくてよかった。噛み付かれそうだったからあたしも吃驚したけど、真ちゃんが一番吃驚してるよね」

 何事もなくてよかったとポンポン肩を叩くそらさんは、ニッとはにかんで笑う。

「いやぁ、それにしても男になったからか力が女の時より有り余ってるみたいでさ。さっき渾身の力込めたんだけど予想以上に飛んで吃驚したよ」

 確かにかなり飛んでたよな。こうも女と男で力が違うのかとわかった瞬間だった。

「よし。これを機に怪物を片っ端から片付けていこうか。いつ戻るのかそもそも戻れるのか知らないけど」

「いや、戻れなかったら困るんじゃねえのか?もうちょっと深刻そうにしても…」

「体育館に戻るのを優先するべきだ。探索中に副作用とか他に何か起きても困るしな」

「え〜」

 やたらとやる気満々なそらさんにオレは無理をしなくてもと声を掛けた。次いで宮地も体育館へ戻る事を促すと不満気な声を漏らす。

「だって折角男になったのに…この力を今使わずして何になる!!」

「いや無理に使わなくていいから」

「自分の身を案じるべきなのだよ」

 意気込むそらさんに突っ込む高尾と緑間。そらさんは自分の気持ちを聞き入れてくれない周りにやれやれと首を振った。

「仕方ない…このまま体育館に戻ってさっちゃん達口説く事にする」

「しなくていいから。轢くぞ」

 下心あり過ぎか。心も男になってんのかオイ。
 そんなそらさんにみんなが溜め息吐きつつ並んで戻ろうとした瞬間。

「へっくし!!」

 不意にそらさんがくしゃみをした。瞬間、ボンッと音を立ててそらさんが元に戻った。

「あ」

「おお!戻った!」

 元の姿に戻ったそらさんは目を見開いて吃驚して固まっていたが、早々に戻ったそらさんにオレ達一同は安堵した。

「ええ…もう戻っちゃった…」

 そらさんだけは心なしか残念そうだったが。
 その後体育館に戻り経緯を話して暫く安静にさせて様子を見たが、体調面などに悪影響はないようなので安心した。

 女性陣を口説けなくて残念だと肩を落としたそらさんにオレ達はやっぱり呆れた。











Ricota様、お待たせしました!
秀徳相手で夢主が性転換という事で主人公のイケメンっぷりが少なめでしたが、書いていて楽しかったです!宜しければ続編という形で後日リクエストにお応えするので、そちらで更なるイケメンっぷりを堪能してもらえればと思います!
余談ですが『もしも夢主が子どもになったら』の怪物に再登場してもらいました。こちらは番外編なので繋がりはありませんが(笑)
素敵なリクエストありがとうございました!

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