INFINITY WORLD
あたしと練習試合

 四月半ば。今日は先日リコぴんに誘ってもらった誠凛の練習試合の観戦に来ている。対戦相手は丞成高校で、試合会場はその相手校。確か一年でリコぴんに喧嘩売るような事言ってた子いたよね。今は二年だろうけど。

「おはよー」

「あ、そらさん!おはようございます」

「「おーっす」」

 リコぴんに相手さんの監督には伝えてもらってあり観戦の許可は得ている。ギャラリーに上がる前にとみんなに声を掛けると気付いたリコぴんから他のみんなにも挨拶される。

「本当に来た!」

「え?来ちゃ駄目なの?じゃあ帰るわー。折角差し入れ持って来たのになぁ。檸檬の砂糖漬けと蜂蜜漬けの二種類とか、スポーツ飲料とか〜」

「嘘です嘘ですいや嘘ってかそーゆー意味じゃなくて!!来て下さってありがとうございます!!」

「うむ。宜しい」

「「(既に服従関係出来上がってんだけど…)」」

 コガの反応にムッとしたあたしが意地悪でそう言いながら踵を返すと、手の平を返すような言葉と必死な態度に気をよくする。それを見た周りがどう思おうが知ったこっちゃない。

「あの…この方は?」

「ああ、この人は何つーか…まあオレらが世話んなってる人。オレらの一個上だ」

「どうも〜」

「は、初めまして!」

「ども」

 おずおず聞いてきた小柄で髪の色素が薄い子は見覚えないからきっと新入生だろう。順ちゃんに紹介され萎縮しないようにと笑顔を振り撒いておく。どうやらその子の名前を夜木悠太君と言うらしい。初々しい感じ、お姉さん好きですよ。
 もう一人の黒髪の長身の子は無表情だけどちゃんと挨拶をしてくれた。名前は朝日奈大悟君との事。照れ屋さんって事にしておこう。違うと思うけど。
 聞くと、今日の一年の仕事は先輩の動きを観て学ぶらしい。頑張れ。

「これ先に渡しとくわ。差し入れ」

「ありがとう。インターバルの時とかにもらうよ」

「檸檬はいっぱい作ったから喧嘩しないでね」

「はい。ありがとうございます」

 俊ちゃんとテッちゃんに差し入れを渡し、早速ギャラリーへ向かおうとすると視線を感じた。見てみればそこにはエロ本片手にじっとこっちを見つめる男の子。あれが確かリコぴんに喧嘩売った…名前なんだっけ。女の子っぽい名字だった気がするんだけど。

「女いるかと思ったのに…アイツも色気ゼロじゃん…」

「鳴海!」

 そう言って肩を落とす鳴海と呼ばれた彼。そうそう、鳴海君ねそうそうそうそう。聞こえてますけど。
 三年の先輩であろう人に頭をポカッと殴られているが、あたしには全然足りなかった。

「あの…そらさん?」

 恐る恐る後ろからツッチーが声を掛けてくる。その後ろには他の面々が顔面蒼白にしているのをあたしは知らない。

「何?ツッチー」

「え?あれ?」

「ん?」

 振り返り普通の対応をするとキョトンとされてしまった。おいおい、あたし中身成人だぜ?灰君みたいに触られたわけでもあるまいし、これくらいセーブ出来るって。

「じゃ、あたし上にいるから。頑張ってね!」

「あ、ああ」

「任せろ!」

 順ちゃんとかがみんが強く答えてくれたのでよし。あたしはギャラリーに上がる為に階段へ向かう。

「呪われればいいのに…つか呪われろ」

「「(やっぱり根に持ってんじゃん!!)」」

 呟いた言葉を彼らに拾われたなんて気付かずにギャラリーへと上がった。ブチ殺せって言った気持ちがよくわかるわリコぴん。
 唯一あたしにサムズアップをしていたのはリコぴんで、あたしはそれに気付かなかった。










「いやー、よかったね!凄かった!テッちゃんのパスがギュンッて通ってかがみんが何回もダンクして、俊ちゃん振り向いてないのにポンポンパス回ししてくし、水戸さんはゴール下めっちゃ守ってる感あったし順ちゃんのスリーは綺麗に決まるし!!」

「落ち着いてそらさん」

 興奮冷めやらぬとはこの事。リコぴんに肩をポンポン叩かれるが褒められて彼女も嬉しそう。
 午前だけの練習試合で、何試合かして見事全勝を収めた誠凛。リコぴんに詳しく聞いたところ、丞成は去年に比べスタメンが三年生四人抜けて鳴海君以外ガラッと変わったらしいけど、それでも丞成のウリである“ゴリゴリくるインサイド”は健全だった様子。
 観ていてもゴール下とかめっちゃ押してきてる感じが強かったので、インサイドが強いと思ったのに納得。

「コガもツッチーもよかったよ!コガが入れてミスってツッチーがリバウンドするって流れナイスコンビネーション!」

「あはは、ありがとう」

「これオレ褒められてる?」

「フリと河ちゃんとひろやんも出てたよね。次はあの馬鹿でかいかがみんと、うっすいテッちゃん押し退けてでも出られるように頑張ってね!」

「「「はい!!」」」

「もうちょっと言い方あるだろ!!」

「傷付きました」

「この世は弱肉強食さ」

 そういや去年の誠凛と丞成はヨッシー抜きで互角くらいの強さだって翔ちゃんの台詞にあったかも。誠凛にとって丞成は相性が悪いなりにも去年はヨッシーがいたのもあって勝利したらしい。
 今年はCが水戸さんに変わったけど、それでも水戸さんの実力もあって勝利したので水戸さんには自信持ってもらいたいと思います。

「じゃあ、私達は学校に戻って練習します」

「うん、頑張ってね。本当は行きたいんだけどこれからスーパーのセールがあって行かなくちゃだからさ」

「主婦か」

「気を付けて」

 順ちゃんの緩みないツッコミと俊ちゃんの紳士な言葉や、他の子からの挨拶を背に手を振って別れ近所のスーパーへ向かう。
 今日はいいお肉が安いはずだからそのお肉でステーキだ!










 トゥルルントゥントゥントゥントゥントゥントゥン
 買い物から帰宅後、大荷物を抱えて家に着き食材を冷蔵庫にしまっていると、携帯の着信音が聞こえ画面を見れば相手は赤君。
 食材をしまいながら電話に出る。

「はいはい?」

『もしもし、こんにちは。今いいですか?』

「やっほー、勿論よ。電話久しぶりだね」

 今までにも何度も電話をくれる赤君やその他洛山&陽泉のみんな。赤君は特に用事はないけどこっち様子を聞いたり京都の方での様子を教えてくれたりと、他愛ない話を二人でよくする。今日もそんな感じらしい。

『そうですね。最近は部活の方で少し忙しくて』

「そっか、新学期だしね。お疲れ。新学期早々こっちでは集まりあって進学と進級のお祝いしたよ」

『そうなんですか。黛さんも?』

「ちーちゃんは照れ屋だから欠席。今度は引っ張ってくるつもり」

『ふ、そうですか。程々に』

 赤君の落ち着いた声を聞きながら食材をしまい終えるとリビングへ移動する。

「洛山の方は新入部員とかどう?入った?」

『結構入りました。中々センスのいい者揃いでしたよ』

「へぇー。じゃあこれからが楽しみだね」

『そうですね。伸び代は幅広いみたいですし、きっと今後チームに貢献してくれると思います』

「赤君の調子もいい感じ?」

『問題ありません』

 ソファーへ座ってのんびり会話する。赤君との会話は本当久しぶりだった。

「赤君にもみんなにも会いたいなー。今度京都に遊びに行くよ」

『オレも会って話がしたいです。でも一人でですか?』

「一人旅結構するんだよあたし。こっちの世界の京都はどんな感じか行きたかったんだよね」

『なら案内します。お勧めの店はありますし、一人は危ないですから』

 やだもうこの紳士め。嬉しくて一人でニヤニヤしていると、笑い声出してないのに指摘を受けた。

『今笑いました?可笑しな事は言ったつもりありませんけど』

「いやいや何でわかるの?てか別に馬鹿にしてないよ、心配してくれたのが嬉しかっただけだって」

 そう弁解すると優しい声でそうですかと相槌打たれる。

「でも休み少ないんでしょ?折角の休み潰させるの悪いよ」

『構いません。オレがしたくてする事ですし、そらさんに会えば疲れも飛ぶと思います』

「上手い事言うねー」

 世渡り上手だなこの子は。まあ当然だね、だって赤君だもん。そう思ってると赤君に真剣な声色で言われた。

『本心です。…迷惑ですか?』

 ズッキュン!!
 狡いわこの子は狡いわァァァ!!

「迷惑じゃないよ!!寧ろありがとう!!」

 あまりの胸キュンさに胸を押さえて悶え、力んでそう伝えると電話の向こうで赤君は可笑しそうに笑った。

『じゃあ約束ですね。また日を合わせましょう』

「うん!」

 それからもこっちの事や向こうの事でお互いに話をして楽しい時間を過ごす。そのお陰でいつもより夕食時間は遅くなったが、赤君のデレが聞けたのでよし。

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