INFINITY WORLD
あたしと霧崎

 ピンポーン

『そらさーん。開ーけて』

「だから事前に連絡しろっつーのに」

 今日は休みだったのでゆっくり起きて買い物して昼寝して…って感じで寛いでいた。
 19時。フロントのインターホンが鳴って出てみると霧崎の面々。かずやんが画面いっぱいに顔を近付けて催促するので文句を漏らしつつロックを開けるとヒラヒラ手を振ってゾロゾロとみんなが自動ドアを通る。六人分のご飯余ってるかな…。

 あたしは既に食べ終えているので何かないかとみんなの分の食材を確認している内に、部屋の前まで来たらしくチャイムが鳴る。

「はいはーい」

「お邪魔しまーす」

「どーぞ」

 ドアを開けて中へ促す。腹減ったーと言いながら入るみんなを見てからキッチンへ行く。部活後の子らの食欲は馬鹿にならん。ましてや六人分となると……ん?

 キッチンはダイニングキッチンなのでそこから見えるリビングにバッと顔を向ける。
 マコマコ、かずやん、ザキ、康ちゃん、健ちゃん、…誰だあの人。

「ちょっと、何憑けてきてんの。その子誰」

「あ?誰もいねえ……誰に憑いてんだ?」

「健ちゃんの後ろに一緒の制服着た男の子がいる」

 制服同じだったからか、何か多いなとは思ったけどまさか馴染んでるとは。
 みんなが健ちゃんを見るが彼は気にした素振りなく欠伸をした。

「ちょっと、出てってもらえます?」

「そらさん酷い」

 でもご飯頂けるって聞いて…

「いや君食べられないでしょ」

「あ、オレじゃないのね」

「じゃあ健ちゃん共々出てって下さい。健ちゃんは離れるまで入室禁止」

「え、結局オレも?悪意ないならいいじゃん別にいさせても」

「むむ…」

 そうですよ、いるだけですよ。

「お前が言うな」

「なんか一人で喋ってるみたいだな」

 まあ別にいいんだけど、容姿も顔色悪いだけで普通だし。でも幽霊だけど知らない人だし妥協するのも何か嫌じゃん。
 ザキの呟きを無視してあたしは溜め息吐くとキッチンに戻った。

「何食べたいの?」

「ステーキ!」

「あるわけないじゃん」

「じゃあパスタ系でいいよん」

「何その妥協感&上から目線」

 だがパスタは生憎切らしているので勝手にラーメンにしてやる。確かこんな事もあろうかと買い溜めてあったはず。足りないなら夕飯の残りの白米とポテトサラダ食べさせる。

「手伝おうか」

「康ちゃんありがと、いつも助かるよ。じゃあ麺茹でてくれる?」

「ああ」

 康ちゃんは気が利く。いつも大抵手伝ってくれるのはこの子で、あとはテレビ見たり買い揃え始めた漫画を読み漁ったりしている。康ちゃん見習え愚か者共よ。

 オレも何か…

「君は気持ちだけで充分、てか出来ないでしょ。出来てもポルターガイストになるからやめて。あと此処にいても悪いけどあたし達にしてやれる事はないよ」

 急に背後から声を掛けられ肩を上がらせ振り返るとそこには幽霊さんがいて、ブンブン首を振りながら断り具材を切るのに集中する。

 早く成仏はしたいんですけど…

「君浮遊霊でしょ。ならいい神社教えてあげるからそこに行きなよ」

 言わずもがな、神社とは有白家です。あれから定期的に墓参りにいったり神主のひのちゃんパパや巫女のひのちゃんママにお祓いしてもらったり、お札やお守りもらったりと交流があるのだ。
 霊能力に目覚めてから霊媒体質にもなってしまったので、護身用にお札とかが必要なんです。

 でも強制成仏は…

「大丈夫。あそこはちゃんと話し聞いてくれるから、未練とかあれば絶って自然成仏を促してくれるよ」

 …そうですか。なら行きたいです。

「地図描いてあげるね。健ちゃん、此処からひのちゃん家までの道順紙に描いてー」

「そらさんが描くんじゃないのか」

 康ちゃんがやり取りを聞いていた(聞こえてたのはあたしの言葉だけだけど)のか、呆れた視線を向けながら麺を茹でている。
 何とでも言うがいいわ。健ちゃんなら簡単にわかりやすく描いてくれるし。

「ええー、眠たいのに」

「連れてきたのは自分で「不可抗力だよ」

「じゃあいいよご飯食べさせな「それは駄目」

「じゃあ描い「わかったよ」

「遮らないでっていつも言ってん「無理」

「さっきまで普通だったのに!」

 この人との会話本当やだわ。その辺にあるメモ用紙とペンで地図をちゃちゃっと描いた健ちゃんからカウンター越しに受け取る。

「これね。あたしに言われて来たって言ってもいいから」

 わかりました。ありがとうございます。

 あたしから紙を受け取ると嬉しそうに笑って頭を下げ、スッと紙共々消える。案外いい子だった。

「「おお、紙が消えた」」

 かずやんとザキもこちらを見ていたのか消えた事に感嘆の声を漏らす。

「…そらさんも大変だな」

「ねー。でもみんながいるから何だかんだ大丈夫なんだよね」

「成仏はさせられなくてもきっかけを与えられんなら、まあ役に立ってんじゃねえの。ミジンコくらいには」

「ミジンコに謝れ」

 康ちゃんとほのぼの会話しているとマコマコがカウンターに頬杖をついて話に混ざってきた。余計な一言が多い奴め。褒めるなら褒めるだけにしてくれないかな、上げて落とす感じもういらないんだけど。

 そんなこんなでラーメンが出来上がりみんなズルズル啜って食べているのをあたしはソファーに座って眺める。

「君らこないだの新学期お祝いパーティーに来なかったよね。新学期はどう?新しい部員入った?」

「まずまずだな」

「花宮並みにゲスい奴入ってきたよん」

「何それその子の将来超不安」

「うるせー黙れ」

「でも花宮と違うのは色んな意味で馬鹿なところかな。うちの学校だし勿論勉強は出来るけど」

「何それその子の将来更に超不安」

 どんな新一年生だよ。馬鹿でゲスいとかクズの図しか浮かばないんだけど。
 まだマコマコは猫被りが上手かったり何だかんだ優しかったりするからモテもするだろうけど…ちょっとその子にはあんまり会いたくないな。

「でもバスケのセンスはあるから、オレらが引退したらスタメン入りも夢じゃないよね」

 どうかその子がこれ以上横道逸れませんようにと願うばかりだ。

「みんな今年受験だね。進学?就職?」

「今の所全員進学だよな」

「そっかー」

 クッションを抱きながらソファーでゴロゴロする。進学いいなー。みんなとなら楽しいんだろうな。つか高校生に戻りたい。あと一年反動で戻ってれば転校生で入れたのに…クッ!

「今年最後かー…勉強も部活も頑張ってね」

「言われなくてもやるっつーの」

「ラフプレーは駄目だよ。したら一人ずつカンチョーな」

「赤司にチクるよん」

「そこで赤君出すのは狡いと思う」

 あの世界でのやり取りはみんなが見ていて覚えているので、ちょいちょい下品な事で自分の都合が悪い事には赤君引っ張り出してくるみんな狡い。

「ラフプレーしなくても強いんでしょ?だったらいい汗流して青春しようぜ!」

「その親指へし折っていい?」

「最近のあたしの扱いについて」

 でもリコぴんに聞いた話ではラフプレーが少なくなったとか言ってたから、改心はし始めたのではないかと思います。暴力の技術を磨くんじゃなくてバスケの技術で頑張れみんな。

「ごっそーさん」

「あーい」

「オレ洗うわ」

 みんなが食べ終わるとザキが率先して食器を持ってキッチンへ向かう。急にどうしたのこの男前。ナチュラルにお手伝いとかイケメンかよ。康ちゃん見て学習したのかな?

「そんなザキが好きさー」

「はあ!?ななな何言ってんだよ!!」

「あはは!ありがとうね」

 顔赤くして慌てるザキもかわゆし。
 折角なので並んで洗い番と流し番で一緒に片付ける。ザキが流し番で、さっきの一言もあってトギマギするのが初々しい。みんなもだけど何で彼女がいないのか不思議だ。

「チッ…オレがやる」

 ヒョイと後ろからスポンジを取ったマコマコはあたしを押し退けて洗い番をしてくれる。急な事にザキと驚いているとマコマコに睨まれた。

「テメーは向こうで座ってろ、邪魔だ」

「ぷふっ…ありがと」

 ここあたしの家なんですけど。そう思いつつマコマコも気にしてくれたのが嬉しくて笑いながらリビングへ戻る。

「素直じゃないよねー」

「普通に手伝うって言えば男前度上がったのにねー」

「ねー」

「お前らうっせえ!!」

「(花宮の方が煩いと思う)」

 あたしと一緒にからかう健ちゃんとかずやん、傍観する康ちゃん、マコマコの隣で冷や汗を流しているザキとプリプリ怒るマコマコ、霧崎の子達は案外居心地がいいものです。

 ゲスの極みだけど。

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