INFINITY WORLDみんなで勉強会
【桃井side】
もうすぐ中間テスト。私立と公立では多少の日にちのズレはあるけど、大体が今の時期。私達も例に漏れず、中間テストがありテスト期間中は部活動も禁止になって学習に勤しむ事になる。大ちゃんはいつもしないけど。
そして今日がその部活動停止の開始日。授業終了後、いつもは向かうはずの体育館へは向かわず若松さんと良君と大ちゃんで帰宅する。
「だりぃな、テスト」
「大ちゃんいつも勉強してないじゃない。私のノート写すだけで」
欠伸をして面倒だと言う彼。寒かったら寒い、暑かったら暑いと当たり前の事を言うように言ってのけているけど、何度も言うようにこの男は勉強はしない。
「ちゃんと勉強しないと赤点取っちゃうよ?」
「さつきのノートがありゃ赤点は取らねえから大丈夫だろ」
「お前、いい加減他力本願なその姿勢正せよ」
「うっせぇ」
若松さんから言われても何のその。気にした素振りがない。
中学の時こそバスケ部で赤点は認められず、赤司君がいたのもあってみんなで勉強会をした事が何度もある。高校に上がってからも大ちゃんとその場を設けたとしても、大ちゃんはやらなかったので意味が全くなかった。
「どうしたらちゃんと勉強してくれるんだろ…」
長年の悩みだ。
「やる気が起きる何かがあればいいんですけどね…あっ、偉そうにすいません!」
「そうだよね。やる気、かぁ…赤司君みたいなスパルタがいたら何か変わるのかも」
前を歩く大ちゃんの背中を見ながら、赤司君にスパルタで叩き込まれていた時の事を思い出した。
「…スパルタは兎も角、居眠りとかに目敏くてやる気起こしてくれそうな人はいるよな」
「「…あ」」
ポンと頭に浮かんだのは私達の大好きな彼女だった。
「どーぞー」
「「お邪魔します!」」
「急に悪ィな」
四人で向かった先はそらさん宅。電話をしたら今日は休みで家にいるとの事で、向かってもいいかと請うと暫し考えた後許可を得た。
そして面倒臭がる大ちゃんを引きずって中に入れてもらうと、そこには先客がいた。
「え?てっ、テツ君!!」
まさかこんな所で会えるなんて!!と夢中で抱き着きに行った。ぎゅうっと抱き着くと苦しそうな声が聞こえた。
「桃井さん、苦しいです」
「何でテツ君がいるの!?運命!?」
「いえ、テスト勉強です」
「周りを見ろ。オレらもいっから」
第三者の声が聞こえて周りを見てみると、かがみんとミドリンと高尾君、更に津川君までがいて、机には教科書などが広げられていた。
「みんなもいたんだ」
「気付くのが遅いのだよ」
「相変わらず黒子LOVEなのなー」
かがみんとミドリンが呆れたように見てくる。高尾君もへらへら笑ってそう言うので、私は当然だと言うようにテツ君に擦り寄った。
「この子らもちょっと前に来たんだよ。此処ならお金かからずにおもてなしも受けて場所も確保出来るからだって。ともっきーが」
そらさんはキッチンから呆れた声色で説明した。
「オレは別におもてなしが目的ではないのだよ」
「そらさんの傍で勉強すれば捗るからだもんなー」
「勝手な事を言うな高尾!!」
ちょっと赤面してるから説得力がないよミドリン。そう心の中でツッコミながらテツ君から名残惜しく離れた。
「でもまあ、此処赤君が選んでくれただけあってリンビング広いし机も余裕あるからいいんだけどね」
「そらさんジュースお代わり!」
「はいはい」
津川君がコップを持っていくと苦笑しながらジュースを入れてあげていた。そして棒立ちしている若松さんと良君にも座るように促す。大ちゃんは既にソファーへ座っていた。
「但し。此処に来たからにはちゃんと勉強してね」
「オレは無理矢理連れて来られただけだ」
「じゃあ帰れば?みんなでおやつ食べるしみんなで夜ご飯も食べて楽しく勉強するけど」
「…チッ」
ソファーに寝そべる大ちゃんに淡々と、でも悪戯っ子のように笑いながら言うそらさんの言葉に大ちゃんは舌打ちして起き上がった。でも出て行く気がないから仲間外れは嫌なんだと思う。
「こうして見てみると若ちゃんだけが三年だね」
「あー、だな」
「こっちであたしとする?あたしも勉強中だから」
こっちとはダイニングキッチンのカウンター。椅子が備え付けられているのでそこにも座れるようになっている。そらさんが掲げて見せたのは保育の教材。ミーキャンで保育士資格の取得を決めたと先日聞いていたので、早速届いた教材で夏の試験に向けて勉強しているのだとわかった。
若松さんは頷くとそらさんの教材が置いてある隣へ座った。そらさんは電気で明るくして勉強し易い環境を作っていた。
「二年組はそっちで頑張りたまえ」
こうして、十人での勉強会が始まった。勿論私はテツ君の隣!
「なあ、これどーやるんだ?」
「これはこの公式を当て嵌めて…」
「緑間意味わかんねえ」
「オレの存在を指摘しているような言い方はやめるのだよ。…どれだ」
「これ何?」
「え?ええっと、この文から読み取って…」
この中で勉強が不得意なのはかがみんと大ちゃんと津川君。テツ君も教科によっては苦手な事があるけど、今の所問題ない様子。
あたしの左にテツ君、そこから時計回りに良君、津川君、高尾君、ミドリン、大ちゃん、かがみんの順に並んでいてかがみんは私に、大ちゃんはミドリンに聞いて勉強している。津川君も良君に聞いていた。
私は気にしないけど、自分の勉強が出来なくてやや不機嫌なミドリンは何だかんだ手を貸してあげている。中学の頃からミドリンはそうだ、変わらない。
「ちょっと休憩」
「始まってまだ数分なんだけど」
早くも飽きた大ちゃんがその場から離れると高尾君はケラケラ笑う。本当集中力続かないんだから。
「そら、おやつ」
「一時間集中しない奴にはやらん」
そらさんの所に行って背中にのし掛かっている。そらさんが潰れちゃう!
「お前だって保育じゃなくて数学とかやってりゃ絶対途中で集中切れるって」
「馬鹿を言うな。あたしクイズ系苦手だけど勉強は中の中だ」
「微妙じゃねえか」
そういえばあの世界で白黒のメモ解読する時に即座にわからないって言っていたから勉強も苦手なのかなと思ったけど、普通に出来るらしい。大ちゃんとか絶対人馬鹿に出来るような成績じゃないのによく言うよ。
「峰さんより頭いい自覚あります〜。何なら教えてやろう。教科書を持ってきたまえ」
何かのスイッチが入ったのかそらさんがそう言うと大ちゃんは数学の教科書を持ってカウンターに行く。若松さんの反対側に座ると、そらさんは教え始めた。
「まずこの公式を覚えな」
「覚えれねえから困ってんだろ」
「じゃあこのyをマイちゃんのピースで、このxがマイちゃんの谷間に見立てて…」
「…おお」
え、何その教え方。そらさん?
「この12あるじゃん?谷間が12倍になるって意味で代入して…」
「それ爆乳過ぎんだろ」
「脳内補正しやがれ。爆乳過ぎるのが嫌なら、谷間に峰さんの手で12ってマジックで書くイメージにしたら?」
「いいなそれ」
え、理解してるの?それ大丈夫なの?
みんなは勿論一番近い若松さんも唖然としていた。
「この問題自分で解いてみ」
「…マイちゃんのピース…マイちゃんの谷間がこうなって……これか?」
「ん。…おお、正解!」
「よっしゃ!」
ええええええええ。教えてたミドリンも絶句。あんな教え方でわかっちゃうんだ。
でも大ちゃんの特性を理解して教えるそのやり方はある意味凄いと思う。流石そらさんだ。
「やれば出来んじゃん!偉い偉い!」
「当たり前だろうが。ってヤメロ!」
そしてすっごく褒めてくれる。大ちゃんの頭をわしわしと撫でているそらさんに、大ちゃんは嫌がりつつ満更でもない顔をしていた。
…羨ましい。
「そらさん。私にも教えて欲しいんですけど!」
「オレもー」
私と高尾君がドドッと押し寄せるとそらさんは吃驚していた。
「え?でも多分あたしより君らのが頭いいと思うけど」
「「え〜…」」
チーンと二人して項垂れる。そらさんはそれを見て首を傾げていた。私達の思いが伝わってない…。
「じゃ、じゃあ!今からこの問題解いて全問正解したら撫でてくれますか!?」
私が思い付きで苦手な部分がある例題10問程載っている所を指差しながらお願いすると、そらさんは目をパチクリさせた後やっと意図が伝わったのか可笑しそうに笑った。
「いいよ」
そう言うや否や、大ちゃん以外のみんなが例題と向き合ったこの光景は異様に見えたかもしれない。っていうか、みんな撫でて欲しかったの?ミドリンも?
「出来ました!丸付けして下さい!」
「ほーい。ふふ、何か小さい子の勉強見てるみたい」
私が一番に持っていくとそらさんは笑って赤ペンで丸付けを始めた。そらさんに愛でられるなら小さい子扱いされても気にならない。
「おお!全問正解じゃん!」
「本当ですか!?」
「これ苦手だったんでしょ?さっちゃん頑張ったねー」
素敵な笑顔付きでよしよしと頭を撫でられて心がポカポカした。褒めて伸びるってこういう事なんだろうなと思った。
「オレも出来た!!」
「ほいほい」
「オレもー!」
「順番ね」
その後も津川君、高尾君と続々みんなが問題を解いて、頭を撫でられ褒められるという図が続いた。ミドリンは嫌がって撫でてもらわなかったけど、褒められて「当然なのだよ」と眼鏡を押し上げていた。全く、素直じゃないんだから。
その後も何だかんだ話は多かったけど勉強会は続いて、夜ご飯はそらさんとかがみんと良君に振舞ってもらった有意義な勉強会になった。
勿論勉強会は今日だけじゃなくて、テスト期間中続く話だったりする。
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