SPIRIT WORLD
もしも夢主♂が超能力を使い謎を解決したら

 気が付けばオレは、見知らぬ体育館に尻餅ついて座り込んでいた。周りには見た事ある顔触れ。と言っても、一方的にだが。

「あなたは誰ですか」

 漫画の中で見覚えのある赤髪の男、赤司征十郎。そして黒バスの面々。

「え。…え?」

 何がどうなってんの?










 取りあえず自己紹介をしてから現状を聞くと、此処は言わばホラゲみたいな世界らしい。各自から来た経緯を聞き、自分の経緯も話す。オレは普通に夜寝て朝起きたと思ったら此処にいた、それだけだ。赤司の話では急にオレが落ちてきたらしい。
 この世界に呼び込んだわけでも首謀者でもない事は弁解したが、あまり信じてもらえていない。

「オレは超能力が使える」

 そこで言った上記の一言で、みんな白けた顔になった。それも信じられていない。当然と言えば当然だ。こんな事急に言われても「は?」ってなるだけだし。

「サイコキネシス、所謂念力。サイコメトリー、言ったら物体の記憶の透視。この二つが出来る。だからその超能力を使ってオレがみんなで脱出する為に一肌脱いでしんぜよう!」

 デデーン!と効果音が付きそうな感じで腰に手を当て仁王立ちしながら言うが、全員から無言の視線だけを頂いた。
 え。何で?

「あ、超能力が使えるからって言っても絶対首謀者とかではないからな。そこは信じて欲しい。あとこの場の男の中では最年長だからな、オレが引っ張ってってやんよ!」

 大船に乗ったつもりで来いよ!と胸を叩くがイマイチ反応が悪い。見るからに怪しいからか。それとも大船に乗れないか?オレ身長178cmあるんだけど、このメンバーじゃ低いか。チッ。

「何処まで本当の話か定かではないので、様子を見させてもらいます」

「もし変な行動知るような事があれば容赦しねえからな」

 赤司君と花宮君が怖いです。










「うへぇ、薄暗いなへへへへへへ」

「気持ち悪い」

 現在オレ、そらは洛山と三階を探索中であります。三階の別館がまだ探索していないとの事で、別館に向かっている途中。監視されながら初の探索であります。あまり情報をもらっていないので、取りあえず何か手掛かり探しゃいいんだろと思っています。
 校舎の雰囲気が不気味で気を紛らわせないと直ぐ悲鳴を上げそうだ。そこで一人で笑っていると、隣にいた黛に一蹴される。漫画通りクールな奴だぜ。

「ねえ、山口さん」

「ほいほい?」

「サイコメトリー、だったかしら。この校舎の記憶は読み取れないんですか?」

「校舎かぁ…」

 前で赤司の隣を歩く実渕に尋ねられ、腕組みしながら考える。校舎ってなるとでかいからな。上手くいかなそう。

「超能力って万能ではないのね。集中力とか体力とかも関係してくるし校舎だと大きいから難しいかな。でもその辺の物なら、出来ると思う。この世界に来てオレの超能力が無効化されてなけりゃ」

 そう言うと前の赤司がオレを一瞥した。嘘じゃねえよ。

「じゃあどっかの教室に入って適当な物で視てよ!」

 後ろのワクワクした様子の葉山が見えてきた別館を指差しながら言うので、散歩が待ちきれない犬のようだと呑気に思った。
 そして赤司の指示で別館T字突き当たりの右側の教室から調べる事になった。そこには理科室と手前に準備室。ちなみに反対側には美術室とトイレ。

「…開かないわね」

 理科室から、と手を伸ばす実渕だが鍵がかかっていて開かないそう。今までの教室は全部開いていたらしいが、どうやら此処だけ施錠されているようだ。

「おい。開けれねーのか」

「うーん…やってみる」

 根武谷に言われてオレがドアの前に立ち念じながらドアノブを持とうとした時、まるで静電気とは比べ物にならない程の電気がドアノブから生じ、衝撃波を受けたように後ろに飛ばされた。

「うぉあ!!?」

「っ!!」

 突然の事で受身が取れなかったが、偶然その場にいたであろう黛に受け止められ床への衝突は防がれた。が、黛が尻餅ついてオレもその上の仰向けに雪崩れ込む。

「ちょ、大丈夫!?」

「いたた…ごめん黛」

「っ…重い」

 実渕と葉山が駆け寄ってくる。オレは顔を上げる謝罪すると、黛が迷惑そうな顔で見下ろしていた。冷たい。

「…山口さんが超能力を使おうとして弾かれたのなら、鍵を使って開けなければならないのかもしれません」

 赤司は見様見真似でオレがしたように鍵を開けるイメージをしながらドアノブを持ったが、赤司は超能力を使えないので何の反応もなかったみたいだ。その事を踏まえて推測すると、鍵探しが目的に加えられた。

 準備室も開かないので、美術室に入ってみる事になった。美術室は鍵が掛かっておらず、すんなり開いた。
 中には彫刻や絵などの美術作品、作業台が並べられており少し散らかっている。

「これとか見てみてよ!」

 たたっと逸早く中に入った葉山が持ってきたのは何かの像。何でそれ?と思いながらも受け取り両手で持って目を閉じた。
 人に思い出が残るのと同じで、物にも思い出は残る。九十九神がいい例だ。あれはちょっとまた由来とかが違ってくるけど。オレはその記憶を透視する。
 だが。

「…何も視えない」

 全く読み取れなかった。超能力自体が使えていないのかと思ったが、出来ている感覚はあるので物自体に記憶がないんだと思う。この世界が造られて間もない…とか?
 そう言うと葉山が特に落胆の色を見せた。

「本当は超能力ないんじゃないのー?」

「失敬な。ちょっとそのジャージ貸してみろ」

 馬鹿にまでされてカチンときたオレは葉山からジャージの上着を借りると再度念じる。
 ……お、きたきたきた。

「お前これ一週間洗ってねえだろ。嘆いてるぞ」

「はあっ!?ちちち違うし洗ってっし!!」

「これが超能力でぇーす」

 明らかにどもっているので周りにも本当だと伝わったはずだ。決めポーズまですると葉山をイラつかせたようで青筋を浮かべていた。

「ちゃんと超能力は使えるみたいですね」

 実渕のちょっと安心したような声色に自分も安心した。あんな全員の前で大きな事言っといて超能力使えませんでしたなんて笑えねえもん。

「…教室内も探索を開始するぞ」

 赤司が全体にそう声を掛けたと同時、何か天井で蠢く感じがして赤司と二人で見上げる。
 そこにはさっきまで何もいなかったはずなのに、膿んだ皮膚をズリズリ引きずりながら天井を這う怪物。いや、絶対にいなかった。だって現時点でコイツ、どういう原理か天井から少しずつ出てきている。

 膿んだ皮膚から血が滲み出て、腐臭が鼻を突いた。また腐敗した部分もあってその皮膚がベチャッと音を立てて床に落ちる。人間の形を辛うじて留めているくらいで、全身が肉塊になった化け物だった。

「うわっ!?血だらけの…おたまじゃくし?」

「は!?どう見ても肉塊だろ!!」

 オレが叫ぶように言ってその場から後退するとオレがいた所にそいつが落ちてきた。耳障りな張り付く音に吐き気がした。

「は!?山口さんこそ何言ってんの!?おたまじゃくしじゃんどう見ても!!」

「腐ってる肉塊だって!!臭いし!!」

「ああもう!!どっちでもいいわよ!!逃げるわよ!!」

 実渕の声にみんなが一斉に走り出すが、開きっぱなしだったドアが急に閉まり開かなくなった。根武谷が強引に開けようとするが通用しない。その間にも怪物は床を這って近付いてきていた。

「ボサッとするな」

「んお!?」

 突進してくるソイツにみんなが軽々避けている中で、何で閉まったのかとか何で天井から出てきたのかとか余計な事を考えている内にオレに的を絞った怪物が突進してきた。そこを黛が腕を引っ張って避けさせてくれた。

「あ、ありがと」

「礼はいい。どうやってコイツを倒すか考えろよ、最年長だろ」

 なんと。ここでそれを言われるとは…。そう思いながらも、最年長のオレが体張って止めんのは当然かと思い、集中力を高める。そしてオレはブンッと腕を振り上げた。

「「!?」」

「うわ!?急に動いた!?」

 美術室内にある彫刻が複数宙に浮かび上がった。それを大口開けてまた突進して来ようとするソイツに向けて、潰す事を念じながら腕を振り下ろす。ギュンッと勢い付けて彫刻が怪物に当たった。ベチャッ!!ブチャ!!的な悲惨な音を立てながら見事命中する。

「うおおお!!すっげえ!!」

「これがサイコキネシス…」

 目を輝かせる葉山と、顎に手を添えて考え込む赤司。他三人は非現実的な光景を目の当たりにしてやや放心状態だった。そんな中オレは久しぶりの超能力で若干疲れがきていた。早いな、オレよ。
 だが怪物は死んではおらず、彫刻の中から体を引きずってまた出てきた。

「まだ生きてんじゃねえか」

「…ん?」

 根武谷が手を鳴らしながら動きが随分遅くなったソイツに近付く中、オレは怪物の足の先端部分に黒い靄が見えた。もしかして、

「根武谷!」

「!?」

「足の先!じゃなくて、えっと、尻尾の先?狙え!!」

 近くにいる根武谷に向かってその辺にあった固そうな像を宙に浮かせて渡すと、受け取った根武谷が高く掲げて勢い付けて足先にぶつけた。

「マッスルゥゥゥアタック!!」

 いやいらねえよそんな掛け声。ブチッ!!と音が響いたかと思えば、断末魔を上げながら金の粒子を飛ばして消えていく怪物。やっと終わったようだ。

「…終わったの?」

「あ!鍵開いた!」

 実渕の呟きを聞いて葉山が身軽にドアの方へ移動すると鍵が開いているのを確認した。やはりさっきの怪物の仕業だったか。

「よくやった根武谷。怪我はないかい?」

「おう」

「山口さんは?」

「大丈夫だよ」

 そう答えると赤司は頷いて教室を見渡した後で落ち着いた声色で指示を出す。

「また怪物に鉢合わせるのはごめんだ。軽く教室内を鍵がないか調べて戻ろう。山口さんだけが違うように“見えていた”事や超能力の事、その他諸々を整理するのは戻ってから。それでいいですか?」

「ん。もち」

 赤司の指示後、オレはその辺を見渡しながら怪物にも鍵にも注視して探す。すると後ろに気配を感じて振り返ると、そこには黛がいた。どうした。

「…また余計な事考えて逃げ遅れたら後々面倒だからな。見張る」

「オレは子どもか」

 何で上から目線なんだ。別にいいけどさ、否定出来ないし。そう不満に思いつつ、この数分の間に何度か助けてくれたのは黛なので、本人が面倒見てやると言うのならその言葉に甘えさせてもらおうかと思い、少し笑って探索を終えた。

 この時点ではこれから起こる様々な出来事で、オレにとって黛が一番支えてくれる存在になるとは思わなかった。











満月様、お待たせしました!
超能力男夢主で黛相手のSPIRIT WORLD、謎解きまではいきませんでしたが如何でしょうか。女verの性格を残しつつの男verにしたんですが、気に入って頂けると嬉しいです。
素敵なリクエストありがとうございました!

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