INFINITY WORLDあたしのおふざけ
《Jabberwockの前代未聞の侮辱から一週間!!そして誕生した高校ドリームチーム、VORPAL SWORDS》
司会者がマイクを伝って会場に声を届ける。会場は更に盛り上がり、観客が口々に応援や切実な思いを叫んだ。
「うおー!!」
「頼む勝ってくれぇ!!」
《リベンジの時は来た!!》
キセキの世代五人がコートに向かう。ベンチ入りのみんなも表情は真剣そのもの。
あたしは観客席を一瞥してからエールを送ろうと声を上げた。
「感じていないとは思うけどプレッシャーに思わなくていいからね!自分達のバスケをしてきてね!頑張れ!」
「たまにはいい事言うじゃねえか」
「“たまには”は余計です!いつもです!」
リコぴんパパに頭をわしわしと撫でられた。そんなこちらの様子を見て、コートの五人は少し笑って頷いた。
《VORPAL SWORDS対Jabberwock》
〔よぉ腰抜け共。オムツはちゃんとはいてきたか?〕
2チームが対峙する。すると早速ジェイソンが揶揄、というか挑発を投げ掛けていた。
あたしは昨夜のキャバクラでどんな英語のやり取りがあったか聞いた上で、ある単語を聞き取れるように就寝前に調べた事がある。
それはオムツ。diapersと言うらしい。
アイツ今言ったよな。よし、今だ!!
「ヘイヘイヘーイ!Look at their bench!(自分達のベンチを見て!)」
〔あ゛ん?〕
「Present for you!(あなた達にプレゼント!)」
試合開始の前にあたしがジェイソン達に向かって呼び掛けた。今日も発音は上々である。発音だけはな。英文は勿論事前に調べましたとも。
指差すのはJabberwockのベンチ。一同が視線を向ければ、ジェイソンとモブは目をひん剥いた。
一週間前の考えを有言実行しようと思ってトイレグッズを買い揃えようと思ったんだけど、(絶対に高額は出したくないので低く設定した)予算以上にオムツに費用を費やしたのでやめて、オムツ一袋だけをリボンで装飾してベンチの横にちょこんと置いておいた。今さっき気付かれないようにこっそりと俊敏にね。
そう。さっき順ちゃんが聞いてきた残りの荷物の正体はこれ!憂さ晴らしに相手のベンチに置いてやるって決めたんだよ。あたしって天才。
漏らすのはお前らだからなっていう暗示です。
「「阿呆か!!」」
「下手したら戦争になるからやめてぇ!!」
かがみんとリコぴんパパに怒られた。タカ君が頭を抱えながら半分悪ノリでそう叫ぶ。だって顔笑ってんだもんアイツ。いっその事大きく笑えよ。
「やっぱり観客席に行かせた方がよかったな…」
な、何ィ!?よかれと思ってやった事が裏目に出ただと!?なーんて想像の範囲内でございますぅ。リコぴんが頭を押さえていたがスルースキル発動。
後でたっぷり怒られるから今は言わせてくれ。
「今ならまだ間に合うよ〜オムツはいて安心しなくていいの〜?安心して下さい、はいてますよ!っつってね」
「いや上手くありませんからやめて下さいそのドヤ顔」
テッちゃんに厳しいツッコミをもらう。何より青筋浮かべてイライラした様子のジェイソンと顔の影が濃くなっているジュニアがいい反応過ぎてワロタ。腹いせにみんなにぶち当たっていかないか今更ながら心配になってきたわ。
《あ、あのぉ…試合始めても…?》
「あ、どうぞどうぞ」
「何で一々芸人風なんですか」
司会者の人に尋ねられ、手を出して頭を下げながら促すとテッちゃんにもう黙れよみたいな目を向けられた。ごめんって。
《今…
試合開始ーーー!!》
高くボールが投げられ跳んだジェイソンとあっちゃん。ジャンプボールで制したのはあっちゃんだった。
そしてボールを取った赤君は速攻で峰さんにパスを出し、ドンピシャで上がったボールを峰さんがダンクで叩き込んだ。
「「おおおおーーー!!」」
「キャアアアアアアア!!カッコいいいいい!!こっち向いてェェェェ!!」
「うるっせえよ!!」
「いてっ」
会場が声を上げた。あたしも興奮してデジカメで連写しながら叫ぶとポカッとかがみんに頭を殴られる。ちょっとブレたじゃないか。
「英語わかんねっつんだボケ。言ったろーが、地べた舐めさせてやるってよぉ」
〔あ゛あ゛…!?〕
「厳密に言えば言ったのは赤君だけどね」
「うるせー!バラしたらカッコつかねえだろーが!」
ポソッと呟くと峰さんがこっちを指差す。既にカッコついてないッス峰さん。
その後もきー君がブロックしたり、峰さんの縦横無尽にドリブルを駆使して相手を翻弄しボールを叩き込んだり、VORPAL SWORDSの勢いが止まらない。マジでカッコいい。これは惚れるわ。
「…パパ!」
「ああ、出だしは文句なしだ!」
リコぴんもリコぴんパパも笑顔を見せている。
赤君がジュニアに向かっていき、奴もまたこの前みたいな素早いドリブルを披露する。が、流石は赤君。動きについて行き、ジュニアはパスを出さざるを得なかった。
パスは仲間へ伝っていくがシュートをブロックするのはあっちゃん。弾かれたボールは真ちゃんの手に渡り、明らかに3Pシュートの位置ではない所にいるのでジャバのモブが笑っている。
「馬鹿め。今日のおは朝占い、一位は蟹座だ」
そして見事に決める。高く投げられたボールはゴールに当たる事なくスパッと入った。
「更にラッキーアイテム。万に一つも落ちるものか」
〔なっ…!!?〕
「うわぁあ決まったー!!緑間唯一絶対の代名詞!!
超長距離3Pシュート!!」
「「真ちゃああああああん!!」」
遠い位置にいたタカ君と一緒にキャーと叫ぶと「恥ずかしいからやめるのだよ!」と注意を受ける。照れ屋さんねぇ。
《そしてここで第1Q終了ー!!リードはVORPAL SWORDS!!》
「よっしゃあ!!いい調子できてるぞ!!」
若ちゃんと順ちゃんが拳を作る。戻ってきた五人にタオルとドリンクを渡すのを手伝った。
そんな中で難しい顔をする相田親子を見て不安に駆られる。あたしにはルールもイマイチわからないので、流れとか何がよくていけないのかもわからない。それが余計に不安感を煽った。
何よりみんなの疲労が気になる。汗だくでさっちゃんも顔色が変わった。
「…大丈夫?」
「おう」
一人ひとりの顔を窺いながら尋ねると峰さんにハッキリそう返された。
「…んな心配そうな顔すんなって。信じて見てろ」
あ、今ヤバいキュンときた。峰さんが真面目にイケメンになっている。面白くない。
「面白くないって何だゴラ」
心の中を読まないで下さい。
そんな中で一番汗が酷いあっちゃん。首にタオルを掛けて軽く首の後ろを揉むと緩い感じで礼を言われた。
チラリとジャバに視線を向けると、ジェイソンが不敵な笑みを浮かべていたので自然と眉に皺が寄った。
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