INFINITY WORLDあたしを狙った犯人
数日後。あの一件から問題なく過ごしており体調もいい。だがみんなが神経使ってあたしに異変がないか気を配ってくれているお陰で、嬉しい反面学校潜入が全く出来ない。
今何処にいるのか聞いてくる子もいるので誤魔化すというか嘘を吐けばいいのだが、嘘がバレた時に学校潜入の事も明るみに出るかもしれないので出来ないのです。
暫く余計な事すんなって神のお告げだと思って大人しくしてますハイ。
今日はバイトが休みなので朝から有白家に向かい、お祓いの日に言っていた修行の件で訪問する。
神主や巫女さんになるわけではなく、少しでも霊や悪意のある者に対抗出来るよう力を付けるのが目的だ。ただ中途半端な強さは自分と時に周りの者も傷付けてしまい力のある者の足を引っ張る事になるので、慎重に修行をしていきたいと考える。
あたしの思う修行っていうのは精神統一したり滝に打たれたり簡単そうに見えて簡単でない事ばかりだと思ってる。先が少し不安だが、この力を悪用されたり利用されたりしないように頑張りたいと思う。
って意気込んだのが数分前で、今はもう帰りたいと思っています。
「ひぎゃあああああ!!来ないでぇぇぇぇええ!!」
「そらちゃん逃げてばっかりじゃ駄目だよー」
「しっかり向き合って!」
「出来るかァァァァ!!」
ひのちゃんママは般若の顔をした白鬼を召喚した。彼女の式神らしく性格は優しくて正義感溢れるいい鬼だと言うが、あたしは鬼にトラウマがあるらしく半泣きで逃げ回る。
取りあえず幽霊妖怪何でも向き合う力を付けさせる為にこの白鬼と組み手をさせるつもりで召喚したらしいが、向き合うまで出来ても手合わせなんて出来やしなかった。っていうか体術とかあるわけでもなしに、出来るわけがない。
誰だよ、計画的にあまり負担にならないようにしようって言ったの。ひのちゃん!あんたのパパとママが言ったんだよ!なのにこの仕打ち!死ねってか!!
「見込みあるから、つい」
「確かに精神統一は出来たけどあたし運動神経普通ですから。こっちに来てろくに運動という運動してないですから」
泣き叫び逃げ惑うあたしを見兼ねて追い掛けるのを止めさせたひのちゃんママがお茶目な感じで言う。ついじゃねーよ。
もうちょっとやり方を変えてもらえるようお願いすると、ならまず霊力の扱い方や操作方法をと教えてくれた。そうそう、こんな感じのでいいんだよ。
このまま霊丸ー!!とか打てたりしないかな。あ、話ってか漫画が変わっちゃう?じゃあ駄目だね。
そんな感じで初めての修行は昼前に無事終わりました。
今はその帰り。どっかで昼食を食べようと思ってぶらぶらしていると、背後から急にポンと肩を叩かれた。
振り返ればそこにいたのは、
「あ、岡アゴリラさんと福君」
「何で会って早々辛辣!?」
「よー」
岡さんと福君でした。岡さんは会って早々暴言を吐かれて涙目だった。泣くな大の男のくせして。嘘だよごめんごめん。
「何でこんな所にいるの?学校は?」
「オレら昼からの講義1コマ空いてんだよ。昼休みもあって時間あるし、このゴリラとどっか食いに行こーぜってなって歩いてたらそらさん見付けたからよ」
「大学こっから近いのか」
「おう。向こうに見えるじゃろ?ワシの大学はあれじゃ」
「オレは見えねえけど方角的に向こうだな」
岡さんが指差す方に大きな建物がある。福君はその真逆を指していた。成る程、選択する授業によっては休み時間が長くなる事もあるのは大学生あるあるか。
「何処に食べに行くの?あたしも行っていい?一人だったし久しぶりだし」
「ああ、いいぜ。一応そこのファミレス入る予定だったんだけど、そらさんが行きたい所あるならそこでもいい」
「あたしも食べられたら何処でもいいよ。あのファミレスにしよ」
そう言って三人で歩き出した時、視線を感じて振り返る。
「?どうかしたんか」
「ん、何でもない。気の所為」
特に誰かに見られているわけでもなく、ランチの時間帯なのでその辺の飲食店にご飯を食べに来ている人達が行き交っているだけだった。
再度歩き出しファミレスに入って三人仲良く昼食を摂る。久しぶりにゆっくり二人と話せたので嬉しかった。この二人も先日の件で心配してくれていたようで、福君は色々と優しくしてくれてそのイケメンさにメロメロになるかと思った。メロメロって…ってそこ笑わない。
岡さんはプリンパフェをほくほく嬉しそうに食べていたのでちょっと可愛いと思った。ゴリラだけど。
昼食後彼らと別れ家に帰宅しミーキャンで保育の勉強をしてたんだけど、途中からいい気候で部屋の中の気温も過ごし易くウトウトしてしまいいつの間にか寝落ちていた。
ピンポーン
「…ん、…?」
ピンポーン
「ん〜…はぁい…」
『ああ、よかった。ちゃんと出た』
『大丈夫か?』
「ん…何が?」
インターホンの音で目を覚まし寝ぼけ頭で画面を覗くと、そこにはツボちゃんと村ちゃん、そしてちーちゃんの姿があった。
三人はあたしの声を聞いて安堵したように息を漏らしていたが、何が大丈夫なのだろうか。取りあえず上がってと伝えロックを解除する。
暫くしてチャイムが鳴り開けに行く。三人を中に入れて眠い目を擦り欠伸をしていると、ちーちゃんはリビングまでスタスタ来るとクッションに沈んでいた携帯を拾い上げてあたしに渡す。
「ん?」
「お前、何回もオレ達が連絡したのに全然出ないから」
「…ああ」
そういやマナーモードにしてたわ。クッションに沈んでたからバイブの音も聞こえにくく通知に気付かなかったようだ。
携帯を開いてみるとそこにはLINKの通知だけではなく三人から何件か電話が入っていた。
LINKではツボちゃんから今日村ちゃんと寄るって内容から始まり、ちーちゃんとたまたま会ったから三人で行くって内容、返事がないのに対し安否の確認をする内容に変わった流れが載っていた。
「ごめんマナモにしてた。さっきまで寝てたから…ごめんごめん」
「はぁ…また何かあったかと思って心配した」
「何もなくてよかった」
村ちゃんは安堵の息を大きく吐き出し、ツボちゃんは苦笑しながらあたしの頭を軽く撫でる。
「心配してくれてありがと。今度から気を付けます」
「そうしろ」
ちーちゃんはあたしの額に軽くデコピンをしてきた。罰ってか。可愛い罰だなオイ。
「あともう一つごめん。ご飯作ってないから今から作る事になっちゃうんだよね。待てる?」
「大丈夫だ」
寄ったって事はご飯も食べるって事で。時間を確認すると現在18時半頃で、今日は部活がオフの日らしくこの時間に来たそうな。ちーちゃんは何も言わなかったけど、サボったのかな。
三人に座っているように伝え冷蔵庫を漁って準備をし始めると、村ちゃんが手伝いに来てくれた。流石八百屋さんの息子、どれが傷み始めてるから先に食べた方がいいとか教えてくれる。本人曰くそこまで詳しいわけではないようだが。そして包丁を扱う手際もいい。
二人で作っているとマナーモードを解除したあたしの携帯が鳴り、見てみるとそこには赤君の名前が表示されていた。
村ちゃんに調理をお願いして電話に出る。
「もしもーし」
『そらさんすみません、今忙しいですか?』
「大丈夫だよ〜」
『そうですか。先日の犯人が特定出来たんですが』
その言葉を聞いてあたしは目を見張る。そしてツボちゃん達三人がいる事を伝え、スピーカーにして机に置き会話する。ちーちゃんが赤君に話を振った。
「誰だったんだ?」
『やはりオレ達とも有白家とも全く関わりのない第三者でした。プロフィールや住所などもわかりました』
凄いな。警察とか探偵とかじゃあるまいしこの数日間でわかるもんかね。手掛かりが一切ない中でよく出来たなと感心したと同時に、どんな方法を使ったんだろうと気になってちょっと怖くなった。
『
円堂勝負、30歳男性。実家が寺ですがその跡は継がず職業は公務員。住所は京都在住になっているんですが、今その人物は京都にいません』
「じゃあ何処に?」
『所在が不明なんです。しかし可能性として東京にいるかもしれません』
ツボちゃんの問いに答える赤君。東京にいる?自然と眉根が寄り何故東京にいると考えるのだろうと疑問に思っていると、聞く前に赤君がこちらの疑問を汲み取り答えた。
『そらさんを追って近くにいる可能性も否定出来ません』
あたしを追って?え、見知らぬ人に追い掛けられるなんてどゆこと。
『犯人は彼で間違いないです。そらさんの鞄に石を入れた彼が、その後そらさんがどうなったかを自分の目で確認する為に東京にいると考えられます』
「確かに、犯罪者とかって事件現場の野次馬に混ざって様子を見ているってよくドラマにあるよな」
村ちゃんが納得したように言うが、あたしはただただ理解不能で話がついていけなかった。つか、ストーカーかよ。
「…何か気持ち悪い話だね。じゃああたしはまた狙われるかもしれないって事?」
『ないとは言い切れません』
赤君の声色のトーンが少し下がる。彼も肯定したくなかったんだろうな。誰がこんな気持ち悪い話認めたがるよ。
『奴が京都ではなくそちらにいるとなれば、オレ達も出来る事が減ってしまいます。黛さん、大坪さん、木村さん。そちらの皆さんでも何かしらそらさんが被害に遭わないように検討して頂けませんか』
「当然だ。他の奴らにも知らせておく。あとこっちにいるかその円堂とかいう奴を探せばいいんだな」
『はい、お願いします。こちらでも出来る事はします』
ツボちゃんと赤君が話を進めていくのを聞きながら、実際に迷惑掛けられた月曜日以外は今まで特に何もなかったので実感がない。
ボーッとしていると赤君から呼び掛けられた。
『そちらには皆さんもいますし、心配しなくても大丈夫です。但し、一人でいる時は特に気を付けて下さいね』
「うん、わかった。忙しいのに色々と調べてくれてありがとね、助かったよ。ちゃんと気を付けるから赤君も心配しないで」
一言二言話をして電話を切り、調理を再開する。
「…大丈夫か?」
「ん?うん。面倒な事にならなきゃいいんだけどって思ってさ」
ちょっと考え込んでいたからかちーちゃんに心配そうに顔を覗き込まれた。本当に追い掛けてきて東京にいたら気色悪いと思っているが、本当にいるかどうかはまだわからないので今の所問題ない。油断はしないようにするよ勿論。
「何かあってもオレ達が何とかする。そらさんはいつでも頼ってくれていいんだからな」
「うん。ありがとうツボちゃん」
グツグツ鍋の中で煮えるロールキャベツを眺めていたがツボちゃんに優しい声色で声を掛けられ微笑み返しながら頷く。
「あたしも気を付けるし、そのエンドウ豆の事一緒に調べるからね。いつまでも守られるだけじゃ駄目だから」
あたしがそう言うとツボちゃんはふっと笑みを溢し頷いた。
「エンドウ豆じゃなくて円堂勝負だけどな」
「エンドウ豆で充分だよ。一方的に迷惑掛けられてんのこっちなんだから」
村ちゃんの冷静なツッコミに対しあたしは唇を尖らせてエンドウ豆で突き通す。
四人で談笑しながら食事をし、明日から急に何か事件起こったりはしないでしょ〜と考えながらロールキャベツに齧りついた。
あれ、これフラグになった?
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