SPIRIT WORLD
見解�@

【桃井side】

 わけのわからない世界に来て数時間。
 目が覚めた場所は一階の3年F組。大ちゃんと今吉さんと諏佐さんが一緒にいて、急に暗い教室で目を覚ましたからパニックになったけど、今吉さんが落ち着いて話をしてくれたから何とか落ち着けた。

 少し話し合って状況整理を経て、脱出する為に色々試したけどどれも駄目。一旦教室から出て外でも色々試そうってなったけど、少ししてキョンシー?みたいなのがいて皆で逃げたっけ。私は早々に力尽きて大ちゃんに抱えられたけど…。何とか逃げ切って探索を続けていると赤司君率いる洛山に出会って話し合い。

 そしてその後も色々あって、体育館を拠点にして徐々にみんなが集合した。こうも大集合すると、誰かの意図があるようにしか思えない。

 みんなが集まってからチームに分かれての探索で見付かったのが数枚の白と黒の紙。内容が全部中途半端でバラバラなので赤司君曰くまだ校内にあるだろうとの事。

 そして女の人も見付かった。
 見知らぬ人だ。

 霧崎第一の人達が校長室で見付けて、山崎さんに背負われてきた時は何事かと思った。
 ステージ下で地べたに寝かそうとする霧崎の人達を見て女性を冷たい床に寝かそうなんて何て事!と私が声を掛ける前に動いたのが、愛しのテツ君とかがみんと高尾君。三人のジャージを布団代わりにするなんて…流石私のテツ君!紳士!!あの女の人が羨ましい!!

 あっ!嫉妬なんかしてる場合じゃなかった!
 寝かせられた女の人の事で赤司君や今吉さん達(頭脳派組)が話し合っている間に近付いて様子を見てみる。

 至って普通の人だ。あ、いい意味でだよ!可愛らしい顔をしている。美人より可愛い系かな?
 じーっと顔を覗き込んでいると、モゾモゾと寝返りを打ってステージの方へ向いてしまった。幸せそうな横顔。気絶というより普通に寝ている感じだ。

 その場から暫く動いていないと、大ちゃんが呼びに来た。起きるまではあまり近付くなって。確かにキョンシーみたいな化け物がいる所だしもしかすると化けている可能性も否定出来ないからだろうけど、何となくこの幸せそうな顔を見ていたら大丈夫だと思えた。
 大ちゃんがしつこいから離れて様子を見る事にするけど。

 そして暫くして。あの後からも出発して行った探索組が帰って来てひと段落ついたところで、ガバッと起き上がった女の人。キョトンと掛けられていたジャージを見つめている様子を見て、私は呼び止める大ちゃんに構う事なく女の人に近寄る。

「あ!目が覚めましたか?」

 そう声を掛けると大きな目を丸くさせた。

「大丈夫ですか?痛い所とかないですか?」

 質問すると少しぽけっとしながらも答えたその人が、大人の女性って雰囲気があるのに何だか子どもっぽく見えてしまって可愛いと思った。
 大丈夫との返答に私が安心して笑うとほんのり頬を染めたのが更に可愛かった。うん。私この人普通にいい人だと思う。だってこんなに反応が可愛いんだもん!

「あー…えっと、此処、何処?」

 高くもなく低くもない落ち着いた声色のその人。何だろう。声を聞いたり傍にいるだけで何だか落ち着ける。
 初めて会った人の傍が落ち着くなんて初めてだ。もしかしてこの人動物に好かれたりするのかな。動物はいい人に寄って行くって言うし、もしそうなら寄りたくなる気持ちもわからないでもない。

 そんな事を思いながら赤司君を呼び、みんなでの話し合い。名前は山口そらさんというらしい。24歳だったんだ…もっと年が近いと思ったけど、将来美魔女になりそう。アレックスさんみたいに。
 今吉さんが左隣に座ったので、その後ろへ私達桐皇が座る。この見知らぬ大人数の中で一人ってきっと心細いよね。でも意外と平気そう。

 これが演技なのか、気丈に振舞っているのか、はたまた本当に気にしてないのかはわからない。けど見ている様子では真っ直ぐに赤司君や今吉さんを見て話しているし、嘘を言っているようには見えない。まあ、人の嘘を見破れる程冴えているわけでもないけど…。

 何とか事なきを得て話し合いは終了。赤司君達があんまり情報という情報を流していないのを見る限り信用していないんだと思ったけど、でも今の赤司君なら山口さんの事を悪いように見るだけではないと思う。だから信じよう。
 どうしても反論がある場合は物申してみよう。大ちゃんを連れて。

 いつの間にかリコさんが山口さんの所で話をしている。手首に湿布?あ、そっか。手錠掛けられてて赤くなったんだ。
 笑顔を浮かべる山口さんと仲良さそうに話すリコさんが羨ましくて、私も便乗してやろうと近付く。
 どうやら名前で呼び合っている様子。リコさんはちょっと変わったあだ名で呼ばれてるけど。

 そしたら「さっちゃん」って呼んでくれて。優しくて明るい笑顔もくれて。起きた時に声を掛けただけの私にお礼まで言ってくれて。

 さっき落ち着くって思った意味を何となく理解した。この人は温かい人なんだ。何だろう、母性愛っていうのかな?保育士の資格あるって言ってたし、包み込んでくれる優しさがあるのかも。
 それをむんむん漂わせているんだ。…ん?むんむんって、ちょっとムーディーな表現だったかな…。

 アレックスさんも混ざって話をする。突然のキスは吃驚した。そらさんも顔を赤らめているけど、思ったより冷静な反応だった。慣れてるとか?
 それから話し合っていると女子会みたい!と思った。けどそんな楽しい時間も続かず、そらさんは探索に行く事になった。

 これまで体育館を拠点にしてから女性陣は探索に出ていない。危険だからと満場一致の意見でだ。運動には自信があるから大丈夫だと言うアレックスさんでさえも出さなかったのに、そらさんは行かせる。

 みんなの考えている事はわからない。危ないから行かせちゃ駄目だって声を大にして言えないのは、今のそらさんの立場をわかっているから。そらさんが害のない人だって証明が出来ないから。だから今は簡単には止められない。

 本当は行かせたくないけど、そらさんは結構行く気満々な様子。あれ…案外乗り気?もしかしてこの流れで信用を得る為に動くとか、何か作戦があるのかな?だとしたらまだいいけど…。
 むっくん達もいるし、大丈夫だよね。そう信じるしか私には出来ない。けど。

「…気を付けて下さい」

 無傷で帰って来る事を祈り、温かく迎えてあげる事に徹しよう。
 頼るべき存在がいないそらの為に、私が新しい頼り所としてなれればいいなと、温かな手に撫でられながらそう思った。

 元気な「行ってきまーす」の声に、私はリコさん達と「行ってらっしゃい」とはっきり答えた。
 どうか、無事に戻って来ますように。










 私はこの人を信じたい。
 理由は勿論、女の勘よ。

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