SPIRIT WORLD
虹村と黄瀬に甘やかされる

「貧乳貧乳ってうるっさいんだよ!!何でもかんでも乳を話題に出すんじゃねえよ!!」

 探索後の休憩中。峰さんが暇だからと言って倉庫にあったバスケットボールを二つ持ってきて遊んでいたかと思えば、それをさっちゃんと話していたあたしの胸の前に持ってきて巨乳になったとほざいてきた。小学生かお前は。
 「これでさつきと同レベルになったな」とさっちゃんにもセクハラしたのであたしが怒り言い合いになったが、乳が小さいくせにだの貧乳が何言っても説得力がないだの言い返してきてブチ切れたあたしです。

 その騒ぎに何だ何だと集まってきた人は別に気にしない。だが敵は他にもいた。

「女は乳があってナンボだろ。男としてはピー(放送禁止用語)やって欲しいじゃん」

 灰君の場を選ばない言葉にさっちゃんとリコぴん、その他純真ボーイ達が赤面し、あたしは白目剥いた。

「風俗行け!!!」

「「ホブッ!!!」」

 全力投球でバスケットボール二個を二人に顔面に投げ付け、怒り心頭のあたしはズンズンと壁際に向かって歩いて行った。そしてみんなに背を向けて体育座りで膝に顔を埋めて拗ねモード。ふんだ。
 確かに乳がなければ出来ない事はあるかもしれんが、なくてもいい面はある!と思いたい。って何考えてんだあたしは。

 さらっと流せばよかったんだけど、つい。きっと疲れているからだ。疲れているから余裕がなくなったんだ。あたしは悪くない。これ暗示。

「そらっち!」

「何だねきー君や」

「オレは形が大事だと思うっス!」

「殴られに来たの?」

 ポンと頭に手を乗せられて顔を上げれば笑顔が眩しいきー君がいて、慰めに来てくれたのかと思ったのも束の間、素敵な笑顔でそう言われ拳を握ったのは言うまでもない。
 それを見てきー君は肩を飛び上がらせて否定する。

「ちちち違うっスよ!そらっちとお話ししに来たんス!」

「慰めてくれなくていいよ。もう気にしてないし。事実だもん」

「めちゃくちゃ気にしてるじゃないスか」

 そう言うときー君はあたしをひょいと持ち上げ、みんなの方を向いて座らせると左隣に座った。すると視界に自分より長身の峰さんと灰君の頭を赤君がギリギリと掴んで持ち上げながら制裁を加える姿が入り、先程まで二人に怒っていたのに容赦ない制裁を加えられ哀れで不憫に思い同情した。悪いのは奴らだけど。ざまあだけどちょっと可哀想。

「アイツらの言う事一々気にしてたら常に苛々する事になるぞ。馬鹿はほっとけ。罰は責任持ってオレらがきちんと与える」

 あんな感じにな、と赤君達の方を顎で指し示しながらにじむーも近寄って来てきー君の反対に座る。そしてくしゃくしゃと頭を撫でられ、やや粗い手付きでも優しさを感じて自然と目が細まる。気持ちいい。

「でも青峰っちもそらっちを元気付けたかったんスよ。そらっち疲れた顔してるから」

「灰君は?」

「ショウゴ君はただ自分の欲望を言っただけです。クソですクソ」

「話し方違う怖い」

 その配慮はわからなくもないけど灰君の話題振ったら気温が下がった気がする。きー君の闇を垣間見た気がする。怖い。

「でも疲れたなら言って下さいっス!膝枕ならいくらでもしてあげるっスよ!なんならぎゅっと優しく抱き締めてもいいっス!」

「黄瀬は下心ありそうだからやめとけ」

「なっ!?そんな事ないっス!酷いっスよ虹村先輩!」

 この二人の絡みを見るのは貴重だと思うのはあたしだけですか。あたしは左右であたしを挟みやり取りする二人を見比べながら、にじむーにも弄られるきー君が面白くて思わず笑う。
 二人はそれに気付くと目を丸くさせた。

「もー!虹村先輩の所為でそらっちに笑われたじゃないっスかー!」

「いや。お前結構何処でも笑われてんぞ」

「み、みんなだけっスよ!此処にいる人達だけ!街に出れば女の子達が近寄って来るんすから!カッコイイっていつでも言われるんスから!!」

「自慢かモデルさんよォ」

「此処で自慢は頂けんのォモデルさんよォ」

「そらっちまで!?」

 何で此処で自慢入れたんだこのデルモ。普段疎ましく思ってるくせにこのデルモ。モテるのは自他共に認める事だとしても此処で自慢すんじゃねえよ。
 にじむー寄りのあたしにショックを受けたきー君に、あたしは笑いながら冗談だと頭を撫でると抱き着いてこようとする。

「その飴と鞭が堪らないっス!」

「やめろ」

 あたしの肩を引き寄せて避けさせたにじむーはきー君の顔面を押し返す。情けない声を出して顔を押さえるきー君の扱いは何処でも可哀想だ。でもめげないきー君が可愛い。
 にじむーは引き寄せたまま自分にもたれ掛からせるようにあたしの体重を自身に預け、あたしの頭を抱いて肩に乗せながらポンポンと優しく撫でる。

「?」

「このまま休め。肩ならいくらでも貸してやる」

「狡いっス!オレもそれやりたい!」

「えっ。きー君そっち系?」

「何がそっち系!?違うっスそらっちに肩を貸すの!!」

 なんと言う事でしょう。にじむーが男前過ぎて吐血しそう。言う事する事イケメンですねご馳走様です。
 きー君の発言が意図している事は当然わかるが、口元に手を当てて揶揄を投げ掛けると面白いくらいに反応してくれるからいい。からかい甲斐がありますなぁ。

「お前じゃ煩くて眠れやしねえだろ」

「子守歌歌うっス」

「静かに寝かせて下さい」

「敬語やめて!」

 とことんからかっていると楽しくて無駄な力がいい感じに抜けたのとにじむーのリズム感のいい頭ポンポンでうとうとし出す。あたし本当よく寝るよな此処に来て。
 段々体を預ける重さが加わっていくのを感じてか、にじむーはそっと瞼の上を頭を撫でていた手で覆い暗闇を作ってくれる。そしてあたしの右手を彼の大きく固い右手が取ってそっと握った。ああ寝る。これ寝る。

「むぅ…今更そこ代わってくれって言っても代わってくんないんスよね」

「当たり前だ。オレが寝かし付けてんだよ」

 あたしは子どもじゃないよ。そりゃ喧嘩買ったり拗ねたりしたけど。きー君とにじむーのやり取りを目を閉じながら聞いていると、あたしの空いている左手が大きな温かい手に取られる。
 そしてハンドマッサージが始まった。恐らくこれはきー君の手だ。

「ハンドマッサージって、強張った筋肉を解す効果とか色々あるらしいんスよ。オレもよくモデルの仕事の合間にやってもらう事あるんス」

 道理で気持ちいいわけだ。されてるのを見て覚えたんだろう。ここでもコピーですねきー君や。流石ッス。

「そらっち、気持ちいいっスか?」

「ん…きもちい…」

「………」

 気持ちいいか聞かれたので素直に答えると何も応答がなかった。気持ちいいならいいや、みたいな気持ちで集中でもしてるんだろうか。嬉しそうにしてるといいな。

「(そらっちの今のヤバかったァァァ!!オレの中のオレが暴走するところだったァァァァァ!!そらっちかんわいいいいいい!!!抱いて!!!)」

「(気持ちはわからんでもないが落ち着け黄瀬。目が血走ってんぞ)」

 あたしの左隣でマッサージをしながらも肩をプルプル震わせサイレントで悶えるきー君とそれを呆れた目で見守るにじむーの様子は、目隠しされて目を閉じているあたしには当然わからなかった。直ぐ寝付いちゃったしね。

 にじむーの肩を借りて寝てきー君のハンドマッサージのお陰か、起きたら体が楽になっていてハンドマッサージって凄いんだなと感心した。後でちゃんと教えてもらおうかな。
 すると何故かきー君はやや興奮気味でその後もハンドマッサージをしてあげると言いに来る事が多くなり、その度ににじむーがきー君にチョップをしに来るという謎の光景が続いた。

 マッサージはリコぴんに教えてもらおう。何かきー君勢い怖いし。











麻美様、大変お待たせしました!
リクエストの二人に甘やかされるという事でしたが、如何でしょうか!この二人の絡みが意外にないなと思ったので、勝手に主将呼びではなく先輩呼びにしちゃいました。気に入ってもらえると幸いです。
素敵なリクエストありがとうございました!

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