INFINITY WORLDあたしと黄瀬涼太
【黄瀬side】
「黄瀬くーん!これ受け取って!」
「黄瀬君受け取って下さい!」
「今日もカッコいい!素敵過ぎる!」
「あはは、どうもっス〜」
部活後、待ち伏せしていた女の子達に一斉に詰め寄られバレンタインのチョコをもらう。部活中は邪魔になるので体育館に立ち入り禁止になっているが、部活が終わり一歩外に出れば予想していた通りになる。
休日だというのにご苦労な事っスね。逆に感心するっス。
そう思って揉みくちゃにされていると、部活仲間は嘲笑って通り過ぎていく。少しは助けてくれたっていいじゃないっスか!僻みっスか!早川先輩や中村先輩が引退してなかったら絶対助けてくれたっスよ!
スマイルは崩さずに受け取り用意していた袋に詰め込むがそれでも溢れ返る量だ。
それに気が遠くなりながら何とか群衆を抜けて部室へ行き、手早く着替えて同期と後輩に先に帰る事を告げて裏口の方から学校を出た。何人かこっちにもいたけど、大軍に押し寄せられるよりマシだ。
それよりオレは急いでるんスよ!そらっちに会いに行く為に!!
一度寮へ帰り着替えて身嗜みを整えてから、買ったチョコと軽量の荷物を持って飛び出る。また女子に絡まれそうになるのを何とか抜けて急いで駅に向かいながらそらっちに電話をした。
オレは今日逆チョコなるものを渡して告白するんス!!
夢の国で告白まがいの事をしてから頻繁に電話するようになって、何が好きとか最近何がブームだとか今日は何があったかとか、色んな話をしていると時間があっという間に過ぎるくらい楽しくて、そらっちの顔が見たいっていつも電話をしながら思ってた。
その後も黒子っちに誘ってもらったバスケ教室や冬合宿でそらっちに会うと、他の女の子では思わない会いたかった気持ちが溢れた。黒子っちとかオレが尊敬する人達に会えた時の嬉しさとは別で、そらっちの顔を見ると胸がキューッて苦しくなって抱き締めたくなる。笑うとああもう!!可愛いな!!って高い高いしたくなる。
一緒のように馬鹿やる時もあれば、優しく見守る視線も感じてコロコロ変わる表情が好き。やっぱり好きだって気付いた。バスケ教室の時に子どもにおっぱい触られていた時は子どもでも触られるのが気に食わなくて必死に止めた記憶が懐かしい。そういやショーゴ君も触ってた時があったっスね…クソが。そらっちのおっぱいは誰にも渡さない!!こんな事言ったら本人にも赤司っち達にも絶対締め上げられるけど。
数回のコールで電話に出たそらっちに走っているから少し息が上がりながら話し掛ける。
「そらっち!?オレっス、きー君!今家にいるっスか!?」
『自分できー君言ったな。んっとね、今神奈川にいるよ』
え。とその場で足が止まる。神奈川?って事はこっちにいるんスか!?
「え!?どどどどういう、」
「きー君こっちこっちー」
電話越しにも背後からも声が聞こえて何が何だかわからなくなった。けど、振り向けば携帯を耳に当てながら手を振るそらっちの姿。
今から会いに行こうとしていたのに、何で此処にいるんスか。幻覚?幻影?
「お疲れー」
オレの目の前まで来たそらっちに呆然としていたが、既に通話を切られた携帯をゆっくりと下ろす。
そらっちはクスクスと可笑しそうに笑いながら首を傾げた。
「凄い勢いで寮出てったから何かあったのかと思ったらあたしに用事?」
「え、あ、何で此処に?」
「ん?あーこれ。お届け物でーす」
何で寮の場所知ってるのかとか疑問だらけだったけど、今此処にいる理由を聞けば手に提げていた袋から小箱を取り出しオレに差し出す。
それを受け取り見下ろした後目を瞬かせながらそらっちを見る。
「いっぱいもらったかもしれないけど、もらってくれると嬉しいな」
「っ勿論っス!!嬉しいっスありがとっス!!」
突き返すわけがない。一番もらいたかった人からもらえてわなわなと体が震える。この喜びをどう表現しようかと思って、いつもの癖で抱き着こうとしたが必死にその場に踏み止まる。
わざわざこうしてそらっちが届けてくれて目の前にいるんス。今言うしかない。
辺りは人通りが少ない所なので人の目は気にならないけど、少しシチュエーションに青春っぽさというかそういう雰囲気が足りないが構うもんか。
オレは持っていた小包みをそらっちに差し出す。目を丸くさせているそらっちが受け取るまで待っていると、おずおずと受け取ってもらえた。
「くれるの?」
「はいっス」
しっかりと頷き返せばそらっちは嬉しそうに笑った。やっぱりそらっちの笑顔は可愛い。
「そらっち。聞いて欲しい事があるっス」
一歩近寄ってチョコを持つ手とは逆の手で彼女の空いている手を握ると、見上げてくるそらっちを見つめながら溢れそうな思いを言葉に変えて伝える。
「好きっス。そらっちが、山口そらさんが大好きっス!」
顔が熱い。オレの熱が伝わったみたいにそらっちも赤くなるのがわかり、その反応に期待すらする。ライバルが多いのはわかってる。勝てそうにない赤司っち達もいる。けど、ちゃんとこの気持ちは伝えたかった。
「オレをモデルとしてじゃなくて、黄瀬涼太として見てくれたそらっちが好きっス。いつでも誰とも変わらないように接してくれて、そらっちにとってはそれが当たり前かもしれないっスけど、オレには特別なんスよ」
そらさんの瞳が揺れるのを見つめながら握った手に少し力を加えた。
「最初は気になるってだけしか言わなかったっスけど、電話したり会って話したりしてやっと気付いた。だから、オレと付き合って下さい!」
ガバッと勢いよく頭を下げた。今まで告白されるだけの人生。オレの外見だけを見て中身をよく見てくれようとしてくれない子ばかりで、告白だってこうやって頭を下げられる側だった。
だから告白する側の気持ちなんて全然わからなかったけど、今こうして返事を待っている時間が苦しい。言う前も玉砕するかもと覚悟していた割には直前でやっぱやめようかなとか、逃げようかなって思ってしまった。それでも言った後も一瞬でも時間が長く感じてしまい、自分を拒否しないでって不安になる。オレに告白してきた子達の中で、こんな思いしながら想いを伝えてくれた子もいるんスかね。
ぎゅっと目を閉じていると握っていた手を離されふわりと頭を撫でられた。優しい感覚に顔を上げれば、頬を染めながらも目を細めて微笑むそらっち。
「ありがときー君」
そのままスルリと頬を撫でられて、擽ったい感覚に目を細めた。
「あたしも同じ気持ちだよ」
そして続けられた言葉に目を見開く。
「あたしもきー君に対する想いが恋愛なのかそうじゃないのかわかんなかった。きー君ってお調子者だし結構驕っちゃうタイプだけど」
「うぐ」
「でも負けず嫌いで何かに一生懸命になるがむしゃらな姿がカッコいいなって思う。結果で勝負に負けたとしても」
それは今までのオレをちゃんと見てくれていた証拠で。特にバスケは自分でも思うくらいに頑張って努力もしてる。誠凛に負けてからオレは変わった。
その頑張りを“オレなら模倣して何でも出来る”って思われるだけじゃなくて、ちゃんと頑張ってるって認められたのが嬉しくて少しだけ泣きそうになった。
「そんなきー君があたしも大好きだよ」
それを聞いて我慢していた涙がボロボロと溢れた。そらっちは吃驚して慌てていたけど、ポケットから出したハンカチで拭かれる前にオレより低い体を引き寄せて抱き締めた。
「そらっち…ありがとう…好き」
「うん。ありがと」
「本当に彼女になってくれるんスか」
「きー君が好きな子が多いからこれからちょっと不安だし大変だろうけど、負けないよ。あたしを彼女にして下さい」
そんなのそらっちにお願いされなくてもする。ぎゅうっと抱き締めるとそらっちは少し苦しそうな声を出したけど、嬉しそうに笑った。そして甘えん坊って言った。
確かにオレのファンは多いからそらっちが彼女だって知ったら嫌な目を向けられたり嫌がらせもされてしまうかもしれない。けどそらっちは負けないって言ったからそれを信じて、そらっちに負担になったり不安にさせないようにいっぱいいっぱいオレからの愛を伝えたいってキザっぽいけど思った。
「そらっち好き。オレちゃんと守るから」
「ん。ねえきー君」
そらっちが顔を上げてと言うのでまだ涙で濡れているオレは顔を上げると、チョコを持っていない方の手でそっと拭われた。今気付いたけど視界に映る影がいくつかあるのに気付く。ちらりと見れば同じ学校の女生徒らしき子達で、オレ達の姿を見てヒソヒソ話をしていた。
早速そらっちに迷惑掛けてしまった。そう思っていたが、そっと頬に手を添えられると背伸びをしたそらっちの顔が近付いてきて、触れるだけのキスをされる。
外野では悲鳴が響いた。
「っ、そらっち」
「…見せしめ」
カァッと一気に体が熱くなる。そう言ってニッと悪戯っ子のような笑みを浮かべたそらっちに喧嘩を売ったも同然の行動なので流石だと思った。喧嘩を売ったと言ってもそらっちは既にオレの彼女なので誰の文句も聞く必要ないけど。
「…オレからもしてもいいっスか」
「…はい」
額を合わせながら目を閉じてそう問い掛けると直ぐに返事が返ってきた。
オレもそらっちはオレのものだと言うように見せしめるように唇を重ねて、次は直ぐには離さず柔らかい感触を堪能する。
このまま時が止まってしまえばいいのにと思いながら、幸せに浸った。
毎年バレンタインは面倒だと思っていたが、こんな幸せなバレンタインデーは初めてでこれからはそらっちがいるからどんなイベントも楽しみだと思えるようになった。
そらっち大好き。
Ryota Kise END.
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