SPIRIT WORLD
もしも夢主が引く程喧嘩が強くてかつ性格がイケメンだったら

 押忍!オラそら!

 じゃなくて、こんにちは。山口そらです!急ですが、あたしの特技は体術であります。
 近所のお兄さんでヤンキーなのに優しくて喧嘩に強いイケメンの人がいて、幼い頃からカッコいいのに憧れていたあたしは、空手や拳法や柔道や相撲と何でもかんでも手を出し今や周りから恐れられる程の力量となりました。

 保育士のくせにゴリラ女なんて呼ばれてませんよ。「何かあったらそらを頼れば解決してくれる!物理で」なんて言われてませんよ。

 そんなあたしは、起きたら知らない体育館に、一方的に知っている顔が揃う現場にいました。
 そして怪しむ視線を向けられています。話が全く飲み込めません。ゴリラ女でもわからない事は多いのです。かしこ。










 我 求ム
 ソノ 万能ナ 身体


「あたしは求めておりまっせぇぇぇんんんん!!」

 ブグフォア!!

 あれから何やかんやあり、此処がホラゲみたいな世界である事がわかった。そしてあたしは疑われている身として探索に駆り出されました。いいんですよ、体動かせるなら。何でもやるって言っちゃったし。気にしてないよ全然、女の扱いされてなくね?とか思ってませんよ全っ然。

 陽泉と正邦と一緒に探索に来たあたし達一行は、残り一つの教室を目の前にミイラ男のゾンビと出会った。ソイツはあたしにしかその実態を見る事が出来ないらしく、みんなには普通の絵本のようなミイラ男に、あたしにはグロテスクなミイラ男に見えていた。

 その疑問はさて置き。上記の言葉をあたしにしか聞こえないように言ったミイラ男が走り出し突進して来たが、あれくらいの速度なら何のその。

 突っ込んでくる相手を待ち構え上段飛び蹴りを顔面に食らわす。みっともない声を上げて弾き飛ばされたミイラ男にみんなが無言になった。

「山口そら24歳。特技は体術全般。喧嘩では正当防衛の時のみ滅多打ちにする事が趣味です」

「いやいやいや、だからってその強さ異常だろ」

 福井少年に引かれたようにツッコミを頂きながら再度起き上がったミイラ男に対し、黒い靄が首に見えたのでそこを狙って容赦ない一回転付きの踵落としを食らわせた。
 断末魔を上げ金の粒子を飛ばして消えていくそれを眺めた後、あたしはふう、と肩の力を落としてみんなの方に寄る。

 と、一歩引かれた。

「…何で離れるの?」

「いや、条件反射アル」

 どうやら異常なまでの動きに引かれたらしい。いいじゃん強い女、好きだって言う人沢山いるでしょ?多分。
 それに喧嘩は一方的にやるわけじゃないよ。誰かが虐められていたとか襲われていたとか、そういう時にしか発揮しないよ。体術を教わる時に師範からも「暴力の為の技術ではなく、自分や人を護る為の技術なのです」って教わったし。

「みんなにはしないよ。あたしの力は護る為にあるんだから」

「「(キュン)」」

 あたしは拳を握り締めてなるべく安心出来るように努めてニッとはにかんで笑うと、その言葉を信じてくれたのか少しホッと息を逃したり胸を押さえていたり。怖がらせてしまったようだね、めんごめんご。

 その後は残りの教室を調べてから体育館に戻り、探索結果の話し合いや白黒のメモの解読を行った。そこであたしに“案内人”という任務が課せられている事が判明し、この力を本領発揮する時!とばかりにやる気に燃えていた。

 ただ相手の怪物が全てグロテスクなのでメンタルがやや心配です。










 ソノ体交換シテェェェ!!

「ふん!!」

 アデデデデ!!

 桐皇との探索時、ヤモリ人間との遭遇。
 逸早く見付けたあたしの足を捉えようとして伸びてくる舌を避けてから踏んだ。グニョッてして気持ち悪かった。

「ホァチャァァァ!!」

 ガァァァン!!

 ギャアアアアア!!

 調理室で獲得したフライパンを駆使し無駄な動きを取り入れての攻撃で内臓ぐちゃぐちゃ老婆から良君を救出。

「お前さ、攻撃すんのはいいけど静かに出来ねえの?」

「何事も気合いが大切なんです」

「ドヤ顔やめろ」

 峰さんに呆れた顔で突っ込まれた。確かに試合中とかもよく煩いって言われたな。
 その後の霧崎との探索でも怪物を片っ端から張っ倒していったが、流石にビックサイズの鬼にはビビって一時退避した。その後態勢を整えた状態で誠凛のみんなで再度チャレンジして倒す事が出来た。あたしよりアレクさんがスゲかった。

 そしてその後も色々ありつつ着実に脱出の糸口を引いていき、白玉のゲット、番人のや重要人物の巫女さんや灰崎少年と虹村少年が発見されるなど得る物が多かった。マネキンゾンビの大群に襲われる事もあったけど。

 巫女さんと少年二人を発見した洛山との探索結果の話し合い後。体力回復の為暫しの休息を取ろうと一人その場を離れようとした時にさっちゃんに呼び止められた。
 あたしは勿論みんなが動きを止めてさっちゃんを見ると、本人は注目を集めて居心地悪そうにしどろもどろしながらもあたしを見つめた。

「そらさんが疲れた顔をしているので…偉そうですけど言わせて下さい。これまで毎回探索に出て沢山の怪物と戦ってきました。弱音を全然吐かないですけど、もう頑張り過ぎなくていいんです。私は何も出来ないけど…周りには仲間がいるんですから、もっと周りを頼って下さい…!」

 少し辛そうに泣きそうな顔で言われあたしは目を見張る。チラリと周りを見れば複数の人が頷いていて、あたしは苦笑を浮かべた。そんなにあたし辛そうだったかな。

「…ん、ありがとう。そんな顔させてごめんね。でもあたしは“みんなが弱い”と思って率先して戦ってるわけじゃないよ」

「じゃあ、」

 あたしは中腰になっていた腰を再度その場に下ろすと全体を見渡してから笑う。

「あたし一人の力でここまできたわけじゃないじゃん?あたしは馬鹿だからさ。メモの解読が出来るわけでも、ヒントを見逃さない程の洞察力や観察眼があるわけでもない。みんなにはそれぞれ出来る事があるよね。あたしの場合、それが“戦う”って事。だから自分の出来る事を、案内人としても出来る事をって思ってやってる」

 あたしが何故ここまで体を張るか、ちゃんと伝えていなかったから下手に心配させ過ぎていたようだ。だからあたしはちゃんと話す。あたしは自分の手の平を見つめて、開いたり握ったりを繰り返す。

「体力はある方だし大丈夫、って言いたいところだけど表情に出るくらい疲れているのは事実かも。だからちゃんと休むね。でもこれからもあたしは同じようにやる」

 意思が揺らがないのは目を見て信じてもらえるだろう。みんなあたしの話に耳を傾けてくれているので、それに感謝しつつあたしは一つ息を吐いてから話を続けた。

「あたしの目標は“みんなを怪我なく無事に家に帰す事”。先輩面してるだけだけど、実際人生の先輩だからね。君達をちゃんと元の世界に帰したい」

「「(キュン)」」

「「そらさん…ッ」」

 一方的な目標であるので、お節介だと言われればそうだと思う。けどあたしはそうしたいと思ってやっている事。
 そう思って話したのだが、さっちゃんを始めきー君や森りんが涙ぐみながら名前を呼んできた。そんなに感動する事?数名心臓押さえているけど大丈夫?

「でもあたしからすれば、みんなあたしに少しでも負担をかけないようにって気張り過ぎだと思う。あたしそんなヤワじゃないし、案内人だからって気にしなくていいよ。これも運命だし、あたしが案内人だからみんなに出会えたんだと思うし、あたしはみんなに出会えてよかったと思ってる」

「「(キュン!)」」

「あたしは年上なんだからもっともっと頼ってくれていいんだよ。年上っていうのは年下に頼られるもんなんだから。ここは先輩を立てる為に甘えてよ。それがあたしのして欲しい事」

「「(キュンキュン!)」」

「あたしはさっちゃんの思いを受け止めてみんなに頼る。だからみんなもあたしをもっと頼って。…これでフェアになるかね?」

「…そうですね。話を聞いていてわかりましたが、どうやら互いの気が張り過ぎなようです。時には力を入れ、時には力を抜く。そしてみんなで力を合わせて此処から脱出しましょう」

 あたしの下手くそなまとめに対して赤君はフッと笑うと綺麗な微笑を浮かべながら頷いた。あたしは勿論みんなも一様に頷いて、意思を高め合う。
 みんなが無事に脱出出来るように、みんなで頑張る。ちょっと一人で突っ走っちゃってるところもあったから、そこは反省した。そして最初とは違い協力し合える関係が出来てきた事に、あたしは密かに感動して涙が込み上げそうになる目を一度閉じた。

「よし!みんな何も心配いらないからね。みんながあたしを護ってくれる分、あたしもみんなを護るから!」

「「(男のオレらよりイケメンだ)」」

「「(あの親指ちょっとうざいけど)」」

 ここはキリッと決めてやるぜ!と思って漫画でよくある台詞を親指立ててキリッとしながら告げると色んな反応が返ってきた。
 特に多かったのは「あの親指へし折りてぇ」みたいな視線だったなんて思ってないんだから。











なつみ様、お待たせしました!
喧嘩が強い性格イケメンとの事でしたが、可笑しな事にイケメン要素が全然出せませんでした…!すみません!!
ぐだぐだ自分の思いを語っただけの奴になっちゃったような気がしますが、気に入って頂けると嬉しいです…!
素敵なリクエストありがとうございました!

7/10
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