INFINITY WORLD
あたしのテクニック

 第2Qが始まった。得点は20対16でこっちがリード。だけどさっきのジェイソンの笑みが気になる。

 そんな事を思っているとパスが早速ジェイソンに回された。そして峰さんとの1on1に持ち込む。
 余裕綽々の顔でドリブルをした瞬間、超高速であの峰さんを抜いた。そのままダンクをしようとするところへあっちゃんがブロックしにいくが、パワーに負けてボールはゴールへ叩き込まれる。

「なっ…」

「何ぃーーー!?」

「そんなっ…全員が天賦の才能を持つ“キセキの世代”、その中で最もスピードのある青峰が抜かれ、最もパワーのある紫原がぶっ飛ばされたー!?」

 ご丁寧な説明なこって。確かに驚愕ではあるけども。
 会場全体が息を飲む。
 何だっけ…この前さっちゃんが言ってたの。峰さんの敏捷性とかがみんの跳躍力とあっちゃんの力以上の化け物なんだよね。ゴリラなんだよね。納得。
 それより怪我してないかな。それが心配。

〔オイオイちょっとやる気出しただけでこれかよ?つくづく猿は貧弱で参るぜ!怪我しねーように気を付けてやらねぇとな!ははははははは!!!〕

 また“は”のゲシュタルト崩壊ですね。
 明らかに喧嘩売っている言葉に二人の顔色が怖くなる。

 その後も赤君のシュートをブロックしたりきー君と真ちゃんが追い付けない速さで駆けて行ったりジェイソンが止まらない。レーンアップからのボースハンドウインドミルダンクとやらをぶちかました。
 …何だよそのカッコいい技名。いいなー!

「…火神君」

「…ああ。ボースハンドってのはワンハンドよりパワーが出る代わりに高さが出ねぇ。それでレーンアップからのウインドミル…あんなのオレもやった事ねぇ」

 ボースハンドっていうのは両手持ちというらしい。両手持ちだと腕の振り幅が狭くなるからかな。

「じゃあやってみたら?」

「…お前、簡単に言うけどなぁ」

「やってみないと出来るか出来ないかわかんないじゃん」

「あーもう!取りあえず難しいんだって!」

「大丈夫大丈夫」

「何なの?この無茶振り」

 かがみんがげっそりしながら突っ込むのをやめた。ジェイソンがやるよりかがみんがやるのを見たいんだもん。

 その後もジェイソンは止まらず、点が抜かれた。VORPAL SWORDSがタイムアウトを取る。

「さぁて…やべーな。向こうもいよいよ本性出してきやがった」

「紫原君、大丈夫ですか?」

「んー。ヨユーだけど〜?けどアイツムカツク〜。ぜーったいヒネリ潰してやる〜」

 リコぴんパパが策を練る中、暴れ回るジェイソンのマークについているあっちゃんが一番体力の消耗が激しい為テッちゃんが声を掛けた。口調は相変わらず緩い感じだけど汗が凄い。でも闘志は尽きていないのは一目瞭然だ。青筋を立てて苛々しているが。
 レモンの蜂蜜漬けを食べている様子をあたしが心配そうに見つめていると、「心配してるならあーんして」とおねだりされたのでサービスで素直にやってあげる。やらんでいいと峰さんに怒られた。

「とにかく何とかしねぇといけねぇのはシルバーだ。今の5人はバランスはいいがシルバーを止めるにはちと馬力不足だ。メンツを変えるぞ。赤司、緑間OUT。黒子、火神INだ」

 お、メンバーチェンジですかな。交代に関してあっちゃんが反論するが、赤君によってチームプレイの大切さを諭され応じた事と、峰さんにも同意を得る様子を見てさっちゃんが思う所があるのか苦笑しているのを間近で目にし、原作で色々あったもんなぁと心の中で独りごちた。

 その後テッちゃんとかがみんが加わった事で、チームの雰囲気がガラリと変わる。今は一人で勝てないと言われて少しムキになっているのもあるであろうあっちゃんが、今まで以上のパワーで押し返す。あんなんあたし受けたら潰されて即死だな。

 そしてかがみんと峰さんのタッグでジェイソンのシュートをブロック、テッちゃんのミスディレクション効果でパスを繋げ、きー君の視線誘導で相手を引っ掛けその間にかがみんにボールを繋げてダンク。なんてカッコイイんだ!!

「惚れてまうやろおおおおおおお!!!」

「煩いのだよ」

「そらさんシッ」

 顔を覆って天を仰ぎながら叫べば慣れた様子で淡々と指摘する真ちゃんとリコぴん。何だよ淡々とし過ぎだバーローもっと突っ込めよ。

 苛ついているジェイソンにボールが回るがかがみんとあっちゃんがダブルチームで抑える。峰さんといいあっちゃんといい、一々喧嘩を売るような事をかがみんに言うので哀れに思えてきたわ。
 そんな中ジェイソンはムキになってパスを回さず抜こうとした所へ峰さんが軽くボールを弾いた。そのまま一瞬躊躇ったがテッちゃんにパス、かーらーのー素晴らしいパスできー君に回りダンクが決まった。コマ小さいけど。

 峰さんのパスが下手だったのでみんなそっちに意識持って行かれてきー君放置プレイ。いつも通りの扱いだけど可哀想だからエールを送ろう。

「キャーーー!きー君素敵抱いてーーー!」

「ええっ!?もっ、勿論っス!!」

「「いい訳ねえだろうが!!」」

 やや棒読みになってしまったがそんな事を言えばきー君は目に見えて赤面し、動揺しながらOKを出した。そのやり取りに若ちゃんとタカ君が怒って突っ込む。ジョークじゃん。ただファンに聞こえてたら殺されるな。アーメン。

 明らかにジャバが苛ついている。迫力あって普通に怖い。2点差に詰め寄ったところで第2Qが終了した。

 ガンッ!!!

「びゃっ!?」

「何だその悲鳴」

 10分のハーフタイムに入って早々、ジェイソンがパイプ椅子を強く蹴飛ばした音にビビって飛び上がる。かがみんに何つー声出してんだと突っ込まれるが気にしない。手に持っていたドリンクを危うく落としそうになったわ。
 みんなが横目で見守る中ジュニアが何かを言って収まる。ただあのゴリラを一言で黙らせた様子を見る限り、ジュニアがジェイソン以上に怖いのは察した。

 リコぴんパパが話を終え、リコぴんがマッサージをしたりさっちゃんがアイシングをしたり選手にサポートする様子を見ながら、あたしもドリンクやレモンなどを配っているとジャバの方から声が上がった。

〔おい猿女〕

「ああん?誰が聡明でグラマーな美女だって?」

「「言ってねえよ」」

 わかってるよまたモンキーでしょ。猿女って言ってんでしょハイハイ。わかっててあたしが顎をしゃくって完全に喧嘩を売る顔で振り向けばそこには手招きをするジェイソン。タカ君とかがみんのツッコミが入りながら言葉に耳を傾けた。

〔テメーが持ってきたコレはかせてみろよ。こっちに来い〕

 リボンで装飾されたオムツを片手で持ち上げ卑下しながら何か言ってる。聞き取れず首を傾げていると、英語がわかる組の顔が険しくなった。何だ何だ。あのオムツお気に召さないから文句言ってんのか。
 リコぴんパパに聞けば呆れた顔で意味を教えてくれた。

「え、何赤ちゃんプレイ?ごめんきっついわぁ無理だわぁ」

 NOと腕をバッテンにして言えば青筋を浮かべるジェイソン。てかあたしに絡まなくていいからそっちで話してろよ。
 すると腹いせか何を思ったか、オムツがこっちへ強めに投げられた。軽く投げたんだろうけどいかんせんあっちゃん以上のパワーの持ち主なのでまるでスパイクだ。

 スパイク?とそう思った瞬間にあたしはサッとアンダーで受け止め、ポンとオーバーで高く上げた。

「おお」

 順ちゃんの感心した声が聞こえた。瞬間、あたしの目がギラリと光る。

「アターーーック!!」

 ボッスーン!

〔ほぶっ!!〕

 その場で助走をして踏み込み跳躍し、渾身の力を込めてスパイクを決めた。それはジェイソンの顔面に直撃し、一瞬空気が凍って気温も下がった。
 リコぴんとさっちゃん、観客がガタガタと肩を震わせる。

「やっちゃった」

 テヘペロッと舌を出せばバシンとかがみんと峰さんに頭を叩かれる。痛い!

「アメリカンジョークだよ〜」

「ジョークにならないのだよ!」

「もう本当にやめて〜!!戦争になっちゃう!!」

 タカ君が割と本気の声色で嘆くのでマジでそろそろ自重したほうがいいなと思いました。ジェイソンはオムツを顔に減り込ませたまま硬直しているのでもうほっといていいかな。
 でも(多分)遊びで吹っ掛けてきたのは向こうだかんな。あたしは半分くらいしか悪くないです。

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