SPIRIT WORLD思わず夢主を愛でる
【大坪side】
山口そらさんは不思議な人だ。最初こそ誰かも何者かもわからず異質な存在に見えていたのに、今ではオレ達の中に溶け込んでいる。それが不思議と本当は彼女も怪物の仲間なのではないか、オレ達が操られているのではないかなど思わなかった。それは彼女の頑張りを近くで見てきたから、信用してもいいと思うようになったんだろう。
オレから見た彼女は、オレをツボちゃんなんて呼ぶ奴は今までいなかったし見た目からそんな呼び方をしようなんて発想が周りにはなかっただろうから、如何にも可愛らしいそのあだ名を付けたのでインパクトがあった。
大人の女性だがノリがよくあどけない様子で(言い方次第では幼稚な面を持つとも言う)、表情がコロコロ変わる。見ていて飽きないと思う。年長としての威厳も何もないが…おっと、これは本人には秘密だぞ。
そんな彼女は今ではみんなの中心になっている。案内人とはいえ赤司や今吉みたいに特に作戦を練れる頭脳派というわけではない為常に率いているという意味ではないが、みんなが集まる中心にはそらさんがいた。
そして今も、探索から帰ってきて直ぐの為桐皇のマネージャーに肩揉みをしてもらい休憩している。その周りには高尾や青峰、黄瀬といったそらさんと同じ系統の奴ら。つまり、ノリがいい(言い方次第では煩い)奴ら。
「そらっちそらっち」
「ん〜…なーに」
「オレってカッコイイっスか?」
「頭打ったの?」
「安心して下さい。きーちゃんの通常運転ですよ」
「そうだった」
「何か酷い!」
桐皇マネージャーのノリまでもがそらさんのように…。まあそれはさて置き。黄瀬がそらさんの前に座ると突然(認めたくない事実ではあるが)自意識でナルシストのような事を言い出し、みんながシラッとした目を向けた。いつもの対応に不満の黄瀬が理由を述べる。
「だって言って欲しいんスもん〜。そらっちって思っててもあんまり言わないタイプっスよね!冗談みたいには言うけど本気で真剣には言えない、みたいな」
「あー、それはあるかもなー」
同意する高尾にそらさんは口をへの字にした。
「お前、損するぜ」
「何なんだお前は」
上から目線でキリッとしながら助言するように言った青峰にイラッとしたように青筋浮かべるそらさん。
「ほらほら、練習がてら言ってみて下さいっス」
ずいっと顔を近付けた黄瀬に少し仰け反ったそらさんは、近い顔を押し返しながら離した。
「……ハイハイカッコイイカッコイイ」
「あしらわないで!」
「もー。あたしに褒められたところで何もないよ」
黄瀬の顔が潰れるのも気にせずグイグイと押し返したそらさんが早口に棒読みで言った。カップルのような会話にも聞こえなくもないが、まだ不満な様子の黄瀬にそらさんがふいっと顔を背けた。
しかし、髪の間から見えるそらさんの耳はほんのり赤く、頬も此処から見てもわかる程に赤らんで見えた。誰が見ても照れている様子に、単純にオレも可愛いと思ってしまった。
…思ってしまったって言い方は失礼だったか。
「「(可愛い…)」」
「…んもー!!可愛いっスねー!!!」
「!!?」
「きゃあっ!?ちょっときーちゃん!危ないよもう!」
桐皇マネージャーと高尾の動きが止まり、黄瀬も少しワナワナと震えていたかと思えば顔を上げてそらさんに勢いよく抱き着いた。
急な事に吃驚したそらさんは支えられずそのまま後ろに倒れ、背後でマッサージをしていた桐皇マネージャーを巻き込み床に倒れ込んだ。
その騒動を聞き付けた笠松が黄瀬に拳骨を落とし事態は収束した。
「…お前も女だったんだな」
「よし、峰さん一回一人で校舎回ってこい。そして怪物に追い掛け回されればいい」
「マジ勘弁」
照れたのは少しの間で、直ぐにいつもの調子に戻ったそらさんの切り替えのよさには感服する。
【桜井side】
「っで!!」
「もうちょっと可愛く言えねえのかよ」
「っ、煩いよ」
桜井です。如何にも見た目からして怖そうで性格に難ありでプレイも横暴な灰崎さんとそらさんがバスケをしているのを見守っています。遠めから。
キセキを始めとする赤司さんや虹村さん以外あまり近寄ろうとしない彼に、そらさんは怖れをなさずに近寄る姿は僕からすれば本当に凄いと思う。怖くないのか、それとも怖さをわかっていないのか…。一回、む…むむむ胸を触られているのに…。ぼっ僕は助平じゃないですよすいません!
そしてそらさんはキャッチ出来ずに頭頂部にボールが当たり、痛さのあまりしゃがみ込み頭を押さえている。
「痛い…頭割れるじんじんする頭悪くなる」
「元からだろ」
「そう言うと思った」
涙目で灰崎さんを見上げるそらさん。その様子を見て灰崎さんは目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。所謂ヤンキー座り…怖い…。
「ハァ…鈍臭ェな」
「灰君が下手くそなんだよ」
「あ゛あ?」
「むぬうっ!うしょでしゅん!」
そらさんの言葉にムカついたであろう灰崎さんがガッとそらさんの顔を片手で掴めば、変な声を出してぶにょっと唇が突き出される。嘘だって言ったのかな…面白い…けど何か可愛い…ゴホン!
「じゃあよしよしして」
「ハァ?キモッ」
「早く、ほれほれ」
キモいと言われても気にせず頭を差し出すそらさん。こういう時にメンタル強いなと思う。
灰崎さんは怪訝な顔をしつつもぶつけた頭頂部を荒く撫でた。
「痛いよ。優しくしないと意味ないじゃん」
「あーもーうっせーな!」
細かく注文をするそらさんに灰崎さんはイラついた様子で止めるかと思ったけど、意外にもやや手荒にだがポスポスと撫でた。
「んふふ。ありがとね」
そらさんはそれが嬉しかったようで、花が咲いたように破顔した。それはもう、ふわふわと花が飛んでいそうな雰囲気で。屈託のない笑みが純粋に感じられて、僕も心の奥底から可愛いと思った。
灰崎さんを始め、様子を心配そうに窺っていた周りの人達が顔を覆っているのを見て重症だなと思いました。
桜井でした。
【津川side】
さっきの探索で相撲体型の怪物に会った。腰が弱点だってそらさんが言ったから、腰を打ち付けるように投げ飛ばしてやろうと思ったが妙に強くて苦戦した。何とか成功して投げ飛ばしたがそれまでに数回投げ飛ばされたから、今までやった探索の中で一番疲れたと思う。
体育館で床に寝転んで疲れた体を休めていると、そらさんが近付いてきてオレの横に座った。
「ともっきー埃付いてるよ」
そう言って服の埃を取ってくれた。言う事やる事馬鹿っぽいのによく気付くなって思う時ある。
「さっきめっちゃ投げられてたよね」
「あれめっちゃ痛かったし〜」
「スガと岩ちゃん手出しはせずに見守りの態勢に入ってたもんね」
授業でも部活でも慈悲は無用とばかりに容赦ないから慣れてるけど、流石に生死が掛かっている場面で傍観の態勢を取られると正直焦るっていうか色々ヤバいかもって思った。唯一心配してくれてたのはこの人くらいだろうなー。
そう思いながらのほほんとこっちを見ている先輩二人に恨めしい目を向けて見ていると、ぶつけてタンコブが出来ている自慢のジョリジョリ頭をそらさんが触ってきた。
「痛いの痛いの〜あのスピーカーに飛んでけ〜!…いてっ」
子どもによくやるやつをやったそらさん。裏声を使ってスピーカーの声をしたつもりか、痛みを飛ばした先を真似るとか徹底してんなと思う。あとちょっと可愛い。
何やってんの?と思って見上げていると、そらさんはニッとはにかんだ。電気でやや逆光で無駄に輝いて見える。無駄に。
「もう痛くないでしょ」
「いや痛いけど」
「そこは本当だ!痛くない!って言うところだよ」
駄目出しを受けているといつの間にかそらさんの隣に海常の変なフォームでシュートを打つ人がいて、自分の胸板を指した。
「オレにもやってもらっていいですか。出来れば此処を」
「森りんが道を外しそうなのはあたしの所為なのかな?」
変態じみた発言に、そらさんは真顔になり本気で悩んでいた。
本当、この空間には変わった人多いな。
月影綺羅様、二つ目のリクエスト大変お待たせしました!
他者視点でという事で、本編でなかった三人の視点から書きました。夢主の反応で悶えたりキュンとしたりっていう事で、愛でられ感が薄いかもですが愛されているはずです。そう思いたい。
素敵なリクエストありがとうございました!
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